堀江式 国語授業のワザ
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堀江式国語授業のワザ(8)
〈複合単元〉をうまく活用しよう
―複数の単元のつながりを子どもと共有する―
兵庫教育大学大学院教授堀江 祐爾
2013/1/5 掲載

【複合単元・関連単元】

4年生の「アップとルーズで伝える」と「『仕事リーフレット』を作ろう」(光村図書)のような、関係の強い単元が並んでいる場合、どのように扱えば良いのでしょうか。

ココがポイント!

複数の単元が強い関係を持って並んでいる〈複合単元〉をうまく活用する

 複数の単元が強い関係を持って並んでいる、こうした単元の正式な名称はありませんが、〈複合単元〉または〈関連単元〉と呼べば良いでしょう。
 光村図書の教科書には、「わらぐつの中の神様」と「物語を作ろう」(5年)などもあります。東京書籍の教科書にも、「新聞記事を読み比べよう」と「立場を明確にして書こう」(5年上)や「注文の多い料理店」と「ふしぎな世界へ出かけよう」(5年下)などの〈複合単元〉があります。こうした〈複合単元〉をうまく活用することは、授業改善につながっていきます。

効果抜群! 堀江式 大ワザ&小ワザ

ワザ1 学習の見通しを持つ段階から、複数の単元のつながりを子どもと共有する

 例 例えば、「『情報をうまく伝える』ということを扱った教材を読む」という言語活動と、「情報をうまく伝えるために書く」という言語活動を上手につないで、効果的かつダイナミックに学習指導を展開したいものです。
 そのためには、学習の見通しを持つ段階から、複数の単元のつながりを子どもと共有する必要があります。板書例(赤穂市立原小学校4年塩江理栄子学級)においては、「説明のしかたについて考えよう」→「写真と文章で説明しよう」という二つの単元の関係を目に見える形で整理しています。

ワザ2 〈リーフレットを書く〉ための工夫(ワザ・コツ)を見つけるために読む

 板書例において、リーフレットの実物がすでに示されているところに注目して下さい。これは「アップとルーズで伝える」という教材を「〈リーフレットを書く〉ための工夫(ワザ・コツ)を見つけるために読む」ということを示しています。例えば、次のような工夫(ワザ・コツ)になるでしょう。

【「アップとルーズで伝える」から見つけた工夫(ワザ・コツ)】
(1)送り手が伝えたい内容や受け手が知りたいことを考える。
(2)アップとルーズのどちらを使うか考える。
(3)アップとルーズをうまく組み合わせる。

 さらに、実際のリーフレットからも工夫(ワザ・コツ)を見つけていきます。

【実際のリーフレットから見つけた工夫(ワザ・コツ)】
(4)地図やイラストも入れて、説明を書く。
(5)数字などは具体的に正確に示す。
(6)読み手を引きつける見出しをつける。
(7)読みやすいレイアウトを考える。

堀江 祐爾ほりえ ゆうじ

兵庫教育大学大学院教授、元中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会国語専門部会委員、平成20年版中学校学習指導要領(国語)作成協力者、「国語教育の実践と研究をつなぐ会」世話役代表。
主な著書に『「国語力」向上の授業改革1 国語科授業再生のための5つのポイント』『小学校新国語科 言語活動の展開がよくわかるシリーズ1 書く力がぐんぐん伸びる!「言葉のワザ」活用ワーク』、などがある。最新刊『小学校国語科授業アシスト 実物資料でよくわかる!教材別ノートモデル40』が好評発売中!

(構成:林)
コメントの一覧
10件あります。
    • 1
    • がま
    • 2013/1/6 17:14:46
    教科書のページ増に伴い、このような複合単元の扱いに悩んでいました。ここでは、読む教材と、書く教材を言語活動によって上手につないで、効果的に学習指導が展開されてある例を示してくださり、大変参考になりました。この学習展開において、学習のはじめから、ゴールを子どもたちと丁寧にくだき、また共通認識して、ゴールを見据えて目的的な読みをしているんだなとよくわかりました。
    • 2
    • 島唄
    • 2013/1/8 23:22:11
    複合単元の効果的な授業方法を分かりやすく説明されていて、とても勉強になりました。塩江先生の板書は、二つの単元の関係をはっきりと目に見える形にしているのでぜひ参考にしたいです。最初からリーフレットの実物を見せることは、子ども達の興味・関心を高めるとともに、最終的にどんなことをするのか学習の見通しを持ちやすくなるので、とても有効だと思いました。
    • 3
    • 花垣
    • 2013/1/17 10:10:52
    教科書の収録されている物語や説明文を単独で扱うのではなく、その後の学習のために扱うという発想も必要なのだと感じた。その場合のポイントが、「学習の見通しを持つ段階から、複数の単元のつながりを子どもと共有する」ということなのだろう。教師だけがつながりを意識するのではなく、子どもたちもつながりを意識して物語や説明文を読んでいくことによって、二つの単元の関連性をより強くすることができる。
    • 4
    • keichan
    • 2013/1/26 13:27:30
    光村図書の教科書は、複合単元になっているものが多いので、時間数のことも考えると「言語活動で単元を貫く」扱いをしたいと思っていました。後ろの単元で示している言語活動をするために前の単元を扱っていくというふうに単元構造を整理すればいいのですね。「言語活動で単元を貫く」ことを意識して、学習指導をすすめていきたいと思います。
    • 5
    • 国語ラボラトリー
    • 2013/2/1 7:05:42
    めあてを明確にして学習を進めること、単元を学ぶのではなく単元で学ぶことが大切なのでしょう。
    • 6
    • かすみまる子
    • 2013/2/17 15:36:47
    新学習指導要領になっても、「読む」ために「読む」、「読み深める」だけに終わってしまいがちな説明文・物語文教材。でも、塩江実践のように、複合単元として捉え、最終目標をはっきりもたせると、目的的な「読む」になるのですね。
    わがクラスも、今「物語を書く」ために「わらぐつの中の神様」を「読む」学習をがんばっています。物語文でも、複合単元できますよね!
    • 7
    • 2013/8/1 15:05:45
    関係の強い単元が並んでいる場合、どのように扱えば良いのか疑問に思っていました。堀江式国語授業のワザ―「〈複合単元〉をうまく活用しよう」を拝読して、いいお勉強になりました。 第一、学習の見通しを持つ段階から、複数の単元のつながりを子どもと共有することです。学習指導を孤立させず、目標の系統性を保ちながら、柔軟でしかも弾力的な運用を図り、系統化した効果的な指導がなされるように計画を立てたことが伺えます。複数の単元のつながりを子どもと共有することを通し、子どもが関連性のある言語活動への理解をより深めることにつながるでしょう。
    第二、〈リーフレットを書く〉ための工夫(ワザ・コツ)を見つけるために読むことです。
    「アップとルーズで伝える」という教材を「〈リーフレットを書く〉ための工夫(ワザ・コツ)を見つけるために読む」という読む言語活動と書く言語活動を関連性づけ、教師の柔軟でかつ弾力的な運用の技に感心しました。今後関係の強い単元が並んでいる場合、各言語活動の関連性と系統性を図ることを心がけます。
    • 8
    • ハイライト
    • 2013/8/4 23:49:58
    複数単元の活用の具体例がここでは示されており、ここで表れていること以外にも活かすことができると思った点がいくつかある。「説明のしかたについて考えよう。」というのは、説明文の中心的な課題と言える。ここでは、アップとルーズの教材なので文章と写真と大きなくくりでまとめられているが、説明文の文章にはもっと詳細部分を整理できると思われる。接続語や語尾などで説明文の特徴的な表現があったりする。次の単元リーフレットを書くについてはその工夫としてワザ・コツを前単元からと実際の単元中からと整理されたのを提示することで子どもたち一人一人にとってわかりやすい手立てとなっている。具体的には「数字」「見出し」というのは聞く側にとっても目を向けやすい説明のもとになると思われる。こういった形で複数の単元をつなげることでさらに学習の深まりが得られると思った。
    • 9
    • flaba
    • 2013/8/9 16:20:50
     複合単元(・関連単元)に目を向けたことが今までありませんでした。しかしこの記事が、これらの単元の持つ可能性を考えるきっかけとなりました。
     複合単元は各単元が関係性を持っているため、上手に活用すれば、他の単元に比べ子どもたちが身につける力をよりはっきり自覚しやすいと考えられます。では上手に活用するとはどういうことでしょうか。私は、この記事にワザとして示されている「学習の見通しを持つ段階から、複数の単元のつながりを子どもと共有する」ことが大切であると思います。そして共有させるべきそのつながりの軸こそが「身につける力」なのではないでしょうか。この軸をいかに子どもたちが意識できるかが、複合単元の活用にとって重要なのだと私は考えます。
     紹介されている板書では、リーフレットという実物を示すことで「身につける力」への強い意識づけができています。私も自分のなりに工夫して、複合単元を有意義な学習活動に活用していきたいです。
    • 10
    • タマ
    • 2013/8/14 22:49:58
    <複合単元>は、複数の単元をつなぐ活動を展開することでそれぞれの教材における学びをより深いものとする。Aの教材がBの教材の価値を引き出すといった一方的な関係ではなく、Bの教材もAの教材に影響を与え、引き出された価値がまた新たな価値を引き出す。複数の単元をつなぐことで、相互的な高め合いが可能となるのである。<複合単元>は、複数の単元が強い関係をもつことから、一方の教材をもう一方の教材を学ぶ目標として設定し、目的ある学び、身につけさせたい力を明確にした学びが可能である。複数の単元のつながりを意識した活動の重要性は理解していたが、その方法については明確なものが思い浮かばなかったので、実際の教材を用いた活動例をご教示くださりとても参考になりました。今後は<複合単元>をより意識して目的ある学びの場を作っていきたいと思います。
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