著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
学力差を超えた授業で、すべての子どもに見方・考え方を!
立命館大学非常勤講師河原 和之
2019/7/19 掲載
 今回は河原和之先生に、新刊『100万人が受けたい! 見方・考え方を鍛える「中学社会」  大人もハマる授業ネタ』シリーズについて伺いました。

河原 和之かわはら かずゆき

1952年京都府木津町(現木津川市)生まれ。関西学院大学社会学部卒。東大阪市の中学校に三十数年勤務。東大阪市教育センター指導主事を経て、東大阪市立縄手中学校退職。現在、立命館大学、近畿大学他、7校の非常勤講師。授業のネタ研究会常任理事。経済教育学会理事。NHKわくわく授業「コンビニから社会をみる」出演。
月刊誌『社会科教育』で、「100万人が受けたい! 大人もハマる社会科授業最新ネタ」を連載中。
主な著書・編著書に、『続・100万人が受けたい「中学社会」ウソ・ホント?授業』シリーズ(地理・歴史・公民)『スペシャリスト直伝!中学校社会科授業成功の極意』『「本音」でつながる学級づくり 集団づくりの鉄則』『100万人が受けたい「中学社会」ウソ・ホント?授業』シリーズ(地理・歴史・公民)『<活用・探究力を鍛える>「歴史人物42人+α」穴埋めエピソードワーク』(以上、明治図書)などがある。

―本書は、大好評をいただいております「100万人が受けたい」シリーズの第3弾として、河原先生の最新授業ネタについて、ご紹介いただいています。河原先生が本書に込められた想いと、「このように読んで欲しい」「使って欲しい」など読み方のポイントがございましたら、教えて下さい。

 前書「100万人シリーズ」を読まれた先生から、「同じ流れで授業を展開したところ、子どもたちが生き生きと学んでくれた」という声を聞きます。多忙な中、子どもたちと悪戦苦闘されている先生方が多いと思います。ぜひ、そんな先生に追試していただき、教材や授業のツボを体感してもらえれば、独自の教材開発のヒントになると確信しています。

―本書で紹介されている「見方・考え方を鍛える」ポイントからの授業ネタは、「江戸城に天守閣がないワケ」「なぜヨーロッパはパスタ?日本はうどん?」など、タイトルを聞いただけでもワクワクするようなものが満載ですが、どのような視点でこのような教材づくり・授業構想をされていらっしゃいますか?

 子どもが「へっ!これは面白そう」「えっ!早く知りたい」「なるほど!そうなんだ」と主体的に考えようとする「発問」「課題」が不可欠です。また、それが、教師が教えたい「知識や見方・考え方」と一致していなければ、学びは継続しません。教材・授業づくりで大切な視点は、「子ども(日常)の視点」と「教師(科学)の視点」の統一です。

―河原先生はこれまで、「学習意欲の低い子どもが活躍できる授業の工夫」をライフワークとされてきました。魅力的な題材で興味・意欲を刺激された子どもが、それをさらに掘り下げ、自分の見方・考え方を鍛え、“深い学び”と言えるものにしていくには、どのようなことが大切でしょうか。

 「見方・考え方」とは「思考力、判断力」と類似であり、「知識を忘れても深層深く残るもの」と考えています。知識はいずれ忘れるものです。しかし、思考力、判断力は定着・向上していきます。「見方・考え方」を鍛える授業のポイントは「疑問」を持ち、「考え」そして「対話」することです。平易な題材から難解な討論を通して、「思考力、判断力」を培います。「学習意欲の低い子」も「興味ある魅力的な」題材を通じて「見方・考え方」は鍛えられます。

― オリンピックも近く、また、日本という国を取り巻く情勢、世界の国同士の関係も、目まぐるしく移り変わっていますが、先生が最近、「これは社会科の題材として是非とりあげたい」「子どもたちに考えさせたい」と思われた授業ネタ・アイデアがございましたら、ご紹介下さい。

 オリンピック・パラリンピックでは、「SDGs」(持続可能な開発目標)を意識した授業が可能です。例えば、「メダル」はスマホなどに含まれる希少金属から、「表彰台」は「廃棄プラスチック」から製作します。また、閉会式翌日は、出場者や観戦者をふくめ世界各国1万人が手をつなぎ、富士山を囲む国境や宗教の違いを超えたイベントも企画されています。陸上競技円盤投げに出場予定の湯上選手は、生まれながらにして聴力障がいがあります。普段の生活では、人工内耳をつけていますが、試合ではそれを外し「無音の世界」をつくります。障がいを“強み”に変えているのです。「せっかく障がいをもって生まれてきたんだから、周りの人たちに勇気を与えるような活動をしたい。それをかなえられる場所が五輪」とは、湯上選手の言葉です。

― 最後に、このシリーズを手にとっていただいた読者の先生方へ、メッセージをお願い致します。

 「100万人シリーズ」は、全国の中学生全員が…という意味のネーミングです。若い頃、トンでもない授業をしていた私に反抗し悪態をつく子どもがいました。また、勉強ができないのは、自己責任だと思っている子もいます。私は、自己嫌悪におちいり何度も教師をやめようと思ったことがありました。でも、私に教材開発と授業力量をつけてくれたのも、そんな声です。すべての子どもの“目が輝く”、“学力差のない”授業をつくっていくことが、教師の“仕事の流儀”です。

(構成:及川)

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