- 著者インタビュー
- 算数・数学
本書は、「◯年・単元◯◯・◯時間目のタブレット端末を使用した実践例」の数は多くはありません。しかし、その代わりに、算数科における1人1台タブレット端末の授業を行うためのポイント、要素について書きました。
このポイントや要素をわかっていれば、実践集を参考にしなくても、自分たちでつくり出すことができるようになると考えています。そのため、自分の算数授業のOSをアップグレードするために使用してもらえたら、ありがたいです。
タブレット端末が導入されて、半年が過ぎた現在。みなさん、試行錯誤していることでしょう。私も最初はタブレット端末を授業でどのように使用しようかということに興味がありました。しかし、それだけでは「うまくいかなくなる」時期がやってきます。
私自身が機器のスキルが不足しているとか単純な話ではありません。
これは教科としての特質があるからなのでしょうか。何が理由なのか、悩みつつも整理したところ、なぜ「算数が1人1台端末の授業を行いづらい」と感じるのかを
- 絶対解という存在
- 算数には洗練された表現がある
- アナログ教具がもうすでにある
- 多様性を認めていない可能性
- 算数授業の進め方
- 教師観が古い
という6つの理由で整理しました。この6つの理由を明らかにしたことも
自分のこれまでの算数授業を解体し、組み立て直す
ことができた要因の1つだと思います。このように組み立て直していく中で、「タブレット端末を使って授業をどう変えたいのか」ということの大切さに気がつきました。
2章で紹介した、「算数が1人1台端末の授業を行いづらい」と感じた理由の
- 絶対解という存在
- 算数には洗練された表現がある
- アナログ教具がもうすでにある
- 多様性を認めていない可能性
- 算数授業の進め方
- 教師観が古い
の6つと反対の使い方ができれば、タブレット端末を使う有効性を教師が感じることができます。
つまり、視点を変えること、その理由に出てきたマイナスなことをしないこと、その理由をうまく活用することが成功のポイントとなります。
本書では9つの利点として、
- 場所・時間を問わずに取り組める
- 情報を送り合うことができる
- 自分が必要な画像や動画などのデータを蓄積することができる
- 自分の考え・動きを可視化することができる
- 友達の考えをすぐに知ることができる
- 子どもたち自身で考えを比較することができる
- 子どもたち自身で考えを整理することができる
- 子どもたち自身で考えを分析することができる
- 子どもたち自身で考えを構造化することができる
をあげています。これは、拙著『GIGAスクール構想で変える!1人1台タブレット端末時代の授業づくり』で子どもたちが考える1人1台のタブレット端末ありの授業のよさとして9つに分類をしたものです。
つまり、この9つの利点はどの教科にも通じることです。だから、子どもたちも他教科で感じたよさを算数科でも感じるということです。
- デジタルよりもアナログの方がよい
- アナログよりもデジタルの方がよい
という二項対立な考えはいますぐ捨ててください。二項対立ほど、単純な話ではありません。
発達段階、学習内容に応じてアナログ教具とデジタル教具を使い分ける
という授業モデルがこれからの算数授業で求められるモデルだと考えています。
そのためには、
- 何ができるようになるのか
- 何を学ぶのか
- どのように学ぶのか
といったことを考えていかないといけません。
ただ単にタブレット端末を使おうという話ではないということです。
タブレット端末を使った算数授業がよりよくなるには、とにかくタブレット端末を使った授業の経験を積むしかありません。
失敗も成功もどちらの経験も必要です。私も数え切れないくらいの失敗をしています。失敗を恐れずに、タブレット端末を取り入れた算数授業を考え、行ってみてください。
自分が考えて行った授業の失敗だからこそ、次にタブレット端末を取り入れた算数授業を考えるための糧となります。成功だけを求めてはいけません。
また本書において、自分が「算数が1人1台端末の授業を行いづらい」と思っていた理由を正直に書きました。「算数が1人1台端末の授業を行いづらい」ということに向き合えたからこそ、算数授業におけるタブレット端末の使い方がわかってきたのだと思います。
とはいっても、まだ完全に算数授業におけるタブレット端末の使い方がわかったわけではありません。だから、これからも試行錯誤をしながら、探っていこうと考えています。共に試行錯誤をしていきませんか。