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「はじめが肝心」「始めよければ全てよし」「黄金の3日間」、…などの言葉に代表されるように、人と人との“出会い”は、互いの関係を円滑にするための第一歩として、大切なことです。特に、他の人とのかかわりが苦手、仲間との触れ合いが少ないためにピアプレッシャー(仲間からの同調圧力)を感じやすいなどと言われる最近の子どもたちにとっては、初めての出会いをどのように迎えるかは大きな問題になります。
特に上学年では“11月危機”の言葉に代表されるように、学級の荒れが起こりやすいとされています。11月危機とは、学級内のルールが定着せず、ふれあいがないために学級としての機能が成立しない荒れた状態のことで、その多くが、4年生以上の学年の11月に起こるケースが多いという傾向から私が考えた造語です。
そこで、出会いをスムーズに、スタートダッシュ出来る関係をつくる必要があり、この時期には「ルールとふれあいのバランス」を意識した取組が求められることになります。
「ふれあい」はエンカウンターに代表されるように互いの良さに気付くことでつながりを深める事が出来ます。「ルール」は、一方的に提示する方法もありますが、「させられ感」が残ることもあり、定着するには学級みんなの考えを取り入れたものが望ましいです。その際に、意識のずれに気付き、感情の修正を経て行動の修正につなげることは、トラブルを起こした当事者同士が納得しやすいというメリットがあります。
廊下を走って
1ねらい【中・高学年の学級活動】
ありがちな生活場面のトラブルを基に、けんかや言い合いになるには、当事者同士に意識のずれがあること、それぞれの言い分を主張するのではなく、自分の言動を振り返ることで、心から謝罪し、感情を語ることでトラブルを解決する方法を知る。
2活動T 「生活場面でのトラブルの確認」
問題の意識化
- 友だちとのけんかやトラブルは、多くの場合、互いに思い違いがあることを理解し、どのような解決方法があるか確かめる。
※教師からの言葉がけ例…「最近、友だちとのけんかやトラブルが増えてきました。よく話を聞いてみると、互いに思い違いがあるようです。」「どのようなことでトラブルになり、どのような解決方法がありますか。」
あやまる、あきらめる、話を聞く、泣く等様々な解決の仕方があることを確かめる。
- 《状況設定のシナリオ例》「ジャイアンは、早く遊びに行きたくて、チャイムが鳴ると廊下を走って行きました。そのとき、廊下の左側を歩いていたのび太君とぶつかったのですが、「おまえが悪い」と言って、行ってしまいました。そばで見ていたしずかちゃんは…。」
<エピソードロールプレイのやり方>
@エピソードを読み、意味を考える。
Aエピソードに合わせてロールプレイする。
Bドラえもんの3人のキャラクター(ジャイアン…攻撃的、のび太君…非主張的、しずかちゃん…主張的)を参考に代表者がロールプレイする。
Cのび太君の立場でロールプレイし、振り返る。
- エピソードロールプレイ
- エピソードを基に、廊下を走ってのび太君にぶつかったジャイアンが、互いの言い分を持っていることに気づき、その後どのように仲直りするかを考える。
※ジャイアン、のび太のやりとりを中心に、観察者的な立場で二人の気持ちを理解できるように配慮してロールプレイできるようにする。
- ロールプレイの様子から、気づいたことや感じたことを発表する。(ロールプレイして、ロールプレイを見て。)
それぞれの立場で振り返る。
- ジャイアンは、自分からぶつかったのに、相手に怒ったように言うのはおかしいと思う。
- のび太君は、廊下の左側に立っていたので、謝るのは分かるけど、ジャイアンも謝って欲しいと思う。
- 僕も近くで二人を見ていたら、しずかちゃんが言ったように、どちらもお互いによくない面があったのだから、しっかり謝ってから、それぞれの理由を言えばいいと思う。
3振り返りT 「解決方法の自己決定」
- ロールプレイを基に振り返り、お互いの言い分を主張する前に、自分に落ち度があれば、一言謝罪してから、自分の言いたいことを言うと、相手を納得させやすいことを確かめる。
- 出されたことを元に、自分だったらどのように断るかを自己決定する。
4 活動U 「決定に基づき努力をする」
振り返り(自己決定したこと)を元に、「自分もよく相手も良い解決の方法」を確認し、ロールプレイする。
※グループのメンバーと、ジャイアン役、のび太君役に分かれて、主張的に相手に気持ちを伝える方法の練習をする。
5 振り返りU
「トラブル解決」のためのポイントを元に、やった活動Uが活動Tとどのように違っていたか、話し合いで出た気づきや感想、実感したことを発表しあう。
今回の「トラブル解決」は、「けんか両成敗」になりがちな安易な解決方法や発言力の強い子に一方的に言い含められるなど、不全感が残らないようにすることを目的にしています。
生活場面でのありがちなトラブルを、キャラクターを介することで客観的に自分自身を振り返ることになります。主張的に自分の気持ちを伝える実践として紹介しました。シナリオをシンプルに変えることで、低学年でも実施可能であると思います。