著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
グローバル時代を生き抜く子供たちのための外国語活動とは?
大阪樟蔭女子大学教授菅 正隆
2015/10/23 掲載

菅 正隆かん まさたか

大阪樟蔭女子大学教授。1958年岩手県北上市生まれ。大阪外国語大学卒業後、大阪府立高等学校教諭、大阪府教育委員会指導主事、大阪府教育センター主任指導主事、文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・国立教育政策研究所教育課程研究センター教育課程調査官を経て、2009年4月より現職。

―本書にも詳しく紹介されていますが、中学年という学年を考慮した外国語活動の取り入れ方のポイントを簡単に教えてください。

 現在、外国語活動は第5学年、第6学年で実施されていますが、次期学習指導要領では、開始学年を第3学年とすることとなっています。したがって、現在の高学年の内容を中学年に移行することとなりますが、導入期の指導方法には大きく差異はありません。ただ、対象となる子どもが現在より2歳年齢が低くなりますので、より丁寧でこまめな指導が必要となります。また、内容が大きく変わらないとしても、知的年齢に即した内容の取り扱いや指導が求められます。そのためには、常に週1回45分程度の外国語活動だけでは、英語に慣れ親しませるには無理があり、モジュールなどを活用しながら、英語に数多く触れさせる機会を設けることが必要となってきます。

―本書にはモジュールを使った外国語活動の指導プランが掲載されています。このモジュールの時間はどのように活用すればよいでしょうか。

 外国語教育(英語)では、繰り返し英語に触れさせることが重要です。普段使わない言語を習得させるためには、その言語を数多く聞かせたり話させたりするなど、体験的に慣れ親しませることが絶対に必要です。したがって、週1回45分程度の授業だけではなく、何度も英語に触れる機会を創り出すことです。例えば、15分のモジュールを45分の本来の授業とリンクさせ、モジュールの15分では、基礎基本としての語彙や表現に慣れ親しむ活動(インプット中心)を組み、その集合体として、45分の授業では表現活動(アウトプット中心)を組んで、子どもたちの統合的なコミュニケーション能力の素地を培います。

―またモジュールを活用することにはどのようなメリットがありますか?

 英語に数多く触れることで、子どもたちの情意フィルターを下げ、英語への抵抗感をなくし、繰り返すことで、英語に慣れ親しみ、英語活用へのロードマップができあがるのです。人とは忘れるものです。週1回程度では、普段使用しない英語は、1週間後には、忘れてしまうのが当たり前のことなのです。それを持続可能とするべく、例え15分でも外国語に触れる機会を多く持たせることは、将来への大きな成果を生み出すソースとなることは当然のことなのです。

―今、次期指導要領の方向性を見据えて「アクティブ・ラーニング」が話題になっていますが、外国語活動ではどのような取り組みが考えられると思いますか?

 本来、中・高等学校における英語教育では、従来からアクティブ・ラーニングで英語を指導してきています。例えば、ディスカッションやスピーチ、プレゼンテーション、ディベートなどを指導の到達目標ともなっています。しかし、一部では入試突破のための知識注入方の文法指導や訳読などもまだまだ見られます。これらを改善することが英語教育には求められています。一方、小学校の外国語活動では、文法説明や訳読、英作文などは指導内容に含まれていませんので、まさにアクティブ・ラーニングが基礎基本となります。ペアやグループで考えさせたり、発表させたり、コミュニケーション活動を通して、相手の意向をおもんぱかったり、意向を伝えたり、常にコミュニケーション活動にも思考させる場面を加えることで、アクティブ・ラーニングの考え方に近づくことができるのです。あくまでも、暗記させたスキットを発表させるなど、思考や判断を伴わないものは転換していくことが必要になってきます。

―最後に全国の小学校で英語を教えている先生方に、一言メッセージをお願いします!

 平成23年度に導入された外国語活動も、先生方のご努力で、芽が出て、茎が伸び始めました。そろそろ花のつぼみもできあがる段階です。この辺で、ステージを1つ上げる必要がでてきました。花の咲かない外国語活動は悲しいものです。次の段階は、子どもたちの素地から基礎へのプロセスです。しかし、授業時間数が限られている現状では、なかなか難しい面もあります。そこを打破するためには、まさに、「習うより慣れよ」です。モジュールを利用しながら、数多く英語に触れ、子どもたちの言語感覚を研ぎ澄まし、英語を武器として生きる子どもたちの基礎を構築していただきたいと思っています。

(構成:木山)

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