著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
4コマまんがの先生に自分も当てはまるという方、必見です!
杉並区立済美教育センター所長田中 稔
2012/8/30 掲載
  • 著者インタビュー
  • 評価・指導要録
 今回は田中稔先生に、新刊『4コマまんがで楽々ナットク 中学校評価丸わかりガイド』について伺いました。

田中 稔たなか みのる

中央大学文学部史学科日本史学専攻卒業。東京都の公立中学校の社会科教諭から、目黒区指導主事、東京都多摩教育事務所指導主事、中学校副校長を経て、現在、杉並区立学校への支援・指導機能と教育研究所・研修所としての機能を合わせもつ杉並区立済美教育センター所長として勤務。『改訂学校学年学級 行事運営辞典』(共著、ぎょうせい)、『今、求められる力を高める総合的な学習の時間の展開(小学校版)(中学校版)』(作成協力者、文部科学省)など。

―本書は、中学校の評価に関して1冊で全て理解できるようにつくられているようですね。読者対象としてどのような先生を意識したでしょうか。またそのためにどのような工夫をしましたか?

 本書は、子どもたち一人一人に確かな学力を身に付けるために必要不可欠な学習評価について、「よくわからない」「今さら聞けない」と悩む若手や非常勤講師の先生方に手に取っていただきたいという思いを込め執筆されています。そして、「分かりやすいこと」「教師として知っておかなければならないことをできるだけたくさん盛り込むこと」を基本として構成されています。
 各項では、まず、読者の方に評価についての課題を分かりやすく知っていただくために「4コマまんが」を使用し、その課題解決を文章部分でしていくよう工夫をされています。
 自分の子どものために、中学校の評価・評定がどのようなものか知りたい保護者の方にも分かりやすく、役立つものとなっていると思います。

―評価や評定をつけるために、日頃の授業で常に意識をしておいた方がよいことがありましたら、教えて下さい。

 まず、先生方が意識しなければならないことは、授業の「目標・めあて」等が「(適正な)評価規準」と整合したものとすることであり、それを授業の導入部でしっかりと生徒に伝え、「教師と生徒が共有する」ことが必要だと考えます。そして、当然、その授業においては、示した目標・めあてを実現するための学習活動が適切に計画・実施され、妥当な評価方法に基づく記録がなされなければならないと考えます。 
 しかし、評価場面はあまり多いと先生が評価に追われることとなり、個に応じた指導の時間が削られます。授業内容にもよりますが、評価場面は通常一単位時間で1回、2回が妥当なものと考えます。

―中学校は教科担任制ですが、自分の専門以外の教科に関して知ることで、どのようなメリットがあるでしょうか。

 例えば、5教科では残念ながらあまり行われていないパフォーマンス評価とその評価結果を生かした学習活動も、実技教科では日常的に行われており、5教科の先生方が学ぶ意義は大変あるものと考えます。
 実技教科の先生方においては、知識や思考・判断力の獲得状況をしっかりと把握し、その確実な習得に向けた指導を行う5教科の教師の評価方法、内容について学ぶことは有意義だと考えます。

―本書の4コマまんがでは、おっちょこちょいの教員がちょっと笑える失敗をしています。実際に評価や評定に関して指導される中で、よくありがちな間違いや失敗がありましたら、ご紹介いただけますか?

 4コマまんがは、どれも冗談ではなく一度は出会ったことの事例であることから、「あるある」と笑いながら読んでしまいました。
 ありがちな失敗としては、各学校が作成する評価計画においては、まだまだ「評価規準」と「評価基準」が混同されているものが少なくありません。また、若手教員の授業参観に行った際、指導案には「思考・判断・表現」の評価規準が設定されているのにもかかわらず、思考させたり、表現したりする学習場面が全くないことも何度かありました。

―最後に、評価に取り組む中学校の先生へ向け、ぜひメッセージをお願いします。

 義務教育段階の公立学校の使命は、自校に在籍する全ての生徒に学習指導要領に示された目標や内容等を確実に身に付けさせることにあります。そのことを、学習評価に置き換えて表現すると、教える先生は、全ての生徒の全教科、全観点において「おおむね満足できる状況」を実現し学び残しの無い状況にすることです。
 そのためには、先生方は、評価についての理解を深め、毎時の授業において評価を生かした授業を進める必要があります。単に「評定」を導き出すためだけではなく、生徒の学びを保障するために「適切な評価」が行われることを切に願います。

(構成:木村)
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