著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
モノ教材を集めて、生徒が食いつく社会科授業に!
奈良県平群町立平群中学校森口 洋一
2017/2/7 掲載

森口 洋一もりぐち ひろかず

1961年 大阪市住吉区生まれ。立命館大学経営学部卒,奈良教育大学大学院教育学研究科教科教育専攻社会科教育分野修士課程修了。奈良県平群町立平群中学校教諭。

―本書は、地理・歴史・公民・さらには社会科授業づくり全般についてのネタがどっさり117も掲載されています。大人でも「そうなのか!」と唸ってしまうネタばかりで、とても楽しんで読ませていただきました。まずは、本書のおすすめの読み方を教えてください。

 「明日の授業のネタがない」とお困りの時に、パラパラとめくって下さい。このままネタを丸ごと使うのもOK。導入、展開、まとめのどこかで使う手もありです。附属系の学校の研究授業を見学しても、「これはうちの学校では無理」と感じるようなことがありますが、私自身がごく普通の公立中学校で実践してきたネタを集めましたので、すぐ使えます。使いやすいネタに置き換えるのもGOODです。

―なるほど。本書は一つのネタも様々な角度から記述されているので、その日の授業に合わせた使い方ができそうですね!では、117のネタの中から、読者の方々にまずは試してみてほしいおすすめのネタを教えていただけますか?

 117のネタ一つ一つが私の「分身」で、順位は付けにくいですが、地理1「ユダヤ人はなぜチーズバーガーを食べてはいけないのか」公民22「ユダヤ人ビジネス 〜映画・テレビそしてICT〜」は特におすすめです。中学校社会科のユダヤ人(教)に関する記述は、「キリスト教の源流としてのユダヤ教」と近現代の「ヒトラーのユダヤ人迫害」に偏り、もっとトータルに捉える必要があるからです。

―これだけたくさんのネタを集めて実践するのは、なかなか大変なことなのではないかと思います。本書のネタのように生徒が興味をもつ、教室が盛り上がるネタを集めるためのポイントやコツのようなものはありますか?

 一つにはモノにこだわることです。生徒はモノが大好きです。この本でも「マトリョーシカ」「地券」「征露丸」「オーストラリア紙幣」などを活用したネタを収録しました。市販のモノ教材集で済ますのではなく、教師が自分の足で集めることが大切です。思い入れが違いますし、生徒も必ず「先生どうやって手に入れたの?」と尋ねてきます。「これ使えないかな?」と普段からアンテナを張りましょう。

―読者の方々の中には、この春から初めて社会科の授業を行う若手の先生もいらっしゃると思います。先生が若手の時代に授業で最もご苦労されたこと、またそれをどうやって克服していったか、教えていただけますか?

 私立大経営学部卒で、大学受験では政経を選択。「公民」はできても「歴史」がさっぱりでしたので、高校の日本史・世界史教科書や参考書を復習しました。少し授業ができるようになると、実践家といわれる人の著作に学ぶようになり、自分でもネタづくりをするようになりました。ネタには裏付けが必要ですから、基礎ができていないと滑ります。最初はそうでした。基礎が大切です。

―ありがとうございます。最後に、読者の先生方へメッセージをお願いいたします!

 こんな平凡な教師でも、長い間教えていると、いろいろなネタが生まれてきました。といっても、「しまった。あそこはこうすればよかった」と、毎日が反省の日々です。ネットは便利ですが、授業づくりはアナログ的な職人芸の世界です。他人の実践に学びながらも、「自分の授業」を目指してほしいと思います。この本がそのためのヒントになれば、著者としてはこの上ない幸せです。

(構成:茅野)

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