学級づくりにいかす!体育授業
体育の授業がうまい先生はクラスづくりも上手。体育授業は技を磨くだけでなく、子ども同士の関係をつむぎよりよいクラスを築く機会です。
学級づくりにいかす!体育授業(8)
大縄は、文字通り「全員」で跳ぶ―声も動きも気持ちも1つに
千葉大学教育学部附属小学校松尾 英明
2017/1/5 掲載
  • 学級づくりにいかす!体育授業
  • 保健・体育
「大縄の学習」でのあるある…

大縄の学習。20mを越す大縄が回る様子は、見た目が派手なこともあり、子どもたちも「やろうやろう!」と意欲的です。さて、実際にやってみたところ、10回どころか1回すらもまともに跳べません。縄は不安定、跳び手もばらばら。「がんばって!」と言いつつ、自分自身もうまく回せない状態。何度やってもうまくいかず、時間だけが過ぎていきました。

授業でのこんな失敗ありませんか?
今回は、最初の回し方から誤解を生みやすい、大縄の指導のポイントをテーマにとりあげました。

大縄を回すコツその@「引いて張る」

 大縄は8の字跳び以上に「回し手9割」という面があるので、回し手の育成が最優先の課題です。ここがクリアできないと、楽しいとか練習しようとか以前の問題になってしまいます。
 大縄の回し方のコツの1つ目は「引いて張る」です。
 「引いて張る」とは、極端な言い方をすれば、「回さない」ことです。
 「回す」のではなく、びゅんびゅんごまの原理で、引っ張ると自然に回る感じです。
 もちろん、引いて張りながら少し手首で回すのですが、それも「気持ち」です。
 二重跳びをする時を考えると分かりやすいかもしれません。
  腕全体で縄を回すというより、手首を小さく回旋(または上下動)させます。
 縄は振りながら張ると、自然に回る性質があります。
 張っている状態で手元が小さく回転していれば、大きな回転になります。
 これがうまくできると、最小の労力で大きな弧を描いて回すことができます。
 慣れると、1000回ぐらい回しても「ちょっと疲れた」程度の労力になります。

 次の図を見てください。

回し手AとBはほぼ同じ強さで引き合うのがコツ
AとB 2人の距離が短い短い
AとB 2人の距離が長い長い
*縄の高さ = AB間の距離に関連

  AとB2人の距離が短いほど縄は高く回る分、強く縄を張る必要が出ます。
 結果、たるみやすくなるというデメリットが生じます。
 2人が離れているほど、縄を張りやすく回しやすい分、高さがなくなります。
 すると、跳びにくくなるというデメリットがあり、縄の回転も速くなります。
 高さは、真ん中で跳んでいる子どもの頭上50cm以上はほしいところです。
 縄の長さと技能に合わせて、2人のちょうど良い距離を探すのも練習の内です。

大縄を回すコツそのA「かまぼこ」

 大縄を回す上でのもう1つのコツは「かまぼこ」です。
 縄の理想的な形を「伝わるイメージ」で置き換えた言葉です。
 上にある時はきれいな円を描き、足の下を通す瞬間は水平にすばやく抜くイメージです。下の4枚の連続写真をごらんください。

写真1

 先の「びゅんびゅんごま」の原理で、縄が下におりて地面につく直前(写真3の瞬間)で、回し手両方が縄をひっぱると、縄が張力で自然に上がります。
 縄が上にある間(写真1から2までの間)も、互いに軽く引っ張りあって、きれいな円を保てます。
 縄がびよんびよんと揺れていたら、バランスが悪い証拠です。その場合、どちらかが強く引きすぎていて、それを更に強く引くという悪循環が起きています。
 2人が同じ力で引かないと、きれいな「かまぼこ」にならないのです。
 「商品になるぐらいきれいなかまぼこの形にしよう」などと言って、理想の形を目指していきます。

跳び方のコツ全員で跳ぶ

 さて、ここでいよいよ、跳び方です。
 大縄跳びの跳び方の基本技術10箇条を挙げます。

  1. 声をそろえる(低く地面を這うような声はNG。高く張りのある声で。)
  2. 列の幅をそろえる(小さく前ならえの幅。)
  3. 真っ直ぐ並ぶ(前の人の頭以外は見えない状態。回し手を見たがるので注意。)
  4. 一定のリズムで跳ぶ(1秒で1回。後半疲れると速くなりがちなので注意。)
  5. 腕を使って真上にジャンプ (1回旋1跳躍が基本。膝は曲げすぎない。自然落下。)
  6. 列を整える(詰まったら背中をたたき、広がったら肩をたたいて知らせる。)
  7. 姿勢を良くする(お尻が落ちていると後ろにだんだんずれる。腰が曲がっていると前にずれる。体幹を意識して真っ直ぐ。)
  8. 列の端には体力のある子(端にいくほど高く跳ぶ必要があるため。)
  9. 列の真ん中にリーダー(最初に手を挙げて列を整え、左右を見て指示を出す。)
  10. 全員で跳ぶ(最重要。跳んでいない人も役割を持つ。)

要は、「全員で揃って同じ場、同じリズムで跳び続ける」ということです。
下の図を見てください。

写真2

 リーダーは左右の位置のずれを見ながら、縄に正対した向きで跳びます。常に位置調節を気にしつつ、気持ちを鼓舞する声かけを全体にします。
 2グループに分けて行う場合やけがをしている子どもがいる場合でも、「見学」はしません。
 例えば回し手の後ろや縄の周りに、列のずれを見る役割を与えます。列がずれたら、声か身振り手振りで伝えたり、直接その場へ移動して伝えたりします。
  他にも「声出し係」「計数係」など、必ず役割を持てるようにします。

 技術的には色々あるのですが、一番大切なのは、10の「全員で跳ぶ」です。
 全員とは、回し手、中で跳ぶ人、それ以外の人全てが、必ず役割を持つことです。
 文字通り「クラス全員」です。
 大縄への取り組みをうまく機能させれば、学級づくりに直接役立ちます。

 大縄に関しては、細かいポイントや、レベルに応じた指導などコツがまだまだあるので、次回も引き続きお伝えしていきます。

今月の格言

 大縄は文字通り「全員」で跳ぶ。
 声も動きも気持ちも1つに。

松尾 英明まつお ひであき

1979年宮崎県生まれの神奈川県育ち。現在,千葉大学教育学部附属小学校で体育を専門に研究。教員14年目。千葉県の自然風土をはじめとする様々な魅力にひかれ,現在は千葉県の南房総に移り住む。「教育を,志事(しごと)にする」という言葉を信条に,自身が志を持って教育の仕事を行うと同時に,志を持った子どもを育てることを教育の基本方針としている。野口芳宏氏の「木更津技法研」で国語,道徳教育について学ぶ他,原田隆史氏の「東京教師塾」で目標設定や理想の学級づくりの手法についても学ぶ。

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