きょういくじん会議
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クマにご注意! 頻出理由から考える環境と生態系
kyoikujin
2010/11/4 掲載
クマは眠れない

 この1か月ほど、毎日のように流れる「クマ出没」のニュース。先月の14日付18日付21日付の時事通信社の記事によると、中学校や小学校にも姿を見せたため休校措置が取られるなど、学校現場にも影響が出ています。

頻出要因は二つ

 今年同様、2004年の秋にクマの出没が相次いだ際に、環境省が調査した報告書によれば、「餌となるブナの実が不作だった上、人里近くの雑木林など里地里山が手入れされず、クマの生息に適した環境になりつつある」ことが頻出の原因であるとのことでした。ここ最近の出没要因も、当時の状況によく似ていると考えられます。

猛暑の影響・緩衝地帯の減少

 まず、今年の記録的な猛暑により、植物の生育が妨げられ、食糧が不足していると言われています。クマは冬眠に向けて、ドングリ等を大量に摂取し、脂肪分を蓄えることが必要です。しかし、猛暑による不作の影響で、山間部で十分な食料を見つけられないクマが、やむを得ず人里にそれを求めるという状況になっています。
 そしてもう一つは手入れの問題。かつては、クマの生息区域である森林と、人間の生活区域である民家や畑のあいだには、枝をはらい雑草の手入れをした緩衝地帯と言われる区域がありました。ここから先は人間の住む場所ですよ、と野生動物に注意を促す役目のあったこの区域は、林業・農業従事者の減少や住人の高齢化などの影響から、手入れが行き届かなくなり、森林にのみこまれる形で消滅していっていると言われています。

クマ対策は?

 こうした状況から、特にこの秋はクマによる人的被害が目立っています。そんなクマ対策の筆頭にあがるものと言えばクマよけ鈴ですが、10月29日の神戸新聞の記事によれば、9、10月の2か月間で前年比5〜8倍を売り上げ、現在は品切れ状態だとか。本来、クマは臆病な動物。ばったり鉢合わせ、ということになる前に、人間の存在を知らせることが重要です。
 また、根本的な餌不足という問題を解消するため、実践自然保護団体「日本熊森協会」ではドングリを集めて山奥に運ぶという活動をしており、全国からドングリが集まっているそうです。もちろん、抜本的な対策としての餌の実る木の植林は必要ですが、このように緊急避難的に食料を届けることによってクマを守り、ひいては人間を守る取り組みが行われています。

共存・共栄へ

 クマは、子どもたちにとって非常に身近なキャラクターでもあります。クマのプーさん、リラックマ、テディベア、ケアベア、ダッフィー…その極端に愛らしい姿は本来の野生のクマにはないものかもしれませんが、数多のキャラクター化は、古くから人間とつかず離れず共存してきた証ともいえないでしょうか。
 クマのみならず、野生動物たちといかにして共存していくのか。緩衝地帯の手入れとなるとちょっと難しいですが、ドングリを拾って送ることならば、できるかもしれないですね。

※日本熊森協会によると、11月15日が狩猟解禁日のため、ドングリ運びは11月8日まで。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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