子どもの心をグッとつかむ言葉のワザ
学校生活でも授業でも、教師と「話すこと」は切っても切れない関係。話術、言葉の選び方、コミュニケーション力、コーチング等、教師に必要な言葉のワザを伝授します。
子どもの心をグッとつかむ言葉のワザ(18)
給食中の騒がしさとサヨナラできる「感謝タイム」
パラグアイ ニホンガッコウ大学学長補佐西野 宏明
2020/11/10 掲載

事例給食中の騒がしさとサヨナラできたわけは?

 A先生の教室です。準備からいただきますまで10分かかりません。協力し合いながら準備できています。
 そして給食。


 当番の子が言います。
「今日は給食を作ってくれた調理師さんたちに感謝をして食べましょう。5分間は感謝タイムです。いただきます」
 みんな「いただきます!」
 子どもたちは静かに、行儀よく食べています。


 5分間が過ぎました。
 ここで、残飯をへらすためにわけたり、お代わりしたいものを取りに行ったりします。楽しい会話も同時に始まります。


 20分ほどたちました。
 準備が速いため、ゆっくり食べることができます。
 残飯は少なく、片付けがとてもきれいだとほめられます。

挿絵1

解説

 給食の時間は、ワチャワチャ〜と騒がしくなりがちです。しかし、ちょっとした一言をかけるだけで、事例のように静かに行儀よく食べることができるようになるのです。
 そのワザをご紹介しましょう。

給食指導で身に付けたい3つのこと

 給食指導で身に付けたいのは、次の3つのことです。

  1. 感謝
  2. 食事のマナー
  3. バランスのよい食事

 これらのことを意識して、私が初任の頃から心がけてきたことがあります。
 それが「感謝タイム」です。

「感謝タイム」の5分間

 4月の当初、子どもたちに次のように指導しておきます。

「動植物、生産者、輸送者、調理者、給仕者、保護者など、給食にかかわるすべての人、生き物やモノに対して、ありがとうございますの気持ちを込めて食べましょう。」

 道徳でも何度か取り上げます。
 そして感謝を形にしたものとして、「感謝タイム」を設けました。
 給食を食べる最初の5分間は、「感謝タイム」として集中して食べるのです。

 「話しながら食べるのは悪いことではなく、とても自然なことです。ただ、しゃべることに夢中になりすぎて、本当は食べられるはずのものを残してしまったことはありませんか? それでは給食にかかわった人たちはどう思うでしょうか。だから最初の5分間だけは静かに集中して食べましょう」

 このような趣意説明をすることで理解して子どもたちも実践できます。

しゃべってばかりの子どもには…

 本連載の第6回でご紹介しましたが、しゃべってばかりいて残す子どもには、次のように声をかけましょう。

「食べるお口もしゃべるお口も同じ。お口は一つ。だから今は、食べるお口だけ使おうね」

 これで子どもはハッとして静かに食べるようになります。

片付け方に人柄が現れる

 片付け方も指導します。
 きれいな片付け方の写真を掲示しておけば、「この通りにきれいにしてごらん」ですみます。
 趣意説明は以下の通りです。

 「やさしさ、誠実さ、感謝は思っているだけでは伝わりません。行動すること、形に残すことによって初めて相手に伝わります。だから行動して示しましょう」

 きれいに片づけていたら、学級通信で紹介したり、調理師さんに声をかけてほめてもらったり、担任がしっかりと評価します。汚ければ、もちろんやりなおしです。

ここがポイント!

  • 「感謝タイム」の趣意説明をし、なぜこの実践をするのか目的を共有することで子どもたちのモチベーションを高める!今月の「言葉のワザ」
  • 4月当初から指導して定着を図る!
  • 給食指導をとおして大事な価値を教える。

西野 宏明にしの ひろあき

東京都の公立小学校を10年間勤めたのち、2019年7月よりパラグアイの私立ニホンガッコウで学校顧問(教育コンサルタント、学長補佐)に就任。
初任時代の初めての授業で挫折し、教師修行を始める。
日本各地の教育イベント、セミナー、サークルに参加。自分自身でも若手教師向けのサークルやセミナーを主宰した。毎月5万円以上は読書やセミナー参加費に費やし、自己研鑽に励んだ。その集大成として3冊の単著『子どもがパッと集中する授業のワザ74』『子どもがサッと動く統率のワザ68』『熱中授業をつくる!打率10割の型とシカケ―そのまま追試できる「大造じいさんとガン」』を上梓。
2017年よりJICA青年海外協力隊員としてパラグアイへ派遣され、2年間、現地の教育力向上に努める。2019年3月に公立小学校を退職し、現職。

(構成:木村)

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