著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
アドラー心理学を生かすと、子どもが力を合わせる集団に変わる!
山梨県公立小学校教諭佐藤 丈
2016/6/24 掲載

佐藤 丈さとう たけし

1964年東京都小金井市生まれ(51歳)。山梨大学教育学部で教育心理学を専攻し,卒業後心理学専攻科に残り「共感」をテーマに研究。1989年より山梨県の公立小学校勤務。2003年山梨県総合教育センターに内地留学し「どの子どもにも居場所のある学級」をテーマに研究し、アドラー心理学をヒューマン・ギルドにて学ぶ。2004年より小学校に戻り、クラス会議、アドラー心理学に基づく学級経営を実践。2011年より6年間、同教育センターにて研修主事。相談、研修、研究の業務にあたる。2016年より山梨県公立小学校教諭として現職。

―本書では、アドラー心理学を生かした学級づくりの考え方から、具体的な日々の指導のポイントまでが網羅されています。まず初めに、アドラー心理学を生かすと、学級はどのように変わっていくのか教えてください。

 争う集団から力を合わせる集団に変化します。問題が起こったときにどうしたら解決できるのか知恵を出し合うようになります。授業のねらいは教師と子どもたちの共同の課題となり、その達成のために協力し合うようになります。しかし何よりもの変化は、学級がそれほど変わっていなかったとしても、教師自身の子どもを見る見方が変わり、子どもたちの成長を信頼できるようになることだと思います。

―先生が、アドラー心理学を生かした学級経営を行われ始めたきっかけは何だったのでしょうか?

 自分自身がアドラー心理学で勇気づけられたことから、子どもたちも勇気づけたいと考えました。アドラー心理学を学ぶ前の私は、子どもや保護者、同僚や管理職に認められる教師になろうともがいていました。アドラー心理学を学んだことで、私自身の大げさに言えば人生の役割を実感することができました。それはとても幸せなことだと思っています。

―本書では、「勇気づけ」の大切さが繰り返し述べられています。「勇気づけ」とは何でしょうか。「ほめる」との違いを教えてください。

 「勇気づけ」と「ほめる」は多くの部分で重なります。しかし「ほめる」は条件付きで、100点を取ったものはほめられますが、30点を取ったものはほめられません。その反対に、勇気づけは30点を取ったものにこそ有効です。その違いを明確にし、勇気づけを意識して使えるようにするために、「ほめるな」ということさえあります。

―「勇気づけ」の大切さを理解しても、なかなか実践するのは難しいと感じる方いそうです。うまくいくコツなどがあれば教えてください。

 勇気づけはテクニックというよりも態度といえるかもしれません。なぜなら相手を元気にしようと「勇気づけを使おう」とした途端、かえって子どもの活力を奪う、勇気をくじくことがあるからです。怒りや褒美や罰を使って相手をコントロールしようとする態度を捨て、よりよく生きようとする子どもたちのあらゆる努力を尊敬する態度に切り替えることが必要です。あえてコツといえば、自分の態度や言動から子どもは勇気づけられたかそれとも勇気をくじかれたかをモニターすることでしょうか。

―最後に、本書を読んで「アドラー心理学を生かして学級経営していこう!」という読者の方にメッセージをお願いします。

 アドラーは、彼自身の心理学を、限られたものだけがつかえる特別なものにしようとはせず、親も教師も子ども自身も誰もが使える心理学にしようと考えていたようです。しかし、実現しようと目指していたものは「共同体感覚」の育成にあり、人間のみならず世界が、ひいては宇宙が調和してあることを目指した奥の深い心理学でもあります。読者のみなさんが、この本をきっかけにアドラーを楽しみ、実践し、みなさんの教師としての仕事が楽しく豊かなものになることを願っています。

(構成:茅野)
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