著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
社会との関わりを意識した公民授業に向けて
玉川大学教育学部教授樋口 雅夫
2022/2/18 掲載
 今回は樋口雅夫先生に、新刊『新3観点の学習評価を位置づけた中学校公民授業プラン』について伺いました。

樋口 雅夫ひぐち まさお

玉川大学教育学部教授。広島大学大学院教育学研究科教科教育学専攻博士課程前期修了。岡山県教育委員会、岡山県立高等学校教諭、広島大学附属福山中・高等学校教諭、広島経済大学経済学部講師、国立教育政策研究所教育課程研究センター教育課程調査官並びに文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官を経て、2018年より現職。専門は社会科教育学、公民教育。
著書は、『平成30年版学習指導要領改訂のポイント 高等学校地理歴史・公民』(共著、明治図書、2019年)『評価事例&テスト問題例が満載!中学校社会新3観点の学習評価完全ガイドブック』(共著、明治図書、2021年)など。

―樋口先生は本書の冒頭で、新3観点の学習評価を位置づけた公民授業づくりの要件について述べられています。本書のタイトルとなっている「新3観点の学習評価を位置づけた中学校公民授業プラン」を実現するには、ズバリ、どのようなことが大切でしょうか。

 社会科の中でも公民的分野は、社会との関わりがとりわけ大きな分野です。そのため、「主体的に社会に参画しようとする態度をどのように育成するか」を常に意識しておくことが大切なのではないでしょうか。この点を第一に踏まえることで、単元や本時でどのような「知識及び技能」や「思考力、判断力、表現力等」を身につけることが必要か、などといった新3観点の学習評価を位置づけた授業プランが効果的に作成できるようになると期待しています。

―今説明いただいたように、公民的分野は社会との関わりが大きな分野で、キーワードとされている「現代社会の見方・考え方」は、今の社会をどのように見て、考えるか、というところに直接結びつく部分も多いと思います。そのような見方・考え方を生徒に培っていくには、どのような取り組みが必要でしょうか。

 生徒の日常生活と関連づけ、具体的事例を通して政治や経済などに関わる制度や仕組みの意義や働きについて理解し、考察・構想できるようにすることが必要でしょう。対立と合意、効率と公正などの見方・考え方を学習のさまざまな場面で働かせることで、複雑で自分とは関係がないと思っていた社会的事象を「自分ごと」として捉えられるようになり、同時にこれらの見方・考え方を鍛えることにもつながると考えます。

―公民的分野においては、対立と合意、効率と公正などに着目して、また紛争や社会問題などをテーマとするなど、答えが一様ではない、ジレンマ教材、ディベートや話し合い様子を含むテーマも多くあります。そのような授業において、生徒の力を正しく見取り、評価してフィードバックしていくには、何が大切でしょうか。

 まず留意するのは、生徒のもつ価値観そのものを評価するわけではない、ということです。学習テーマに即して、生徒の主張の根拠となる事実・統計データなどは何か、それらを適切に用いて論理的に主張を展開しているか、といった点を見取り、フィードバックすることが大切です。そのためには、さまざまな思考ツールを活用し、その結果をワークシートなどに記入させて見取ることなどが有効でしょう。

―本書では、授業展開例に加えて、その授業を受けての評価問題例(ペーパーテスト例)についても、収録されています。公民的分野における評価問題・テスト作成の際のポイントがあれば、教えて下さい。

 その評価問題で、3観点のうちのどの観点を見取りたいのかを明確にしておくことが大切です。とりわけ公民的分野の「主体的に学習に取り組む態度」については「現代社会に見られる課題の解決を視野に主体的に社会に関わろうとしている」かどうかを評価規準として設定し、それを見取ることのできる問題を設定することが求められます。本書の評価問題例が参考になると思います。

―高等学校では、「18歳の大人」として必要な資質・能力を育むための中核を担う科目として公民科に「公共」が新設されました。そこにつなげていくために、またその基礎を養うために、どのような取り組みが大切でしょうか。

 「公共」では中学校の社会科以上に、主権者として、教室での学びを社会に生かすことが期待されています。しかし、その基礎となる知識や概念、制度や仕組みは公民的分野で学習します。特に、政治や法、経済、国際社会の単元で扱われる見方・考え方は、「公共」の学習の基盤となるので、「高校でも使うよ」「社会に出てからも大切だよ」といったメッセージを生徒に伝えていただきたいと思います。

―最後に読者の先生方へ、メッセージをお願い致します。

 本書の「授業展開例」に掲載されている「課題」は、教室で教師が生徒に問いかけたり指示したりした発言そのものを収録しています。このまま使っていただいても、生徒の実態に即してアレンジしていただいても構わないように構成されています。「公民学習って面白い」と思える生徒を一人でも多く育む一助として、本書を活用していただけることを願っています。

(構成:及川)
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