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前書「100万人シリーズ」を読まれた先生から、「同じ流れで授業を展開したところ、子どもたちが生き生きと学んでくれた」という声を聞きます。多忙な中、子どもたちと悪戦苦闘されている先生方が多いと思います。ぜひ、そんな先生に追試していただき、教材や授業のツボを体感してもらえれば、独自の教材開発のヒントになると確信しています。
子どもが「へっ!これは面白そう」「えっ!早く知りたい」「なるほど!そうなんだ」と主体的に考えようとする「発問」「課題」が不可欠です。また、それが、教師が教えたい「知識や見方・考え方」と一致していなければ、学びは継続しません。教材・授業づくりで大切な視点は、「子ども(日常)の視点」と「教師(科学)の視点」の統一です。
「見方・考え方」とは「思考力、判断力」と類似であり、「知識を忘れても深層深く残るもの」と考えています。知識はいずれ忘れるものです。しかし、思考力、判断力は定着・向上していきます。「見方・考え方」を鍛える授業のポイントは「疑問」を持ち、「考え」そして「対話」することです。平易な題材から難解な討論を通して、「思考力、判断力」を培います。「学習意欲の低い子」も「興味ある魅力的な」題材を通じて「見方・考え方」は鍛えられます。
オリンピック・パラリンピックでは、「SDGs」(持続可能な開発目標)を意識した授業が可能です。例えば、「メダル」はスマホなどに含まれる希少金属から、「表彰台」は「廃棄プラスチック」から製作します。また、閉会式翌日は、出場者や観戦者をふくめ世界各国1万人が手をつなぎ、富士山を囲む国境や宗教の違いを超えたイベントも企画されています。陸上競技円盤投げに出場予定の湯上選手は、生まれながらにして聴力障がいがあります。普段の生活では、人工内耳をつけていますが、試合ではそれを外し「無音の世界」をつくります。障がいを“強み”に変えているのです。「せっかく障がいをもって生まれてきたんだから、周りの人たちに勇気を与えるような活動をしたい。それをかなえられる場所が五輪」とは、湯上選手の言葉です。
「100万人シリーズ」は、全国の中学生全員が…という意味のネーミングです。若い頃、トンでもない授業をしていた私に反抗し悪態をつく子どもがいました。また、勉強ができないのは、自己責任だと思っている子もいます。私は、自己嫌悪におちいり何度も教師をやめようと思ったことがありました。でも、私に教材開発と授業力量をつけてくれたのも、そんな声です。すべての子どもの“目が輝く”、“学力差のない”授業をつくっていくことが、教師の“仕事の流儀”です。