大野桂の算数熱中授業づくり
わかった! 楽しい! そんな子どもの声が教室に響く算数の授業をつくりたい。 発問、板書から子どもの意見の取り上げ方まで、学級全員を熱中させる工夫やアイデアを大公開!!
大野桂の算数熱中授業づくり(3)
もっといい方法があるよ!(1年「3口のたし算・ひき算」)
子どもの意欲を喚起する【教材】と、考え方のよさの【価値付け】
筑波大学附属小学校教諭大野 桂
2013/8/25 掲載

熱中授業づくりのポイント

  1. ゲーム性のある教材で子どもの意欲を喚起する
  2. 子どもの考え方のよさを価値付ける
  3. 考え方のよさを味わわせる

1 ゲーム性のある教材で子どもの意欲を喚起する

 「縦・横・斜めの和が15になる魔方陣の隠されたマス目の数を当てる」というゲーム性のある教材で、子どもの意欲を喚起します。

(魔方陣のマス目の数は付箋で隠した状態で黒板に提示します)

8 1 6
3 5 7
4 9 2

9つのマス目に隠れている数を当ててもらいます。

ヒント1
マス目には1から9の数が隠れています。
ヒント2
(付箋をはがし)真ん中の数は5です。
ヒント3
縦・横・斜めの3つの数をたし合わせると、どこも必ず15になります。
 それでは、隠れている数を当ててみよう。
 えっ、そんなのわかるわけないよ!
 では、もう1つ数を教えます。5の上は1です。このヒントで、どこかわかるところがありますか?
8 1 6
3 5 7
4 9 2
 うん、これなら5の下の数はわかる!

2 子どもの考え方のよさを価値付ける

 ここから、「真ん中が5だから、たして15になるには、あと10ができればよい」という気付きを引き出し、子どもとのやりとりを通して、「10をつくる」という考え方のよさを価値付けます。これが、繰り上がりのあるたし算の素地的な知識となります。

 どうやったら5の下のマス目の数は求められるかな?
 1+5=6だから、15になるために、あといくつかを考えればいい。
 もっといい方法があるよ! 真ん中が5で、たして15になるということは、15は10と5だから、両端をたしたら10になるはず。
 そうか、だったら真ん中の5の上が1だから、下は9になるはず。
 10+5=15となるように考えたんだね。それはわかりやすい方法だ!

(付箋を子どもにはがさせ、隠れている数が9であることを確認する)

 やったぁ、当たった! やっぱり9だ。
 いまやったことを式にして計算するとどうなりますか?
 1+5+9=15
 先に10をつくり、10と5で15にしたんだね。これは簡単でいいね!

3 考え方のよさを味わわせる

 既習の「いくつといくつ」に基づいて10をつくり、他の箇所も「10+5=15」と簡単に計算できることを確認し、「10をつくる」という考え方のよさを味わわせます。

 そうすると、真ん中の5をはさんだ端同士をたすと、どこも10になるはずだよね。
 なるほど。10になる組み合わせってどんなのがあったっけ?
 2と8。
 3と7。
 4と6。
 よし、じゃあ、いくつかはがしてみるよ。みんなの言ってることが正しいなら、反対側の数を当てることができるはずだね。

(2、3、6の部分の付箋をはがす)

8 1 6
3 5 7
4 9 2
 2と8で10だから、5の左上は8のはず。
 3と7で10だから、5の右は7のはず。
 4と6で10だから、5の左下は4のはず。
 じゃあ、全部はがしてみるよ。
 やったぁ、当たった!

 よく当てることができましたね。計算の仕方も確認しておこう。

 8+5+2=15

 3+5+7=15

 6+5+4=15

 10をつくると3つの数の計算も簡単だね。

 次時には、繰り上がりのあるたし算の導入として、「まわりの部分も、たすと15になるか確かめてみよう」と、真ん中の数5とかかわらない、外周の4辺部分の和について考えます。

大野 桂おおの けい

1976年東京都生まれ。東京学芸大学卒業。私立高等学校、東京都公立中学校、東京学芸大学附属世田谷小学校を経て、2010年より筑波大学附属小学校教諭。
日本数学教育学会編集部幹事、教育出版教科書『小学算数』編集委員、全国算数授業研究会常任理事、使える授業ベーシック研究会常任理事、『算数授業研究』編集委員。
筑波大学附属小学校算数部ブログ

(構成:矢口)
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