考え、議論する道徳授業を創る!問いでわかる道徳授業づくり・実践講座
考え、議論する道徳授業にお悩みの先生必見!授業づくりの要である問い(発問)をもとに、授業展開のポイント・指導のコツをアドバイスします。
道徳授業づくり実践講座(12・最終回)
道徳の授業をもっと楽しく!ワークショップで学びを深める
立命館大学大学院教授荒木 寿友
2019/5/25 掲載

 この連載も最終回を迎えました。これまで読んでくださってありがとうございます。今回は私のもう一つの専門であるワークショップをベースにした道徳の授業づくりで締めますね。

ワークショップとは

 日本ではワークショップという言葉が脚光を浴びてもうずいぶんと経ちました。すでに市民権を得た言葉のように感じています。とりわけここ数年は「アクティブ・ラーニング」が良くも悪くも席巻したおかげで、ワークショップ的な学びのハードルが下がり学校でも多数実践されるようになったのではないでしょうか。
 そもそもワークショップとは、黙って座って聞くだけの「座学」に対抗する教育手法として、参加者が実際に参加・体験し、他者とともに協働的な学びを実践していく中で学んでいこうとする手法です。私自身は「一方的な講義形式ではなく、社会的存在としての自己が他者との関わりの中で、所与の目的を達成するために参加体験的な活動を通じて協働的・創造的にアプローチし、『生』を豊かにするプロセス」(荒木、2016)と小難しく定義していますが、要するに、ワークショップで学んだことを積極的に日常生活で生かしていこうという意味で捉えています。
 ワークショップは、もともとは大人の学びの文脈で誕生しましたが、いまや、まちづくりや野外活動、アート、社会変革、そして学校教育の分野で広く用いられる手法となっています。もちろん道徳の授業においても十分効果的な役割を発揮します。
 では、このようなワークショップはどのように道徳の授業に生かせるのでしょうか。今回は「伝言絵ワークショップ」を例に考えてみましょう。

伝言絵ワークショップ

概要:
 伝言絵ワークショップとは、あるイラストを言葉とジェスチャーで伝え、それを聞き取って同じようなイラストを作り上げるワークショップです。今回は対象を中学生にしていますが、小学生でも十分実施できます。

主題名:伝言絵ゲーム (B-9 相互理解、寛容)
ねらい:イラストを伝言で伝え、それを聞き取って絵にしていくという活動を通じて、どのように伝えればよいのか、どのように聞くことが好ましいのかというコミュニケーションの相互作用について考え、これからのコミュニケーションに対する考えを深め、今後の行動に生かしていこうとする道徳的実践意欲と態度を育てる。

内容項目:B-9 相互理解、寛容(中学校学習指導要領)
自分の考えや意見を相手に伝えるとともに、それぞれの個性や立場を尊重し、いろいろなものの見方や考え方があることを理解し、寛容の心をもって謙虚に他に学び、自らを高めていくこと。

準備物:
イラスト(インターネット上にあるフリーの素材など)
イラストに描かれている色が入っているペン(グループ分)
白色の紙(グループ分)
タイマー

進め方(30分程度):
 4名程度でグループをつくります。学校の場合は班ごとで大丈夫でしょう。そのグループを2つに分けます。片方のグループは絵を描く係、もう片方のグループは絵について口頭で伝える係です。
 制限時間内に絵を完成させるワークです。制限時間は10分から15分くらいがよいですが、イラストの難しさや進み具合をみて適宜延長しても構いません。イラストは教卓の中などに隠して、その場でしか見えないようにしておくのがよいでしょう。進め方を説明する際に、「カラーコピーのような複製を描いてください」というと、細かいところまで目が向くようになります。
 実施後は必ずふりかえりを行います。

ルール:
伝える役割の人は、何度見に行っても構いません。
描く役割の人がこっそりと見に行くのはダメです。
見に行った人が描いている人の紙の上で指でなぞるのはダメです(ジェスチャーはOKです)。

ふりかえりの問い(共有を含めて20分程度):

問いうまく伝わったところ、うまく伝わらなかったところはどういうところですか?

問いお互いのコミュニケーションをうまくいくようにするためには、どういうところを工夫すればよいでしょうか?

 上記の問いについて考えた後に、以下の問いについて各グループでまとめるのも一案です。

問いお互いに理解し合うために必要なこと3箇条をあげましょう。

 これをA3用紙にまとめるなどして、授業後に教室に掲示してはいかがでしょう。

ワークショップを用いる際の注意点:
 以上のように、ワークショップは実体験することが主とした活動ですが、最も大切な点は「ふりかえり」(リフレクション)を行うところにあります。逆に言えば、ふりかえりのないワークショップは単なる体験活動であり、意図的に学びを深めていくことはできません。ワークショップを用いる場合は、必ずふりかえりを行い、参加者(ここでは児童生徒)が自らの活動を意味付けていく必要があります。ワークショップが意図的な教育活動であるためには、ふりかえり活動は必須のものとなります。
 あと一つ注意点を上げるとすれば、実施者が喋りすぎない(余計な口出しをしない)ことです。一般的に教師と呼ばれる人々は教えることが大好きなので(だからteachする人、teacherなんですよね)、黙って見守ることが実は苦手だったりします。子どもたちが自ら動いて自ら気づくことが最も重要なことですので、アドバイスしたいところもグッと我慢。子どもたちのやる気を煽っていくファシリテーター(促していく・促進していく、facilitateする人、facilitator)の役割に終始してほしいと思います。

ワークショップと道徳の授業

 こういった体験活動を中心とした道徳の授業は、毛嫌いされることもあるかもしれません。もしかしたら読み物道徳を推進する方々からは、「そんなのは道徳じゃない!」って邪道扱いされるかもしれません。
 でも、大丈夫です。この実践も道徳の授業になります。これは断言できます。
 もう何度も述べてきましたが、道徳の授業が道徳の授業として成立するためには、その授業において、@道徳的諸価値への理解に基づいて、A自己を見つめること、B多面的、多角的に物事を捉えること、Cこれからの生き方について考えること、という4つが含まれていることになります(学習指導要領 道徳科の目標)。
 この活動では「相互理解、寛容」という道徳的価値に焦点を当てていますし、最後のふりかえりにおいて、自分や他人のコミュニケーションのとり方について意味付けを行っています。そして最終的にどのようなコミュニケーションをこれからやっていくのが望ましいかについてまとめています。ワークショップ型の授業であっても、意味付けを意図的にファシリテーターが実施することで、道徳の授業に位置付けることができます。
 多様性を認めること、それがこれからの世界において必要とされることです。そうであるならば、道徳性を育てるという目的に合致していれば、その教育方法は多様であってしかるべきであり、眼の前の子どもたちの実態に合わせて教育方法を多様に考えていくことは教師として当然の行為です。読み物道徳にあまり関心を示さない(あるいはずっと座っていることが苦手な)子どもたちも、もしかしたらワークショップ型の道徳の授業には熱心に取り組むかもしれません。教科書の使用義務はありますので、教科書の内容を補うという意味でぜひ実践していただければと思います。
 
 「世界一わかりやすい道徳の授業づくり講座」から「問いでわかる道徳授業づくり実践講座」と2年間に渡りご覧いただきありがとうございました。この先、読者の方に直接お目にかかれることを楽しみにしております。お声がけくださればとても嬉しいです!

【参考文献】
荒木寿友(2016)「ワークショップの構造からみた新しい類型化の試み―連続した取り組みとしてワークショップを展開するために―」『立命館教職教育研究』特別号, pp.3−13
http://www.ritsumei.ac.jp/kyoshoku/kankobutu/file/kiyo_special/01.pdf

荒木 寿友あらき かずとも

1972年宮崎県生まれ,兵庫県育ち。2002年京都大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。専門は道徳教育、教育方法、ワークショップ、カリキュラム開発。現在,立命館大学大学院教職研究科教授。NPO法人EN Lab.代表理事。元セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン,アドバイザー。NPO法人cobon理事。国内外、大人子どもを問わず、さまざまなワークショップを展開する。
単著に『学校における対話とコミュニティの形成』(三省堂、2013年)、共著に『モラルの心理学』(北大路書房、2015年)、『考える道徳を創る「私たちの道徳」教材別ワークシート集』(明治図書、2015年)、『やさしく学ぶ道徳教育』(ミネルヴァ書房、2016年)、『戦後日本教育方法論史 下』(ミネルヴァ書房、2017年)など。

(構成:佐藤)

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