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新指導要領を学校・教室の中でどう活かす? 小学校全国国語教育研究大会
教育zine編集部
2011/8/5 掲載
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  • 学習指導要領・教育課程

 去る7月30日、横浜で「第3回小学校全国国語教育研究大会」が開催されました。全国各地から350名を超える先生方が集結し、会場は2階席まであふれる盛況ぶり。今大会の研究主題は、「国語科の教育課程及び新教科書の構想と実践〜どう構想し実践してきたか、また、これからどう実践するか〜」。大きなテーマだけに、講演・実践発表・ワークアウト・パネルディスカッションそれぞれに、個々の先生方の専門性・お立場が色濃く出た、多様なご発表となりました。現場で使える&現場で活きるのでは、と感じた例をいくつかレポートいたします!

●国語科における「言語活動の充実」とは

 新しい指導要領では、盛んに“言語活動、言語活動”と言われているけれど、では国語科でどう取り組むのかといわれるとよく分からない、という方もいらっしゃるのでは? 水戸部修治先生(文部科学省教科調査官)は、以下の4つの観点に絞ってご紹介くださいました。

  1. 本単元で付けたい力を見極める
  2. 付けたい力にぴったりな言語活動を選ぶ
     →言語活動の種類や特徴の分析が重要な教材研究
  3. 単元を貫いて位置付ける
     →見通しをもち、課題を解決していく学習の過程を重視
  4. 「大好き」「はてな?」「伝えたい!」を生かす
     →実生活に生きる、主体的な思考・判断を伴う学びを

 付けたい力を明確にし取り組むというのは、わかっていてもなかなか難しいもの。達成するためには、指導事項と言語活動をマトリックス化したものを用いることが有効であるとのことでした。どの指導事項を当該単元で押さえるのかということを明確化するマトリックス型計画表は、「国語科だからこそ成立する」というのも言われてみればなるほどと納得。国語科ならではの特長を生かして、楽しみながら年間計画を構想するのがよいのかもしれません。
 楽しみながら、ということに関しては、パネルディスカッションでの川井文代先生(香川県教育センター主任指導主事)の「教科年間学習指導計画」も、同様のことを念頭におかれていると感じました。新しい指導要領、改訂直後の過渡期を、自分の目と手でいろいろと確かめながら&楽しみながら、よりよい方法を探っていくひとつのヒントとされてみてはいかがでしょうか?

●新教育課程の構想と具体化

 ワークアウトでは、実際に教育課程を構想することを試みました。プロジェクトとプログラムというレベルを設定し、プロジェクト=育てたい子ども像(例:日常的に本を読む子どもを育てたい)、プログラム=実際の取り組み(例:毎週図書館に連れて行く・ブックトークをする、など)、を各グループで作成するというものです。
 実際に学校で取り入れる際には、学校教育目標を踏まえたうえで、プロジェクトを設定しプログラムを作成するということを、個人単位ではなく学年単位・学校単位で行うことで、理念の共有にもつながるかと思います。

 なお、文科省作成の「言語活動の充実に関する指導事例集」(【小学校版】【中学校版】)については、参加されている先生方の間でも認知に差があるというのが現状でした。プレスリリースなどはされていますが、周知の方法にも改善の余地があるのでは…と感じます。せっかくの事例集、もっと活用してもらえるような工夫も必要なのかもしれません。

 テーマの括りが広かったこともあり、もう少し聞いていたい…という充実したご発表ばかりでした。そんな声に応えてか、来年度第4回大会は、実施日を二日間に増やしての開催です(平成24年8月4日・5日)。初めての関西での大会になるので、これまで会場が遠方で参加が難しかった方も、ぜひ参加してみてはいかがでしょう。グループワークなどでは、名刺交換をされる姿も数多く見られます。全国に研究仲間が広がるきっかけになるかもしれません。

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