著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
小学生にこそ論理的思考力・表現力の指導をしよう!
青山学院大学准教授長谷川 祥子
2017/6/8 掲載

長谷川 祥子はせがわ さちこ

1987年埼玉大学教育学部卒業,2006年早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程満期修了,1987年都立足立ろう学校教諭,1991年北区立堀船中学校教諭,1999年新宿区立牛込第二中学校教諭,2006年東京都教育委員会指導主事,2011年豊島区立豊成小学校副校長,2013年北海道教育大学,2017年より青山学院大学勤務。主な著書に、『中学校新国語科 系統的指導で論理的思考力&表現力を鍛える授業アイデア24』(単著)、『論理的思考力を育てる授業の開発 中学校編』『検定外・力がつく日本言語技術教科書』全12巻(共著、いずれも明治図書)などがある。

―小学生に小論文指導…というのはあまり先生方にとってはなじみがないかもしれません。長谷川先生が小学生向けに小論文の指導をと思われたきっかけはなんでしょうか?

 「小論文」というと、高校入試や大学入試の小論文問題を思い浮かべる先生が多いと思います。「書くこと」や「作文の指導」と示すと、生活作文を想像される先生が大勢いることでしょう。あと数年で、大学入試はマークシート方式から記述式に変わります。新学習指導要領では論理的に考える力が今まで以上に重視されています。社会では論理的に表現する機会が益々増えます。そこで、小学生から日常生活を題材にして論理的に書くことの大切さやその手順を、この本では示しました。
 本書での「小論文」とは、400字程度の小さな論文″を意味しています。小学生に行事作文や読書感想文を原稿用紙に2、3枚書かせるより、簡潔にまとまった小論文を書かせる方が学習の成果を期待できます。これは、私自身が中学1年を教えていて、学期初め、5行程しか書けない生徒を各クラス数名程度見てきたことがきっかけです。

―本書では、小論文の書き方授業で必要な教材教具も挙げてくださっています。やはり、きちんとした教材教具だと子どもたちの取り組みが違うのでしょうか?

 鉛筆や原稿用紙、ノートは国語以外の学習で使うことができます。是非、子どもに持たせてください。「学習道具を丁寧に扱える人は、学習の仕方も丁寧です」と、子どもに話してみてください。
 「優秀・合格」の印は先生方が準備しますが、こちらは特注です。一度つくれば、40年近い教師人生の間、使い続けることができます。

―実践編では、練習教材として発達段階に応じたトレーニングワークシートを掲載いただきました。どのくらいの頻度で、どのくらいの時間をとって実施したらよいでしょうか。

 本書掲載のワークシートには20分程度、と記載をしましたが、時間は目安です。高学年は5〜10分程度で終わる場合もあります。小論文指導のすきまの時間や、論理的文章を読む学習の合間で行ってみてください。先生が問題の説明をしないで、正解をすぐに言った方が子どもはよく考え、楽しみながら取り組むようです。

―「授業時数が足りず、教科書だって終えるのが精いっぱい」…という先生方も多いかと思います。教科書教材と本書の指導法を併用していただくコツを教えてください。

 国語の教科書が厚くなり、古典も入り、授業時数が足りないという話はよく聞きます。
 教科書に載っていない教材は、新たに追加できないと思われがちですが、そうではありません。教科書の「書くこと」の単元を見てください。一単元に時間がかかり、書くためのワークシートや子どもに書かせたい文章例が不足しています。ここは思い切って、教科書の「書くこと」の単元は一斉音読で終えてはいかがでしょうか。20分程度で読み終わります。読んだ後に、この小論文指導を4時間で設定してみてください。論理的に書く力がどんどん伸びます。

―最後に、読者の先生方に向けてメッセージをお願いします!

 多くの小学校の先生方は教材研究に時間をかけ、研究授業に真摯に取り組み、子どもを常に活動させようとしています。これまで熱心な先生方に多数、出会ってきました。熱心な先生ほど「子どもが書けない」「書かせる手立てが見つからない」と困っていました。その解決のために、この本では一つの方法を示したつもりです。理屈はさておき、実践あるのみです。何回か、繰り返しお試しください。子どもの変容を見ることができることでしょう。

(構成:林)

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