教育オピニオン
日本の教育界にあらゆる角度から斬り込む!様々な立場の執筆者による読み応えのある記事をお届けします。
3学期を楽しくスタート! 学級イベント仕込みの戦略&アイデア
新潟市立鏡淵小学校野澤 諭史
2019/1/1 掲載

 「1年のスタートなのに、1年のラストでもある。」
 「(世の中は新年で)スタートなのに、(学校は年度末で)ラスト」ということですね。
 1年間の学級指導も、いよいよまとめの時期に入ります。
 実を言うと、私は、この時期の学級活動の指導は、つい先日まで街を賑わせていた「年末商戦」の戦略と重なると思っています。

1 3学期だからこそできる! 学級イベント成功のための戦略

【戦略1 ターゲットを絞る】
 年末商戦に向けて、企業はまず「どんな客をターゲットにするか」を設定するそうです。ここで言う「ターゲット」とは、「指導のねらい=子どもにどんな力をつけるか」です。学級の子どもの実態から、成果と課題を整理しましょう。3学期は3ヶ月しかありません。ねらいは、ピンポイントで…。

【戦略2 ストーリー性のあるスケジュールで勝負する】
 はっきり言います。この時期に単発のイベントを繰り返しても効果はありません。
 活動への必然性が子どもの中にないからです。必然性がなければ主体性は生まれません。主体性がなければ、かかわりも学びの深まりや自身の成長の実感もありません。
 そうならないように、3ヶ月の中に「ストーリー」を設定します。
 単元的に指導計画を構想し、具体的なシナリオを練ります。そうすることで、大慌てで年度末に無理矢理お楽しみ会をする、みたいな事態を避けられます。

【戦略3 「自分向けギフト」がポイント】
 よくありがちな「年末」の学級活動に、「学級の課題を出させ、解決するための方法を話し合ったり、改善に向けた実践活動を仕組んだりする」タイプがあります。
 またはっきり言います。これも駄目です。
 学年が低ければ尚更、「自分が楽しいか、自分にメリットがあるか」に関心があります。つまり「自分へのご褒美(ギフト)」を求めるわけです。それが十分に満たされて初めて子どもは学級や他者に目を向けます。年度末だからこそ、「自分」です。

【戦略4 「年末商戦」から「初売り」へとスイッチを行う】
 年末商戦ですごい売り上げをあげるお店の店長さんに話を聞いたことがあります。
 「年末バーゲンをする際に、一番考えていることは何ですか?」
 店長さんは即答。「春物を一刻も早く店頭に並べることです!」
 販売のプロは視点が違います。「冬物が無くなれば、お店全体に春物を販売するための仕掛けをすることができる」ということです。実は、学級活動と全く同じです。活動の「終わり」が「次のスタート」になるものが理想です。「初売り」つまり新年度へのスイッチを入れるのは、実は、今の学級担任の役割です。

2 楽しくラストスパート! 学級イベントのアイデア

 では、低・中・高学年の学級活動に各戦略をどう落とし込んでいくか、具体例で見ていきましょう。

低学年(1年生) 黄色い帽子の卒業式
 黄色い帽子を被って入学した1年生。その成長度は、6学年を通じても随一です。そんな1年生に、「黄色い帽子の卒業式」はどうですか。

○戦略1 ターゲットを絞る
 1年生ですから、「イベントの準備と進行を自分たちでする力」とします。「準備」をさせたいので、「計画」は担任がします。ターゲットを絞ると、「どこまで教師が手を出して、どこを子どもにやらせるか」が見えます。相手は1年生。計画、準備、運営を全て任せるのは負担が大きすぎます。「友達と協力して、全力を出せば達成できる」くらいの、「つま先立ちのめあて」がポイント。

○戦略2 ストーリー性のあるスケジュールで勝負する
 ストーリーに沿った準備や活動をする時間をどこで確保するかも考えておきましょう。そうしないと、学級活動の時間ばかりが増えます。下が具体例、【】内が活動時間です。

1月頭…教師から「黄色い帽子の卒業式」を提案し、プログラムを示す。下は、内容の一例です。

@校歌斉唱【毎日朝の会で歌う】
A黄色い帽子の卒業証書授与【普段の授業で返事の練習】
B「できるようになったこと」発表【生活科で練習】
Cお楽しみタイム【朝学習で話合い】
D先生のお話【聞く姿勢を国語で確認】

・1月中旬…司会係、プログラム作成係、飾りつけ係等の役割分担をする。「できるようになったこと」発表の練習も始める。
・2月中旬…リハーサルを行い、「もっと良くなる点」を話し合う。子どもから「たくさんの人に見てもらいたい」という声が出れば保護者向け案内を教師(子どもでも可)が作成し、配付する。
・3月上旬…リハーサルを受け、再度練習。「黄色い帽子の卒業式」当日。

○戦略3 「自分向けギフト」がポイント
 1年生に「効く」のは、やはり保護者からのお手紙です。教師が学級便り等で保護者に事前依頼し、お手紙を書いてもらいます。当日は教師からの卒業証書(簡単な印刷で十分です)と一緒に子どもに手渡します。学習参観に来られない保護者も多い昨今です。保護者が来ない子に寂しい思いをさせない配慮も、教師の大切な仕事です。

○戦略4 「年末商戦」から「初売り」へとスイッチを行う
 「できるようになったこと」発表の最後に、「こんな2年生になる!」という一言メッセージを言わせましょう。内容よりも、何を言おうか、何ができるようになりたいかを考え、口に出すことが既に「スイッチ」です。

中学年(3年生) 1/2卒業式
 4年生の1/2成人式は、かなりメジャーな活動です。しかし、小学校6年間の半分は3年間です。そこから、3年生のための「1/2卒業式」を考えました。

○戦略1 ターゲットを絞る
 「自分たちの力で会を計画、準備、運営する力」をねらいます。教師は、場所・日程・会の時間・準備期間など現実的な条件を示します。その範囲で「自分ができる最高のもの」を考えさせることが真のねらいです。極力、条件は変えません。自分たちの計画を貫くために条件を変えてしまうようでは、全校を動かす上学年にはなれないからです。

○戦略2 ストーリー性のあるスケジュールで勝負する
 1年生と違うのは、1月に学級会などを実施して、全体計画を練らせる必要があることです。私の学級では、こんな計画でした。

@校歌斉唱【毎日朝の会で歌う】
A校長先生から卒業証書授与【子どもが校長先生と交渉・依頼】
Bオリジナル「呼びかけ」発表【朝学習で計画・練習】
Cおうちの人とお楽しみタイム【朝学習で話合い】
D学級合奏披露【音楽の時間に練習】

○戦略3 「自分向けギフト」がポイント
 この会の「自分向けギフト」は、「校長先生から証書をもらうこと」と「オリジナルよびかけをつくること」でした。卒業生しかできないことを3年生の自分ができるという経験が、何よりの「ご褒美」になりました。

○戦略4 「年末商戦」から「初売り」へとスイッチを行う
 式の後、子どもに「保護者の方への手紙」を書かせました。内容は、「手紙のお礼」、そして、「こんな自分になる!」という宣誓の言葉です。全員に共通して書かせ、内容も(保護者の目に触れるので)教師がチェックします。

高学年(5年生)学校のバトン引継ぎ式
 子どもを変えるのは、やはり子ども。これは、学校のリーダーとしてのバトンを、6年生から5年生へと引き継ぐ式です。

○戦略1 ターゲットを絞る
 ねらいは、「自分たちの力で会を計画、準備、運営し、6年生にリーダーとして認めてもらい、最高学年への意欲を高める」ことです。低・中学年より心情面へのねらいに重点が置かれます。話合いの技術、実践の効率だけでは全校はリードできません。自覚と覚悟、強い気持ちが人を動かす、そのことを実感させたいのです。

○戦略2 ストーリー性のあるスケジュールで勝負する
 これは、2月中に設定します。5年生主体の活動に6年生に来てもらうからには、忙しくなる3月は避けましょう。下は、内容の一例です。

@歓迎の言葉      
A「こんな学校にします」アイデア発表 
B(可能なら)6年生からアドバイス     
Cリーダーバトン引継ぎ
Dお礼の言葉

 基本的に、すべて子どもにやらせますが、あまりボリュームのある活動にはしません。多くの学校で、5年生が計画する「6年生を送る会」があり、その準備に忙しくなるからです。

○戦略3・4「自分向けギフト」がポイント+「年末商戦」から「初売り」へとスイッチ
 大切なのは、具体的な役割と心構えを引き継ぐこと。それは、この式だけではできません。可能なら全校に働きかけ、この日を境に児童会(委員会)活動を5年生中心にスライドします。6年生は見守り、1か月かけて5年生が仕事を覚えるようにアドバイスをします。このシステムづくりこそが、子どもへの「6年生の役割が事前にわかる」という安心感=ギフトになります。それと同時に「いよいよ自分が最高学年として頑張らなければならないんだ」と意識づけるスイッチになるわけです。

 さあ、子どもたちとの再会はすぐそこです。お餅を食べながら、お屠蘇を飲みながら、ちょっとのんびり「戦略」を練ってみてください! 何よりも、子どもたちのために…。

野澤 諭史のざわ さとし

 新潟市立鏡淵小学校教諭。雑誌『授業力&学級経営力』等で実践の執筆多数。

コメントの受付は終了しました。