ハッピー先生のとっておき授業レシピ
“この教科の授業はこうでなくちゃ…”と決めてませんか? ハッピー先生がそんなあなたの授業観を大転換!
ハッピー先生の授業レシピ(4)
教師のちょっとした工夫で、社会見学が変わる(社会)
子どもも見学先もハッピーに!
大阪市立千本小学校教諭金大竜
2012/9/25 掲載

見学の目的と視点をはっきりさせるために

 まずは、なんのためにそこを見学するのか、そして、なにを見たいのかを明確にすることが大切です。それがないまま社会見学に行くと、子どもたちが“なんだかよくわからんかったけど、なんか楽しかったなぁ…”という感想をもってしまったり、こちらが調べてきてほしいと思ったことを調べずに帰ってきたりすることも少なくありません。
 以前、3年生を担任しているときに、地域にあるあられ工場の見学に行きました。僕は、事前の打ち合わせで、あられ工場の方から子どもたちへ「あられを宣伝するためのチラシをつくってほしい」という依頼をしてもらえないかとお願いしました。
 この単元の最初の授業で、僕は「あられ工場の社長さんからみんなにお願いがあるらしくて、手紙が届きました」と言って紹介しました。子どもたちは、「どんなことが書いてあるの?」と興味津々。僕は「いやあ、でもみんなには難しそうだったから断ろうかと思ってるよ」と言うと、「そんなことない! できるもん。早く読んでよ」と子どもたち(このように教師がとぼけることで、子どもたちは大きく反応してくれます。これはいろんな場面で使えます)。
 手紙を読むと、チラシをつくるという依頼をもらったことに子どもたちは大喜び。そこで僕は、「そんなに喜んでるけど、チラシには何を書くの?」と聞きました。そこで、子どもたちはあられ工場について知っていることと、知らないことを話し合いました。そして、あられ工場を見学させてもらわないとチラシが作成できないという話になり、「工場を見学させてもらえませんか」という依頼を子どもたちから工場へ出すことにしました。そこから、さらにあられ工場について知りたいことについても話し合いました。知らないことと知りたいことをKJ法で整理することで、見学の視点ができていきます。
 目的意識と見学の視点が明確であれば、子どもたちは見学先でしっかりと調べたり、わからないことを質問したりできます。こうした教師のちょっとした工夫で、社会見学が実のあるものに変わっていきます。

受け入れる側の見学先もハッピーにする心がけ

 子どもたちがある場所を見学するというのは、受け入れる側の見学先にとって、ある意味大変迷惑なことです。それをわかったうえで見学させてくださるのだから、見学先にも“子どもたちが来てよかったなあ”と感じていただけるような取組でありたいと思います。
 このときのあられ工場でも、子どもたちが真剣につくったチラシを、ホームページ上で宣伝に使ってもらいました。子どもたちが作成した温かみのあるチラシを掲載することで、子どもたちにも愛してもらっているということをアピールしてもらいたいと考えました。
 また、子どもたちはチラシに何を書くべきか真剣に話し合い、あられ工場のよさや工夫について追究することができました。この話し合いは、実際、工場の社長さんにも聞いていただき、社長さんからアドバイスもいただきました。子どもたちの意欲が高まっていったことは、いうまでもありません。

 下の写真は、このとき実際に子どもたちがつくったチラシです。
写真1 写真2

金大竜きむ てりょん

1980年生まれ。
「日本一ハッピーな学校をつくる」ことを夢みる、教師歴11年目の大阪市小学校教員。周囲からは“ハッピー先生”と呼ばれている。
教育サークル「教育会」代表。「明日の教室」をはじめ、各地のセミナーで講師を務める。
また、「あいさつ自動販売機」など、型にとらわれない個性的な実践が注目を集め、様々なメディアで取り上げられている。
ブログ「日本一ハッピーな学校をつくろう」において、日々の学級での出来事や実践を配信中。
2012年4月に、『日本一ハッピーなクラスのつくり方』(明治図書)を刊行。

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