今こそ身につけたい!国語科指導技術・ニューノーマル
理論×実践に裏打ちされた指導法で教育界を牽引する土居先生が贈る、国語科授業における“新”指導技術!
国語科指導技術・ニューノーマル(4)
書くことの指導技術
書く対象を絞らせる/子どもが持っている言葉同士を結び付けさせ、まとまりにさせる
神奈川県川崎市立はるひ野小学校土居 正博
2021/9/5 掲載

文章を書く力を伸ばすには?

これまでの国語授業

全員に「うまい文章」を書かせようとする

 書くことの指導は非常に難しいものです。そもそも文章を書く力というのは、一朝一夕で伸びるものではなく、思考力や語彙力などが必要とされる総合的な能力です。
 かの有名な大村はま先生もご著書の中で「みんなが文章のうまい子にはならない」という旨のご発言をされています。そう考えると、大村先生でも無理なのですから、私などには到底無理!ということになります。
 ……というところでこの原稿を終わってしまっては元も子もないので、全員がうまい文章を書けるように指導するのは無理、ということを念頭に置いたうえで、私なりに子ども達の書く力を高めていく方法をご紹介したいと思います。

 全員がうまい文章を書くようにはできなくとも、書く量を増やすことはできます。
 ここが突破口になります。
 書く量が増えれば、子ども達は、「あれ、自分は書くのが苦手ではないなぁ」と苦手意識がなくなるのです。
 ですから、まずは「質より量」で書く量を増やしていくことを意識していきましょう。

 そのためには、「書く対象を絞らせる」工夫が必要です。
 『書く量を増やすのに、なぜ対象を絞るの?』とお思いになるかもしれませんが、短い対象について多く書ければ、全体的にも多く書けるようになるのです。
 「一日の出来事」について少ししか書けなかった子が、「昼ごはんについて」で同じ量を書けるようになれば、「一日」全体で見たら数倍書けるようになっています。
 

国語科指導技術・ニューノーマル

書く対象を絞らせる

 「書く対象を絞らせる」ためには、例えば日記でしたら、「題名がつけられるものを書こう」と声をかけます。書く対象が絞られたものは題名がつけられますが、対象が絞られていないものは題名がつけられないものです。
 ことあるごとに「題名がつけられるものを書こう」と声をかけつつ、題名がつけられる日記と題名がつけられない日記を紹介しながら、「今のは題名をつけられる?」などと子どもに考えさせていくと効果的です。(題名がつけられない例は教師が作成します。)
 また、行事作文等でしたら、「一つの競技のことを書こう」や「心に残っている3分間のことを書こう」と声をかけると、対象が絞れた作文を書けるようになっていきます。

参考文献:大村はま(1994)『新編 教室をいきいきと<1>』ちくま学芸文庫

ここがポイント!

  • 題名がつけられる文章が書けるようになれば、比例して量も増えていく。

表現語彙を増やすには?

 子ども達の書いた文章を読んでいて『面白くないなぁ』と思うものは意外と共通していると思います。その一つが「楽しかったです。」を連発する作文です。ほかにも「おいしかったです。」とか「きれいでした。」を連発するものもあります。

 これらの作文が面白く感じないのは、ひとえに語彙の少なさです。
 語彙には理解語彙と表現語彙があるとされていますが、これらの言葉を連発するのは、表現語彙が少ないことによります。
 ここでは、子ども達の表現語彙を増やしていく指導技術を紹介します。

 まず、単純に「楽しい」「うれしい」「きれい」「おいしい」などを使うことを禁止する方法があります。子どもは最初は「えー!」と言うのですが、やり始めたら楽しみながら文章を書きます。豊かな表現を使えている子の作文は積極的に他の子に紹介するようにすると、子どもの意欲に拍車がかかります。

これまでの国語授業

「楽しい」「うれしい」「きれい」「おいしい」を禁止する

 これらの言葉を禁じる指導は、多くの先生がされていらっしゃるかもしれません。子どもに国語力をつけるためには、さらにもう一歩踏み込んで、禁止すると同時に、語彙自体を増やしていく取り組みも行いましょう。そもそも語彙とは「ある観点から見た言葉のまとまり」のことです。まとまっていることが重要なのです。まとまっているとは、言葉と言葉とが結び付いていることです。つまり、子どもが持っている言葉同士を結び付けていくことが大切です。
 言葉同士を結び付けていくうえで、ポイントは類義語や対義語を集めさせていくことです。そうすると、似ている言葉同士、反対の言葉同士で結び付き、子どもの語彙が豊かになっていきます。

国語科指導技術・ニューノーマル

子どもが持っている言葉同士を結び付けさせ、まとまりにさせる

 子どもの言葉同士を結び付けていく学習活動を一つ紹介しましょう。「言葉ネット」と私は呼んでいます。低学年からできる活動です。ぜひやってみてください。子どもの作文から「楽しかった」が消えますよ。

言葉ネット

手順1 お題の言葉を教師が提示する。「楽しい」「うれしい」「おいしい」「きれい」「多い」など作文で連発されるものが良い。
手順2 子どもはノートのページの真ん中にお題の言葉を書く。
手順3 反対の意味の言葉は双方向矢印(⇔)で、似た意味の言葉は線で結びながら言葉の網をどんどん広げていく。
手順4 5分ほど経ったらクラス全体で共有し、自分が書けなかった言葉はノートに書く。

写真

ここがポイント!

  • 単純な感想言葉を禁じて、語彙のまとまりを意識させる。

土居 正博どい まさひろ

1988年,東京都八王子市生まれ。創価大学教職大学院修了。川崎市公立小学校に勤務。国語教育探究の会会員(東京支部)。全国大学国語教育学会会員。国語科学習デザイン学会会員。全国国語授業研究会監事。教育サークル「深澤道場」所属。教育サークルKYOSO’s代表。『教師のチカラ』(日本標準)編集委員。

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