堀江式 国語授業のワザ
国語授業のお悩みをズバッと解決!“ワザの堀江”先生が指南する、堀江式の大ワザ&小ワザが満載!
堀江式 国語授業のワザ(24・最終回)
言葉の力を支える「ワザ表」を活用しよう!
―「身に付けた力」を目に見える形にする授業のワザ―
兵庫教育大学大学院教授堀江 祐爾
2014/5/5 掲載

【ワザ表】

国語授業における「ワザ表」の効果的な活用のワザを教えて下さい。

ココがポイント!

「言語活動あって学びなし」を回避! ユニバーサルデザインという意味も

 「平成20年版小学校学習指導要領解説国語編」において「第1章総説」の下の「3 国語科改訂の要点」の「A 内容の構成の改善」には、次のように記されています(太字は引用者による)。

各領域では、国語の能力を調和的に育て実生活で生きて働くように、それぞれの領域の特性を生かしながら児童主体の言語活動を活発にし、国語科の目標を確実かつ豊かに実現できるようにするよう内容を改善した。そのために、各領域の内容を(1)の指導事項に示すとともに、これまでは内容の取扱いに示していた言語活動例を内容の(2)に位置付け、再構成している。これは、各学年の内容の指導に当たって、(1)に示す指導事項を(2)に示した言語活動例を通して指導することを一層重視したためである。

★「身に付けたい力」を可視化 「ワザ表」が教科書にも掲載されるように
 このように、言語活動が重視されるようになりました。「国語の能力を調和的に育て実生活で生きて働くように」という意義があり、いわゆるPISA型読解(実際には「読解」だけではなく、リテラシー=「読み書き能力」全体に関わります)が求める国際基準としての「言葉の力」に対応するという意味を持っています。
 言語活動を重視することは意義あることなのですが、「言語活動あって学びなし」という状態になってしまう危険性が高くなります。そこで、「身に付けたい力」を目に見える形にする「ワザ表」が活用・教科書に掲載されるようになってきました。
 例えば、4年生教材「一つの花」(光村図書)の手引きには、「物語を読んでしょうかいしよう」という言語活動を行うための「ワザ表」と同じようなものが載せられています。

物語をしょうかいするときは、次の中からいくつかを選んで、話や文章を組み立てます。
・人物――行動や人がら
・出来事――ふしぎなこと、意外なことなど
・あらすじ
・心にのこる言葉や文
・作者
・作品のとくちょう――組み立てや表現、他の作品とのちがいなど
・作品のひょうばん
・感想や考え

★言語活動の観点を可視化する「ユニバーサルデザイン」的配慮
 今、「ユニバーサルデザイン」としての授業が求められています。クラスの中のすべての子どもにとってわかりやすい授業を行うこと、特に、特別な支援を要する子どもに配慮した授業づくりをしていくための工夫を凝らすことが重視されています。「ワザ表」は、言語活動の観点を目に見える形にする(可視化)という意味において、「ユニバーサルデザイン」的な配慮を実行していると言えましょう。

効果抜群! 堀江式 大ワザ&小ワザ

ワザ1 言語活動で身に付けた「言葉の力」を「ワザ表」によって目に見える形にする

 下の画像は、2年生による「読書しょうかいカード」を書くという言語活動の中で生み出されたカードです。【芦田多恵子先生(兵庫県豊岡市立八代小学校)による授業実践より。】
 「*人とどうぶつのこころのつながりが分かる本 〇読書しょうかいカードを書きましょう」という言語活動が設定され、この学習者は1年生の教科書教材(光村図書)でもある「ずーっとずっとだいすきだよ」(教科書では「ずうっとずっとだいすきだよ」)を紹介しています。

例

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 「読書しょうかいカード」においては、〈本のだい名〉〈さくしゃ〉〈しゅっぱん社〉〈とうじょう人ぶつについて〉などの情報を書き入れる欄のあとに、二つの枠が用意されています。最初の枠には〈あらすじとさし絵について〉述べ、後の枠の中には〈お気に入りのところと感想〉をまとめています。
 この「読書しょうかいカード」をしっかりと支える形で、学習者と一緒に作り出した[お話の 楽しさを つたえる ワザ]が載せられています。注目したいのは、「読書しょうかいカード」の記述と「ワザ表」の項目とが線によってつながれているところです。
 例えば、「あらすじでは、エルフとぼくは小さいころからいっしょで、エルフがしんでしまった心のつながりがわかるお話です。」という記述と、「ワザ表」の「Fあらすじ・・・みじかく、分かりやすく いつ、どこで、だれが、どうして、どうなった できごとなど(5W1H)」が線によって結ばれています。その他、【お話の さし絵】【お気に入りの ところ】「P考えや かんそう」なども記述と線によってつながれています。
 「読書しょうかいカード」を書くという言語活動において、自分がどのような「言葉の力」を身に付けたかを目に見える形で確認するという意味を持っているのです。 

ワザ2 「ワザ表」は、付けたい力表・付けた力表・伝え合いの観点表の役割をする

 次の画像は、説明文教材「すがたをかえる大豆」(光村図書3年下)の言語活動の成果「すがたをかえる( )図鑑を作ろう」の下書きメモです。【三木惠子先生(兵庫県たつの市立小宅小学校)による授業実践より。】

例

 ここでも「すがたをかえる牛乳図鑑を作ろう」をしっかりと支える形で、「すがたをかえる大豆」の本文の特徴を踏まえた[説明文を書くためのワザ]が活用されています。
 やはり、記述と「ワザ表」の項目とが線によってつながれています。
 「ワザ表」は文章を書くときには、どのような観点を使って書くかということのヒント、つまり「身に付けたい力表」の役割をします。
 また、文章を書いた後、記述と「ワザ表」の項目を線でつなぐことによって、「身に付けた力」を明確にする役割を果たします。自分がどのような工夫を凝らして書いたかということを「メタ認知」する場となっていると言うことができましょう。
 さらに、この原稿の中央の下のところに「文章と主語が上手」、最後に「おわりかたがいいね」と書かれています。これらは、学級内他者からの「ほめほめ伝え合い」の成果です。つまり、「ワザ表」は伝え合い活動を行う際には、「伝え合い観点表」としての役割を持つのです。

ワザ3 「ワザ表」のワザは固定されたものではなく、追加され進化していく

 学習成果例の「ワザ表」の最後に【共感のワザ】という項目が付け加えられているところに注目しましょう。「牛乳がこんなにへんかしているなんてすごいですね。」と書いたところから、新しいワザとして【共感のワザ】が生み出されています。
 「ワザ表」のワザは固定されたものではありません。言語活動の中で新たに項目が追加され、「ワザ表」は進化していくのです。

 教師の学習指導のワザとして、「ワザ表」を活用した工夫を凝らしていただければ幸いです。

※今回をもって「堀江式 国語授業のワザ」の2年間の連載を終えることになりました。多くの方々からのコメントに支えていただき、連載を続けることができました。授業実践の成果を紹介させていただいた先生方、コメントを記入して下さった方々、読んで下さった方々に、心より感謝申し上げます。

 

堀江 祐爾ほりえ ゆうじ

兵庫教育大学大学院教授、元中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会国語専門部会委員、平成20年版中学校学習指導要領(国語)作成協力者、「国語教育の実践と研究をつなぐ会」世話役代表。
主な著書に『「国語力」向上の授業改革1 国語科授業再生のための5つのポイント』『小学校新国語科 言語活動の展開がよくわかるシリーズ1 書く力がぐんぐん伸びる!「言葉のワザ」活用ワーク』、などがある。最新刊『小学校国語科授業アシスト 実物資料でよくわかる!教材別ノートモデル40』が好評発売中!

(構成:林)
コメントの一覧
8件あります。
    • 1
    • 2014/5/5 11:47:35
    堀江先生が紹介してくださる「ワザ表」は、いつも具体的に観点を示してくださっていますので、指導するときの手引きとして活用させていただいています。おかげで評価の観点も明確になり、ぶれずに指導ができていると感じています。これまでの連載のなかで、いくつもの領域と学年にわたって「ワザ表」を紹介してくださっていることがありがたく、今後も、指導するときの手引きとさせていただきたいと思っております。今回で連載が終了するのがとてもさみしいです。これまでたくさん学ばせていただき、ありがとうございました。
    • 2
    • nekoneko
    • 2014/5/5 14:19:36
    ワザ表を作って、それを参考にしながら学習するということは実践している先生方もあるかと思いますが、ワザ表と実際に児童が書いた文章とをつなぐというところまでは行かないことが多いのではないかと思います。自分がどのワザを使ったのかを目に見える形で線で結ぶというところが大切なのですね。いろいろな作業や学習を常に確認し、目的を意識し、目に見える形にするということを心がけたいものだと思います。
    • 3
    • わんこそば
    • 2014/5/5 19:05:01
    とってもわかりやすくて、国語で教えることが身近に感じられ、楽しくなる解説でした。一つ一つが具体的で教科書教材を例に挙げているので、明日からでも使いたくなる内容でした。ワークシートを使って実際に授業をされた先生方の実践事例を紹介して下さるので、これもまたとてもイメージしやすくて助かりました。堀江先生を始めここに紹介して下さった先生方に心から感謝申し上げます。
    • 4
    • 島唄
    • 2014/5/6 0:26:29
    ワザ表があるから、言葉の力が確かについていくことがよくわかりました。可視化されたワザ表があれば、自分のつけている力を確認でき、他の単元でも学んだことを生かしていけます。ワザ表がなければ、上滑りしてしまって、子どもたちにとって「活動はしているけれども学びなし」という状態になっていくと思います。今回の連載だけでなく、今までの連載はとても参考になり、わかりやすく説明してくださっていました。その時々の授業で使うために、よく読み直しています。今までの連載、ありがとうございました。
    • 5
    • yukisotasukisuki
    • 2014/5/6 17:10:22
    2年間の連載、とても参考になる実践を紹介していただき、ありがとうございました。ワザ表が教室にあると、子ども達がすぐにそれを読み取るためのアイテムとして使っていました。また、指導者もワザ表を作成することにより、この単元でどんんな力を身に付けさせれば良いのかをはっきりと自覚することになり、授業がぶれません。物語でも説明文でも「話す・聞く」単元でも子ども達から引き出したワザ・コツを整理して、みんなで使いこなしていくことが、実は学級作りにも役立つということを実感しています。ワザ・コツは学級文化ですから。
    人が集まるところに「文化」は生まれます。個性的でしかも指導事項でもある学級文化を、全国の学級で生み出してほしいものだと思っています。堀江先生の次回の連載が企画されたらいいなと楽しみにしています。
    • 6
    • 国語ラボラトリー
    • 2014/5/6 22:20:42
    どうすればその言語活動をやりきれるかと考えるところに学びがあり、ワザが生まれるのでしょう。よりよいワザを求めて、子どもたちとともに学び続けるところに教師の仕事があることを、あらためて考えさせていただいた連載でした。
    • 7
    • やまと
    • 2015/1/14 19:10:17
    ワザは自分の中にもう組み込まれているかもしれませんが、それをもう一度表に照らし合わせて確認することで、意識が高くなると思います。そして表をつかいこなすことで、さらに新しいワザを見つけ出すこともできるだろうと思います。そしてそのワザを、クラスで共有することで、学習面だけでなく、クラスとしての一体感も生み出すのではないでしょうか。学習意欲が高まることと思います。ありがとうございました。
    • 8
    • がま
    • 2015/2/5 18:36:40
    そうだったんですね!紹介されているワザ表は、教師が行ってきた指導事項であると同時に、可視化を行っていることによるユニバーサルデザインになっているんですね。ワザ表は、教室上部に掲示されているのではなく、ワークシートに入り込んですぐに使えるよう配慮されているのも、参考にしたいと思います。このワザ表を時折見直して、バージョンアップするという考え方も大変参考になりました。
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