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女性は数学が苦手? 植え付けられてしまった固定観念
kyoikujin
2010/10/12 掲載
数学は嫌いです!―苦手な人のためのお気楽数学 (講談社文庫)

「私は女の子だから数学が苦手」。筆者が中学・高校生の頃よく耳にした言葉です。今考えてみると全くおかしな話だとは思いませんか。確かに、理系といえば男子生徒が多く、女子生徒は少数派、というイメージがありますが…。女性は数学が苦手、これは事実なのでしょうか。

男女で異なる脳の作り

 男女の脳の作りは根本的に違っているという事については、比較的良く知られています。脳には右脳と左脳をつないでいる脳梁(りょう)というものが存在し、女性は、この脳梁が男性よりも20%太くできているのです。

 この違いによって、女性は一度に色々な物事を考えることが得意で、言語力・直観力に優れていると言われています。これに対し、男性は一つのことに集中することが得意で、右脳・左脳の働きが特化する場合が多く、論理的思考や空間認識に優れていると言われています。(※)

原因はどこに? 教育のあるべき姿とは

 確かに論理的思考力は数学の問題を解く上で重要なスキルで、むしろこの力を伸ばすことが数学教育のひとつの目的です。また空間認識能力が高ければ、平面図形や空間図形の問題を解く事が得意かもしれません。

 しかし果たして、この事実が「女性は数学が苦手」という結論に結びつくのでしょうか。数学が苦手だという子どもたちが増え始める中学・高校数学では、公式を覚えたり、問題をある程度パターン化しそれに当てはめれば解ける問題が殆どです。与えられた文章から必要な条件を選び抜き、自分の知りうる公式で解に結びつける、この過程は一種の言語能力を活かしているとも言えます。

実は、女性は数学が苦手、という事に根拠がないことについては、2008年にアメリカで論文が発表されています。

 行われた実験の概要は次の通り。被験者を2つのグループに分け、一方には「男女では数学の能力に差がある」と、もう一方には「能力に差は無い」と説明し、その後試験を行います。すると、前者のグループでは、女性の成績が男性より劣りましたが、後者のグループでは男女の成績に差は見られなかったのです。女性の「数学が出来ない」という思い込みが試験の結果に影響を及ぼしてしまったということになります。

 数学が苦手だと言う女子生徒―教育者が「女性は数学が苦手だ」という認識があるからこそ、子どもたちに事実無根の思い込みをさせてしまっているのかも知れません。

 しかし、思い込みで苦手が生まれるのならば、逆に思い込みで苦手を得意にさせる事も可能なのではないでしょうか。教育の原点は子どもたちを信じる事から。間違った固定観念を払拭して、子どもたちの能力を遺憾なく発揮させる教育を目指したいものです。

(※)この説にも否定的な意見があり、完全には証明されていないというのが実態です。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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