中学校・高等学校国語科 その問いは、文学の授業をデザインする

中学校・高等学校国語科 その問いは、文学の授業をデザインする

BEST300

重版出来

好評2刷

9つの実践教材と確かな理論で解き明かす、これからの文学授業

文学の読みを深める「問い」は、どうすれば創り出せるのか?教材となる作品の丁寧な分析と、そこから生まれる問いの意図、想定される交流や解釈例、問いを組み合わせた単元デザインまで、確かな理論に裏打ちされた、9つの教材と18の「問い」による文学授業を提案。


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ISBN:
978-4-18-362021-7
ジャンル:
国語
刊行:
2刷
対象:
中・高
仕様:
B5判 168頁
状態:
在庫あり
出荷:
2020年11月2日
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目次

もくじの詳細表示

はじめに
凡例
第1章 実践編 文学教材の「問い」と学習デザイン
教材1「サーカスの馬」(中2)
【問い1】
@「(まあいいや,どうだって。)と,つぶやいてみるのである。」A「やっぱり,(まあいいや,どうだって。)と,つぶやいていた。」B「やっぱり,(まあいいや,どうだって。)と,つぶやいているような気がした。」という表現にはどのような違いがありますか。
【問い2】
小説の結末が「息をつめて見守っていた馬が,…僕は我に返って一生懸命手をたたいている自分に気がついた。」の一文で終わることについて,あなたはどう評価しますか。
教材2「走れメロス」(中2)
【問い1】
「私は,信頼に報いなければならぬ。今はただその一事だ。走れ! メロス。」とありますが,「走れ! メロス。」は,誰から誰へ語りかけているのでしょうか。また,そう考えた理由を,本文をもとに説明しましょう。
【問い2】
「一人の少女」の登場にはどんな意味があるのでしょうか。また,最後の一文を「勇者は,ひどく赤面した。」とした作者の意図を考えましょう。
教材3「握手」(中3)
【問い1】
「これは危険信号だった。この指の動きでルロイ修道士は,「お前は悪い子だ。」とどなっているのだ。」は,誰の声で聞こえますか。それはどうしてですか。
【問い2】
「葬式でそのことを聞いた時,私は知らぬ間に,両手の人差し指を交差させ,せわしく打ちつけていた。」は,誰(何)に対する,どのような気持ちを表しているでしょうか。
教材4「故郷」(中3)
【問い1】
「母はこう語った。…あれこれ議論の末,それは閏土が埋めておいたに違いない,…」とありますが,「私」は,どのような思いで「母から聞いた灰の中のわんや皿の話」を語っているでしょうか。
【問い2】
離郷の場面で「まどろみかけた私の目に,海辺の広い緑の砂地が浮かんでくる。」とありますが,「私」の目に浮かんだ「海辺の情景」は,「私」のどのような心情を表現しているでしょうか。母親の口から閏土の名前が出たときに脳裏によみがえった「海辺の情景」の回想と比較しながら,考えてみましょう。
教材5「竹取物語」(中1)
【問い1】
かぐや姫が,「しばし待て」と言ったのはなぜでしょうか。
【問い2】
「ふと天の羽衣うち着せたてまつりつれば,翁を,いとほし,かなしと思しつることも失せぬ。」とありますが,「天の羽衣」の作品中での役割はどのようなものでしょうか。また,どうしてそう考えたのですか。
教材6「羅生門」(高1)
【問い1】
下人や老婆を表す直喩表現のうち動物を使っているものに傍線を引き,使用されている場面と共通する特徴について考えてみましょう。また,そのことは,どのような意味を持つでしょうか。
【問い2】
末尾に「下人の行方は,誰も知らない。」とありますが,その後,下人はどうなったと想像されますか。どうしてそのように考えたのですか。
教材7「山月記」(高2)
【問い1】
「何処か(非常に微妙な点に於て)欠けるところがあるのではないか」とありますが,(  )は誰の言葉で聞こえますか。また,どのようなところが欠けているのか考えましょう。
【問い2】
「酔わねばならぬ時が,(虎に還らねばならぬ時が)近づいたから,と,李徴の声が言った。」の(  )の部分は誰の声で聞こえますか。また,なぜ括弧書きで言葉を挿入したのでしょう。
教材8「童謡」(高2)
【問い1】
「この少女を愛していたのか,とおもった。」とありますが,「この少女を愛していた」人はいますか。いるならばそれは誰ですか。
【問い2】
「やはりこれは自分にちがいない。」と思ったのはなぜですか。
教材9「源氏物語 桐壺」(高校古典)
【問い1】
「人よりさきに参りたまひて,やむごとなき御思ひなべてならず,皇女たちなどもおはしませば,この御方の御諫めをのみぞ,なほわづらはしう,心苦しう思ひきこえさせたまひける。」とあるが,「この御方」は,帝にとって,どのような存在だったのでしょうか。
【問い2】
桐壺の更衣は,「すぐれて時めきたまふ」ことを,どう思っていたのでしょうか。
第2章 理論編 今,求められる文学の読みの学習
1 教室で文学を読む意義と読みの深まり
2 読みの交流と言語活動
3 語り手・語り
4 語りに着目した教材分析
5 一人称の語りの小説における問いとその諸相
6 比喩と象徴
7 空所に着目した教材分析
8 複数の問いの組み合わせ
9 学習者に獲得される「空所」概念
10 学習者の問い
11 古典教材の問い
12 伝統的な言語文化の学習を成立させる条件
13 古典教材の問いの諸相
Column 問いと交流を中核とした学習デザイン
おわりに
索引
執筆者一覧

はじめに

 2018年に告示された高等学校学習指導要領に提示された国語科の科目構成,そして,大学入学共通テストにむけて実施された試行調査問題が明らかになって,国語教育のあり方について,議論が高まってきました。新しい学習指導要領は,学力の構造を決め,それに沿って全教科の学習内容を学習の手順を指定するような形で示しています。それは,1年早く告示された小・中学校の学習指導要領でも既に明らかであり,例えば,実用文を必要以上に強調するような,一種のでこぼこを感じさせるものでした。しかし,高校の科目構成と試行調査の国語らしからぬ問題の構成によって,最終的に国語科の学力をどう規定しようとしているのかが,鮮明になったと言うことができます。それは,実用文を重視し,平板で単一的な論理を学習の中核に置こうとするものです。こうした動きに対し,むしろ国語教育の世界から少しずれたメディアから大きな反応が起きました。

 例えば,2019年5月号の『現代思想』(47-7 青土社)は,『教育は変わるのか』という特集を組んでおり,国語教育に直接かかわる論文が3本掲載されています。その3本の論文から,ひとことずつだけ紹介すると,次のようになります。



 ・「ことば」そのものの危機が来ている……紅野謙介

 ・国語科はますます身も蓋もなく道徳と近づくよう誘導されている……日比嘉高

 ・言葉と世界を一対一で対応させれば「読めない!」という事態が解消できるなどと考えるのは,乱暴を通り越してほとんど野蛮ではないか……阿部公彦



 また,2019年7月号の『すばる』(41-7 集英社)は『教育が変わる 教育を変える』という特集を組んでおり,「変わる高校国語,なくなる文学」というタイトルでの伊藤氏貴氏による3名の識者へのインタビューを筆頭に,様々な意見を紹介しています。その特集の中で,F. de. ソシュール研究者(だった)前田英樹は次のように書いています。



 日本語で実用文の読み書きを教えることなどは,学校で為すべき国語教育ではない。国語とは,母語のことであり,母語は実用に供されるものよりはるかに手前にあって,人の生を養い,支え続けているものだ。このような母語を教えるには,これをその深みの底から引き揚げてきたような文学の言葉を,愛読,愛誦させるほかないように思われる。



 その『すばる』のインタビューで,内田樹氏は次のような言葉を発しています。



 僕は「テクストから引き出し得る愉悦の量を最大化できる能力」のことを「読解力」と言うべきじゃないかと思うんです。



 文学に近い立場の声ですから,どうしても文学に好意的なのではないかという見方もあるかもしれません。しかし,国語教育の専門家よりも,そうではないところの人々が国語教育とりわけ文学教育の未来に危惧を抱いているというのは,どういうことなのでしょう。国語教育の専門家,つまり国語の教師自身が,あるいは研究者自身が,いまひとつ自分の仕事に自信を持てず,とりあえず突きつけられた課題にひるんでしまっているのかもしれません。

 しかし,「主体的・対話的で深い学び」という言葉だけを考え,国語科の見方・考え方を突き詰めて,シンプルに自分の考える授業の姿をそれぞれ考えてみたらどうなのでしょう。そこに生まれる多様性が国語教育を救うのではないでしょうか。その時,重要なのが教師と学習者が共有すべき「問い」です。

 国語教育とは離れた場所にいる野依良治氏は,「教育新聞」でのインタビューで,次のようなことを話しています(2019年6月25日 THE PAGE 配信)。



 考える力,答える力が落ちていると言いますが,最も心配なのは「問う力」がほとんどないこと。誰かに作ってもらった問題に答える習慣が染み付いている。幼い子供たちは好奇心を持つが,学校教育が疑いを持つことを許さないのではないか。発展につながるいい問題を作るのは,与えられた問題にいい答えを出すよりも,ずっと難しいのです。



 『すばる』のインタビューを踏まえて書かれた内田樹のブログ(2019-05-18)には,次のように述べられています。



 子どもたちが中等教育で学ぶべきことは,極論すれば,たった一つでいいと思うんです。それは「人間が知性的であるということはすごく楽しい」ということです。知性的であるということは「飛ぶ」ことなんですから。子どもたちだって,ほんとうは大好きなはずなんです。



 このような問題意識を共有しましょう。私たちが国語の学習において優れた「問い」が必要だと言うのは,問いを共有した学習によって,「問う力」を,「知性」を,学習者に身につけてもらいたいと願うからです。


  令和2年春   /松本 修

著者紹介

松本 修(まつもと おさむ)著書を検索»

玉川大学教職大学院教授。

栃木県宇都宮市生まれ。筑波大学人間学類を卒業後,栃木県立高等学校国語科教諭として13年あまり勤務。かたわら,宇都宮大学大学院修士課程,筑波大学大学院教育学研究科研究生として学ぶ。上越教育大学国語コース,学習臨床コース,教職大学院を経て現職。文学教材の教材研究,国語科授業における相互作用の臨床的研究を基盤にした読みの交流の研究,言語活動の成立条件に関する研究を中心に行っている。

桃原 千英子(とうばる ちえこ)著書を検索»

沖縄国際大学准教授。

沖縄県那覇市生まれ。沖縄県公立中学校教諭として16年あまり勤務。かたわら,上越教育大学大学院学習臨床コースを修了。離島僻地校や中高一貫校勤務を経て現職。学習者の相互交流による作文教育や,読みの交流学習の研究を中心に行っている。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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