高等学校国語科 続・その問いは、文学の授業をデザインする

高等学校国語科 続・その問いは、文学の授業をデザインする

新刊

インタビュー掲載中

8つの実践教材×確かな理論で再び迫る、これからの文学授業

多様な読みに開かれ、交流を促す「問い」とは?丁寧な作品分析から問いの意図、想定される交流や解釈例、問いを組み合わせた単元デザインまで、確かな理論でこれからの文学授業に迫る。第2弾となる本書では高等学校8教材・16の「問い」による授業を新たに提案する。


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ISBN:
978-4-18-362383-6
ジャンル:
国語
刊行:
対象:
高校
仕様:
B5判 128頁
状態:
在庫あり
出荷:
2022年5月18日
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目次

もくじの詳細表示

はじめに
凡例
第1章 実践編 高等学校文学教材の「問い」と学習デザイン
教材1 「夢十夜」(小説)
【問い1】「女」と「百合」の描かれ方を比較し,「自分」の中で両者がどのように繋がっているか,本文を基に説明してみましょう。
【問い2】「「百年はもう来ていたんだな」とこの時始めて気が付いた。」とありますが,なぜ「自分」はそのように思ったのでしょうか。
教材2 「鏡」(小説)
【問い1】「人間にとって,自分自身以上に怖いものがこの世にあるだろうかってね。」とありますが,「僕」にとって自分自身の何が恐ろしかったのでしょうか。
【問い2】「ところで君たちはこの家に鏡が一枚もないことに気づいたかな。」とありますが,「この家に鏡が一枚もない」のはなぜでしょうか。また,「僕」にとって鏡とはどのような存在なのでしょうか。
教材3 「こころ」(小説)
【問い1】それぞれの「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」の役割はどのようなものでしょうか。作品中で2つの場面で放たれた言葉です。
【問い2】「私」はKの自殺の原因をどのように捉えたのでしょうか。遺書の内容は示されていますが,具体的な記述はほとんどありません。自殺の理由に結び付くはずのKの心理描写がないのはなぜでしょうか。
教材4 「舞姫」(小説)
【問い1】「この一段のことはもと生れながらなる弱き心より出でしなれば,いまさらに言わんも甲斐なし。」の,「弱き心」とは,どのような心でしょうか。また,それは誰によって「弱き心」と捉えられたものでしょうか。他の部分に出てくる「弱き心」などを参考にしながら考えてみましょう。
【問い2】「一点の彼を憎むこころ」とはどのような心でしょうか。また,「人知らぬ恨み」との関係はどのようなものでしょうか。
教材5 「檸檬」(小説)
【問い1】「何故だかその頃私は見すぼらしくて美しいものに強くひきつけられたのを覚えている。」とありますが,「その頃」好んでいるものと,「生活がまだ蝕まれていなかった以前」好んでいたものとを,それぞれ本文中から探しましょう。
【問い2】「私」は爆弾に見立てた「檸檬」で何を破壊しようとしたのでしょうか。また,その根拠となる本文中の表現をあげましょう。
教材6 「永訣の朝」(詩)
【問い1】「まがつたてつぱうだまのやうに」という箇所について,誰の立場から誰の知覚や思考を述べているか,理由も含めて話し合いましょう。
【問い2】妹とし子が雨雪をとってくれといったことが,なぜ「わたくし」を「いつしやうあかるくする」ことになるのでしょうか。
教材7 「平家物語 木曽の最期」(古典)
【問い1】義仲軍の人数の変遷がわかる表現を探しましょう。その表現は,人物の描写と比較して,どのような特徴があるでしょうか。
【問い2】「今井がゆくへのおぼつかなさに,ふりあふぎたまへる」とありますが,義仲が兼平の方を振り仰いだのはなぜでしょうか。
教材8 「徒然草」(古典)
【問い1】兼好法師が「あやしき下揩ネれど」と高名の木登りの身分に触れたのはなぜでしょうか。
【問い2】92段,110段を合わせて読み,再び次の問いについて考えましょう。兼好法師が「あやしき下揩ネれど」と高名の木登りの身分に触れたのはなぜでしょうか。
Column 高等学校における学習者の主体性
第2章 理論編 高等学校文学の授業づくりのこれから
1節 新学習指導要領・新教育課程における文学教材の位置
1 改訂の方向性と文学教材の扱い
2 新学習指導要領における「言語文化」「文学国語」「古典探究」の位置
3 新学習指導要領の趣旨を活かした文学的な文章の指導の視点―批評的な読みなど―
4 読むことにおける文学教材と古典
5 大学入試共通テストと国語科における文学の学習
2節 「問い」を作り交流するための着目点
1 読みの交流の成立条件
2 描出表現
3 象徴
4 空所
5 情景描写
おわりに
引用・参考文献
執筆者一覧

はじめに

 この本は,『中学校・高等学校国語科 その問いは、文学の授業をデザインする』(明治図書 2020)の続編として編まれたものです。

 前著の「はじめに」においては,告示された新しい学習指導要領の内容を受けて,文学教育の危機を訴える言説をいくつかのメディアから拾いつつ,子どもたちから「問う力」が失われつつあるのではないか,「知性的であることの楽しさ」を学ぶべきなのではないか,という問題意識を出発点にして,文学の学習デザインを考えました。しかし,「問い」の具体例を示しつつ,なぜその「問い」が学習を楽しい知的な活動として活性化させるのか,そしてそれを支える学習のための着目点を示そうという意図は,提示することのできる教材が限られてしまったため,十分には果たせなかった憾みがあります。

 この本では,「実践編」で,8つの文学教材を取り上げ,改めて読みを深めるための「問い」を軸に,多様な読みに開かれ,交流を促す学習デザインを提示することにします。そして,「理論編」で,そのような「問い」を導くための考え方やヒントを示すことにします。


 さて,学習指導要領が更新されると,教育界では次の話題は「評価」ということになります。そして,評価を巡っても様々な議論が行われてきました。しかし,国語教育の世界では,もっぱら「評価のやり方」が問題にされ,新しい学習指導要領が提示する「資質・能力」に対応するような力が具体的にどのようなものであり,評価はどうあるべきなのかという本質的な問いを避けて通るような「説明」がなされてきました。例えば,次のように評価規準がたてられると言うのです。「言語文化」で言えば,たぶん,次のような形になります。

 ・我が国の言語文化に特徴的な語句の量を増し,語感を磨き語彙を豊かにしている。(知識・技能ウ)

 ・内容や構成,展開などについて叙述を基に的確に捉えている。(思考・判断・表現 構造と内容の把握ア)

 ・文章の構成や展開,表現の仕方,表現の特色について評価している。(精査・解釈ウ)

 ・作品の内容や解釈を踏まえ,自分のものの見方,感じ方,考え方を深め,我が国の言語文化について自分の考えをもっている。(考えの形成,共有オ)

 いずれも学習指導要領の「内容」の一部を「〜すること」という文末を「〜している」に置き換えただけのものです。このような評価規準で評価をしようとすると,それぞれの項目に対応するような必然性のない学習課題が作られ,生徒は手順を追って,作業をこなしていくようなことになってしまいます。学習は手順に従う作業ではありません。

 実際の教室では,授業者が教材の特質を見極め,それぞれの教材に応じた学習目標・評価規準をたて,それに向かって有効に働く学習活動・言語活動をデザインするはずです。学習指導要領の「内容」などは大雑把過ぎて,具体的な言語活動に結び付くような目標・規準のヒントにはなりません。やはり国語科の学習指導要領では明示されることのなかった「言葉による見方・考え方」を教材に即して考えてみるというところから出発した方がいいかもしれません。

 学習指導要領の前提となった2016年12月の中央教育審議会答申においても,言語の機能に即して国語科特有の見方・考え方が把握できるということが示唆されていました。


 事物,経験,思い,考え等を言葉で理解したり表現したりする際には,対象と言葉,言葉と言葉の関係を,創造的・論理的思考,感性・情緒,他者とのコミュニケーションの側面から,言葉の意味,働き,使い方等に着目して捉え,その関係性を問い直して意味付けるといったことが行われており,そのことを通して,自分の思いや考えを形成し深めることが,国語科における重要な学びであると考えられる。


 文学領域では,「創造的思考(感性・情緒−物語的)」「創造的思考(感性・情緒−詩的)」という言語の機能に着目して,「この教材における言葉による見方・考え方」を見極め,それに対応する「資質・能力」を考え,そこから「学習すべき内容」を具体化しながら「問い」や言語活動を考えるべきなのです。これは,一見大変な作業に見えますが,実は,これを問い,交流すれば楽しい知的な活動になるだろうということを考えれば,自然にそうなるはずです。

 村上春樹は『村上さんのところ』(新潮文庫 2018 p.570)の「詩と小説の違い」についての質問への回答で,詩の根本原理を,「短いストレッチの中で行われる心の転換(風景の捻転)」だと述べています。この「風景の捻転」こそ,例えば三好達治の「土」に見ることができる「見方・考え方」です。地べたを動く蝶の羽が大海原のヨットへと捻転する瞬間がそこにあるのです。そこでの「問い」は,「土」という題名を伏せてそれを問うものであったり,「ヨットのやうだ」の「ヨット」を伏せてそれを問うものであったり,その2つの組み合わせであったりするでしょう。

 前著でも引いた内田樹の言葉をもう一度噛みしめたいと思います。(『すばる』第41巻7号,集英社)


 「テクストから引き出し得る愉悦の量を最大化できる能力」のことを「読解力」と言うべきじゃないかと思うんです。


 私たちも楽しみながら,学習者も愉しい文学の学習をデザインしていきましょう。


  令和4年2月   /松本 修

著者紹介

松本 修(まつもと おさむ)著書を検索»

玉川大学教職大学院教授。

栃木県宇都宮市生まれ。筑波大学人間学類を卒業後,栃木県立高等学校国語科教諭として13年あまり勤務。かたわら,宇都宮大学大学院修士課程,筑波大学大学院教育学研究科研究生として学ぶ。上越教育大学国語コース,学習臨床コース,教職大学院を経て現職。文学教材の教材研究,国語科授業における相互作用の臨床的研究を基盤にした読みの交流の研究,言語活動の成立条件に関する研究を中心に行っている。

佐藤 多佳子(さとう たかこ)著書を検索»

上越教育大学大学院教授。

新潟県見附市生まれ。新潟県公立小学校教諭として20年勤務。その間に,上越教育大学教職大学院,兵庫教育大学大学院博士課程(連合大学院)修了。言語活動を中核とした国語科学習デザインの実践研究を中心に行っている。

桃原 千英子(とうばる ちえこ)著書を検索»

沖縄国際大学准教授。

沖縄県那覇市生まれ。沖縄県公立中学校教諭として16年あまり勤務。かたわら,上越教育大学大学院学習臨床コースを修了。離島僻地校や中高一貫校勤務を経て現職。学習者の相互交流による作文教育や,読みの交流学習の研究を中心に行っている。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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