著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
すべての内容項目で、問題解決的な道徳授業はできる!
岐阜大学大学院教育学研究科准教授柳沼 良太
2016/9/7 掲載

柳沼 良太やぎぬま りょうた

早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了、博士(文学)。早稲田大学文学部助手、山形短期大学専任講師を経て、現在、岐阜大学大学院教育学研究科准教授。中央教育審議会道徳教育専門部会委員。

―本書は、1月に発刊された『問題解決的な学習で創る道徳授業 超入門』の続編的な位置づけになる書籍です。今回の書籍を刊行された経緯を教えてください。

 前著『問題解決的な学習で創る道徳授業 超入門』では、理論や歴史的経緯や方法論を詳しく説明しました。ただ、実際の道徳授業をフルでどのように行うかは十分にお伝えできませんでした。そこで、本書では小学校版と中学校版のそれぞれで、実力派の先生方から指導案の実例を豊富にご提示いただきました。また、すべての内容項目に対応した問題解決的な道徳授業を明示することで、年間を通じて全学年で全般的に実践できるように配慮しました。

―『問題解決的な学習で創る道徳授業 超入門』や、本書の1章でも詳しく解説をしていただいておりますが、あらためて、道徳授業における問題解決的な学習のポイントを教えてください。

 ポイントは、子ども自身が道徳上の問題を主体的・能動的・協働的に考え、判断し、議論することです。そこでは、子どもたちが自ら道徳上の問題や課題を発見し、納得できる最善解を協働して探究する過程で、道徳的諸価値と関連づけながら自己の生き方や人間としての生き方について考えを深めていきます。こうしたアクティブ・ラーニング型の授業を通して、日常生活でも生きて働く資質・能力としての道徳性を育むことができるのです。

―道徳授業で問題解決的な学習を行うにあたり、内容項目の「生命の尊さ」や「畏敬の念」などは、授業するのが難しいという声もあるようです。本書は、すべての内容項目の実践が網羅されていますので、これらの実践例も紹介されていますが、どのような内容項目でも、問題解決的な学習はできるのでしょうか。

 どの内容項目でも、そこに道徳的問題が含まれていれば、問題解決的な学習はできます。例えば、「生命の尊さ」なら生命の軽重や臓器提供等の問題を考えることで、生きることの意義を再吟味できます。また、「畏敬の念」でも、人の力を超えた崇高なものや大いなる自然とどう向き合うかを考えることで、より深遠で広大な人生観を導き出せます。異なる多様な存在との関係を真摯に考え議論することで、子どもはより豊穣な成長を遂げるのです。

―従来よく行われていた授業から、問題解決的な学習の道徳授業に変えることで、子どもたちにどのような変化や学びがあるとお考えですか?

 まず、子どもたちは主体的・能動的に道徳上の問題を見出し、それを解決するようになります。教師から指示されて受け身で答えるのではなく、子どもが興味・関心のあるテーマを自発的に探究し話し合うようになります。次に、子どもたちは道徳授業で学び考え判断したことを日常生活や教科等にも活用・応用するようになります。こうして子どもたちは、道徳授業が楽しくなるとともに、人生のためにもなることを実感するようになります。

―最後に「これから問題解決的な学習の道徳授業をたくさん行っていこう!」と本書を手に取られた読者の方にメッセージをお願いします。

 問題解決的な学習で創る道徳授業は、本書に掲載された指導案からも分かるように、多種多様なバージョンがあります。こうした道徳授業は、創意工夫によっていくらでも活発で有意義な展開になりえます。たくさんの実践をすることで、教師のアドリブ力やファシリテート力も高まり、問題解決的な学習の醍醐味が味わえます。ぜひ本書を参考にして、子どもたちと一緒に楽しみながら「考え、議論する道徳」を創り上げていただきたいです。

(構成:茅野)
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