絶対成功の体育授業マネジメント
体育授業がうまくいけば、学級経営もうまくいく!学級力が一気に高まる体育指導スキルと授業ネタを伝授!
絶対成功の体育授業マネジメント(4)
体育から学級に広がるクラスの一体感
集団行動
大阪府箕面市立萱野小学校教諭垣内 幸太
2015/9/10 掲載
  • 体育授業マネジメント
  • 保健・体育

集団行動って管理的?

 9月、秋の運動会に向けて、各地の学校で指導が行われているのではないでしょうか。夏休み明けのこの時期、少しだらっとした雰囲気の子どもたちに、教師の怒声が響き渡るといったことも少なくない光景です。
 体育では、その教科の性質上、運動場や体育館といった広い場所で行うことが多くなります。また教師には、体育や運動会のみならず、全校集会や親子の集いなど、多くの人が集まる中で、集団を動かさなくてはならない場面も多々あります。もちろん子どもたちが、目的意識をもって自主的に行動できることが理想ですが、そう簡単にはいきません。
 昔から学校現場では、「集団行動」や「号令」といったことが用いられてきました。最近では、集団演技としても取り上げられ、脚光を浴びています。これらの効果として、次のようなことが考えられます。

・指示や説明の時間が短縮でき、効率よく学習を進めることができる。
・集団の中で他者の行動を感じ取り、自分の役割や責任をもって行動できるようになる。
・安全に行動することができる
・その一時ならず、ほかの場においても、その行動様式がつかえる力となる。
などなど……

 しかし、一方で「強制的ではないか」「軍隊のようだ……」など、否定的な意見も存在します。子どもたちが、その号令の意味や意図も分からず、ただ身体を反応させているだけでは、そのような批判がでるのももっともです。大切なのは、なぜそのような行動をするのか、なぜそのような号令をかけるのか、子どもたち自身が考え、理解することです。この行動が自分のためになること、集団にとっていい作用をもたらしているのだということを実感させたいものです。

 とは言っても、教師がその意図を説明しただけで、子どもたちが意欲的かつ自主的に行動してくれるのならば、なんの苦労もありません。そこで、まずはゲーム感覚で楽しさを中心に「集団行動」を行ってみてはどうでしょうか。今回は、学校現場で、その行動や号令が曖昧になっているものを取り上げ、いくつかの学習展開例を紹介します。

今月の授業集団行動で楽しく仲間を感じよう!

ならえ?前ならえ?

 正解は「前へならえ」です。「へ」は方向を指し示します。列をそろえたり、間隔を整えたりすることができます。これが理解できると「右へならえ」などの応用もできます。「に」だと下の写真のようになります。つまり方向ではなく、前の人同じように「ならえ」をすることになります(この考えは諸説あるようですが、私はこのように捉え、統一しています)。これをつかって、ゲーム化してみましょう。

写真1前へならえ!

例:前(?)ならえゲーム
 教師もしくは、リーダーが「前へならえ!」もしくは「前にならえ!」と号令をかけます。
「へ」の場合はいつも通り、しっかり整列をします。しかし「に」の場合は、前の人がやっていることを真似しなくてはなりません。「前へならえ!!」と言いつつおかしなポーズをしたりすると、つられて盛り上がります。

写真2前にならえ!

膝を高くあげなさい?

 入場行進などの練習をしていると、「膝を高くあげなさい!」と教師が指導しているのを聞くことがあります。しかし、実際の行進は、膝は上げず、むしろ膝を伸ばした状態で足を前に進めています。無理に膝を高く上げて歩くと、膝の高さも踏み出すタイミングもずれてしまい、美しく行進できません。行進で大事なのは、動きを前後左右の人と動きを合わせることです。合わせて動くことの楽しさや心地よさ、揃って歩くことの美しさを感じさせたいものです。

例:オリジナル行進づくり
 しかし、揃えることの楽しさや心地よさは、ただ行進していてもなかなか感じることはできません。そこで、グループになって自分たちで自由に行進を考えてみようという活動を行います。最初は、行進の方法なんて考えられないといっていた子どもたちも、仲間とアイデアを出し合ったり、互いのグループの発表を見合ったりしていると、発想も広がり、「自分たちも!」と活動が活発化します。

写真3腕の振り方を変えてみたよ!

準備体操?準備運動

 体育の授業の冒頭によく行われる準備運動も集団行動の一つと考えてもよいでしょう。準備体操、準備運動、明確に区別されていない場合もありますが、私は、この2つを次のように分けて使っています。

「準備体操」……ラジオ体操や最近では「ようかい体操」に代表されるように、曲などに合わせてひとくくりになったもので、全身や身体の一部をほぐしたり、強化したりといった役割があります。
「準備運動」……なにか主たる目的に向かって、準備をするための運動です。例えば、水泳の授業時、気温が低いのでしっかり身体を温める運動をいれる。跳び箱の授業時、よく手首を使うのでストレッチしておく。といった運動です。

例:オリジナル体操をつくろう
 そのように考えると、準備体操という体操はないということになりますが、あえてこの準備体操を子どもたちにつくらせます。「5−1体操」「○○小体操」「バスケうまくなる体操」などとネーミングまで行うと愛着も沸いてきます。体育係の活動の一つにしてもよいですね。「次の単元は、マット運動だから首をほぐせるものをいれといてね」「これから寒い時期になるから、しっかり身体全体が温まるような動きが入っているといいな」など教師から少し注文を出して、単元ごとにつくっていくのもよいですね。

写真4しっかり太ももの裏を伸ばそう!

 教師も、その行動や号令の意味や意図を理解して効果的に用いたいものです。もちろん闇雲に集合させたり、点呼したり、懲罰的に用いたりといったことは論外です。
 集団行動ができるということは、仲間の動きを感じることができるということです。みんなで学び合う時間を大切にしようとする学級です。体育で得たその力は、他の教科や学級での活動につながります。さぁ、新学期のスタート! 今一度、体育から学級の雰囲気をいい方向にもっていき、学級力を向上させていきましょう!

絶対成功のポイント

  • 集団行動の意義を理解させるべし!
  • 集団行動は楽しく行え!
  • 集団行動で高まる学級力!

垣内 幸太かきうち こうた

1974年、兵庫県生まれ。大阪教育大学教育学部卒業。
2009年、関西体育授業研究会設立。
「体育科の地位向上」を合言葉に、近隣の先生方とともに発足。授業力向上を目指し、月1回程度、定例会を開催。また、毎年7月に組体操研修会、11月に研究大会を開催。

(構成:木村)
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