子どもの心をグッとつかむ言葉のワザ
学校生活でも授業でも、教師と「話すこと」は切っても切れない関係。話術、言葉の選び方、コミュニケーション力、コーチング等、教師に必要な言葉のワザを伝授します。
子どもの心をグッとつかむ言葉のワザ(6)
「オノマトペと比喩」で子どもがスッと動く
パラグアイ ニホンガッコウ大学学長補佐西野 宏明
2019/11/10 掲載

事例「肩の力を抜きましょう」→「ギュッと肩を上げて、ストンと下ろします」

 初任者の頃、私はこう思っていました。

 怖くて、厳しい先生だとその学級の子どもたちはスッと動く。
 反対に、甘くて、優しい先生だと子どもたちはスッと動かない。

 だから、自分は怖くて、厳しい先生になれば、子どもたちはスッと動くようになるだろうと考えたのですが、怖くしても、厳しくしても、実際には子どもたちはスッと動くようにはなりませんでした。

 それから、教師としての勉強を積みました。たくさんの学級を参観する中で、大きなことに気付きました。

 それは、一流の教師は、例外なくオノマトペと比喩を巧みに使っていることです。
 一流の先生方は授業も学級経営も上手です。もちろん子どもたちはスッと動きます。怖いか、厳しいか関係なく、一流の先生方の学級の子どもたちはスッと動いていました。
 その1つのポイントが、指示や説明のなかにオノマトペと比喩を使うことだったのです。
 後日、脳科学のセミナーに出たときに、オノマトペと比喩が科学的にも効果があると証明されていることがわかり、私の経験が確信に変わりました。

 では実際にどのようなオノマトペと比喩があるのでしょうか。いくつか紹介します。

●オノマトペ
 「スッと背筋を伸ばしましょう」
 「ビシッと座れませんかね!」
 「ガンガン書こう!」
 「黒板、ピッカピカに磨いちゃって〜!」
 「スパッと一言で答えられるとすると、どんな言葉?」
 「サクサク解いていきましょう」
 「力を抜きます。ギュッと肩を上げて、ストンと下ろします」
 「リラックスしましょう。スーってやさしく吸って、フ〜っとゆっくり吐いて」

挿絵

●比喩
・掃除の雑巾がけ
 「ジェットコースターみたいに、スルーってやってごらん」
・音読の声を大きくしたいとき
 「黒板のこの○に声をぶつけましょう」
 「黒板に声をバンっとぶつけてごらん」
 「(○を書いて)黒板のここにギュッと声を集めてみよう」
・給食の準備が騒がしいとき
 「高級レストランみたいに、もう少しサッと、そしてしっとりと準備できないかなぁ。さっきはガチャガチャし過ぎて安い居酒屋みたいで、居心地がいまいちだねぇ」
・運動会練習で「南中ソーラン」の基本の手の形
 「常にバスケットボールをつかんでいるようにグッと手首に力を入れます」
・運動会練習で「南中ソーラン」の決めのポーズ
 「パッと水をはじく勢いで」
・体育の跳び箱の助走
 「すー、トントン、バン!!」
・音楽の声の出し方でファルセットを響かせたいとき
 「そう、体の穴という穴を全部開けて。でもお尻だけはキュッと閉めて。頭のてっぺんから声が突き抜けるように、アー」
・有名実践家の言葉
 「鉛筆の先から煙が出るくらいの速さで書くのです」(有田和正先生)
 「脳みそに汗をかくような問題」(向山洋一先生)
・給食でおしゃべりの多い子に
 「食べるお口もしゃべるお口も同じ。お口は一つ。だから今は、食べるお口だけ使おうね」

 これ以外にもオノマトペと比喩は無数に工夫できます。
 ぜひ、先生や先生の学級のお子さんにピッタリのオノマトペと比喩を見つけてみてください!

解説

オノマトペと比喩の効果

 オノマトペと比喩を使うと、子どもの表情が変わります。
 ピッと反応します。ニヤニヤします。よく聞くようになります。先生が言った言葉を繰り返しつぶやく子も出てきます。
 低学年には特に効果てきめんですが、実は高学年でも十分使えることが経験済みです。

オノマトペと比喩を使う場面

 どんな場面でも応用可能です。
 なかでも、動作を必要とする場面で有用性が高くなります。
 体育、音楽、掃除、給食準備、読み書き計算など体のどこかを動かすときに生きるワザです。

試行錯誤の体験を

 最初は先生がオノマトペと比喩をどのように使うか考え、研究し、実践してください。その試行錯誤が大事です。
 どんな言葉がピッタリとくるか、どんな言葉はすべるか体感的にわかるからです。
 はじめから100発100中を目指す必要はありません。失敗するのも大事です。
 失敗がわかると、失敗が減り成功しか残らなくなるからです。

子どもと創る

 お子さんたちと自分たちにピッタリと合うオノマトペと比喩を創ってみてください。
 例えば、体育で上手に開脚前転ができる子がいるとします。その子をお手本として全員に示します。
 「上手にできるポイントを探しましょう」と発問します。すると、子どもたちはいろいろな発言をします。
 「頭が付くと同時に足が開いている」
 例えばこの言葉を拾って、「どういう風に?」と返します。
 「勢いよく、バッと開いている」
 「なるほど〜。頭を付けた直後に足をバッと開くとできるのか。みんなどう思う?」と全員に投げかけ試してみることができます。それを学級共通の言葉にしていくわけです。

ここがポイント!

  • 指示や説明にオノマトペと比喩を!今月の「言葉のワザ」
  • 自分たちで自分たちに合うオノマトペと比喩を創ってみる!

西野 宏明にしの ひろあき

東京都の公立小学校を10年間勤めたのち、4月よりパラグアイの私立ニホンガッコウで学長補佐と教育コンサルタントを兼任中。
初任時代の初めての授業で挫折し、教師修行を始める(教育新聞電信版で連載。初回の記事はこちら)。
日本各地の教育イベント、セミナー、サークルに参加。自分自身でも若手教師向けのサークルやセミナーを主宰した。毎月5万円以上は読書やセミナー参加費に費やし、自己研鑽に励んだ。その集大成として2冊の単著『子どもがパッと集中する授業のワザ74』『子どもがサッと動く統率のワザ68』を上梓。
2017年よりJICA青年海外協力隊員としてパラグアイへ派遣され、2年間、現地の教育力向上に努める。2019年3月に公立小学校を退職し、現職。

(構成:木村)

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