きょういくじん会議
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広がる就職支援サービス―逆求人
kyoikujin
2011/2/23 掲載

 学生の就職難は依然、厳しい状況にある。
 今年12月1日時点での学生の内定率(就職希望者に占める内定取得者の割合)は68.8%(厚生労働省・文部科学省)。内定率は近年、リーマンショックの起きた2008年をピークに、毎年下降の一途を辿っている。

 先のまったく見えない就職難の時代、需要を見出した企業はさまざまな就職支援サービスを提供している。その中でも今回は、従来のサービスとは少し異なる、「逆求人」というサービスに焦点を当てた。

 2月。昨年夏頃からにわかに始まった就職活動もいよいよ本格化している。そんな中、都内をはじめ多くの地域で、「逆求人」と謳ったイベントが開催されていた。
 「ゴウセツ」とも呼ばれる企業の合同説明会では、各企業が、学生に向け一方的に事業内容や待遇などの説明を行う。一方このイベントでは、学生が発信する側となる。イベントの詳細は次の通りだ。
 学生が、イベントに参加しているいくつかの企業に向けて自己PRを行う。魅力的だと感じられた学生には企業からのスカウトがあり、そのまま面談となる。場合によってはそのまま内定を得ることも出来るという。従来の合同説明会とは全く趣旨が異なることがお分かりいただけただろうか。

 就職活動といえば、学生が就職サイトもしくは企業のホームページから企業の説明会に応募し、そこから選考に進んでいくという流れが一般的だった。
 しかしこの「逆求人」はプロセスが大きく違っている。学生が、企業を選ぶという段階が無いのである。

 就職活動を始めるにあたり、多くの学生がまずすることは自己分析と業界分析であろう。自分にはどんな長所があるのか。それを活かせる業界は、どの業界なのか…。いくら内定が欲しいからといって、全ての企業の選考を受けることなど到底出来ない。興味のある会社を絞って選考に挑むのだ。
 逆求人にはその段階が無い。
 「IT関連特集」「ベンチャー企業特集」など、一定のテーマを持たせたイベントが開催されることもあるが、業界や企業規模が絞られても、個々の企業の事業内容や社風まで絞ることは出来ない。学生は、業界や職種を越えたさまざまな企業との面接へと進んでいくことになるのだ。

 学生が行きたい企業とは、「やりたいことのできる会社」なのか、それとも「自分を欲してくれる会社」なのだろうか。
 いずれにせよ明白なのは、自分の意思を明確に持たずして就職活動ないしその先の就労を有意義にさせることは不可能だと言うことだ。参加した企業からは、「志の高い学生が参加している」「集まる学生には行動力がある」といった声も聞かれる。このような学生が求められているのは、いつの時代でも変わらない。逆に、どんなサービスを利用しても、芯の無い学生は内定までたどり着くことは出来ないだろう。その点では、逆求人でも一般的な採用でも同じである。

 就職難の時代に次々と登場してくる支援サービス。就職活動の仕方は多種多様で、正解があるわけでは無い。また、内定がゴールではないということは言うまでも無い。学生には自分の意思をしっかり持ち、後悔することのない就職活動をして欲しいと望むばかりである。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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