特別支援のツボ
完全実施から5年目の特別支援教育。毎月の学級で担任が注意すべきポイントをわかりやすくご紹介します。
【2月】前向きに進んでいくことができるような、1年のまとめをしましょう
全国コーディネーター研究会事務局長黒川 君江
2012/1/20 掲載

 寒いですね!! 冬は苦手です。
 次はどんな写真かなと、季節感を楽しみにめくるカレンダー。今日は、あまりの寒さにこらえきれず、思わずそっとめくって見てしまいました。3月、山々にほころぶ桜の木のいくつか…。さっと戻しながら、なんだかほっとしました。春は来るのですよね。

 まだまだ冬の盛りのような2月ですが、いよいよ学年のまとめの時期が来ています。雪の下には、春を待ちわびる命が育っています。特別支援の視点からも、子どもたち、保護者が、明るく次の学年へと進むことができる「芽」を意識して準備をしたいですね。

 この間、通級指導した卒業生たちの集いがありました。中学、高校、大学や専門学校、就職…。いつでも多くのハードルがあり、現在もなんらかの課題に直面している子どもたちです。でも、ひとり一人、確実に階段を上って成長していると感じました。何が大きいのかなと考えました。共通することは、「認められた経験」と、「支えられている実感」に基づく自己有能感だなと思います。いろいろあっても、折れないでいくには、「よく頑張っているよね」という一言、見ている人が必要なのです。

一人一人の個の成長を確認しましょう

 1年間、学級担任として、様々な指導の工夫をしてきたと思いますが、支援の必要な子どもたちも、その子なりの努力があったはずです。成長を自分自身に感じさせていくようなまとめをしてほしいです。

@ここが変わったね

 「○○ができるようになったね」と、できたこと、成長したことを、見逃していないよと伝えていく。(行動観察のメモや指導計画が役立ちますね。)

Aこんなことを思っていたね

 表に現れないことを代弁することも必要です。「〜のときに、△って考えていたよね。とてもよいことだなって先生は思っていたよ」。できてはいなくとも、結果としてまだ結びつかないことでも、心で葛藤してきたことでも認めます。自分でも分からない成長の「芽」を、気付かせていきます。

Bこれもやってみようか

 まだ、2月です。@Aと同時に、できることを見つけて、「そうだ、自分はよくやるようになったんだ」と実感させる時期です。もうちょっとの所への後押し、フォローを意識的にしましょう。

クラス全体で認め合いましょう

 支援の必要な子だけでなく、クラス全体で、「○年○組の成長したこと」「クラスメートの頑張り」「係りの活躍」「作成した作品のよさ」「世話をした草花、生き物の育ち」…などに目を向けさせ、互いに認め合って、次の学年に「共に育ち合う雰囲気」を繋いできます。  

@発表会をする

 「自分の成長」「クラスのみんなのよかったこと」を発表する機会を設けてくことも一つの方法です。自分のよさを、周りの努力を、見つけること、喜び合うことの大切さを教えていきます。同時に、教師がそれを見てきたことも伝えます。子どもたちが気付かないところを補充することで、子どもたちの見方も広がります。支援の必要な子も、個別でなくみんなの前で認められることは大きな励みになります。

A「ありがとう」を表現させる

 自分だけで存在しているのではない、関わり合い・支え合っているのだという思いを実感させるよい時期です。それぞれに褒められたり認められたりしたときは、「○さん、〜って言ってくれてありがとう」「〜って思ってくれて嬉しかったです」と言葉でも表現するようにしましょう。学年の終わりを意識させて、主事さんや専科の先生にも「ありがとう」の言葉をかける気持ちをつくります。教室、生き物も丁寧に掃除したり、世話をしたりしていくようにします。そんな気持ちを褒めて、励まします。

Bめあてづくりする

 自分を知る、クラス意識を感じることで、次への努力目標をもたせていきましょう。特に、支援の必要な子は、進級は、行動や気持ちの切り替えのチャンスでもあります。私が、春を待ちわびるように、明るい気持ちで、新学年を迎えようという気持ちづくりが大事です。あまり具体的な目標でなくていいと思います。「この学年よかったんだ、また、いい学年にしよう」という思いが抱けることです。

情報をまとめておきましょう

 保護者と話し合ってきたこと、放課後の友だち関係、苦手なことなど、学年が変わってすぐには新担任がつかめないようなことは、できるだけ簡潔にまとめておきましょう。自分が失敗したなと思ったことは忘れずに伝えます。支援の必要な子にとっては、繰り返しの悪夢になってしまいますから。保護者にも、どんなことを伝えておくとよいのか、2、3月中に、それとなく気持ちを聞いておくとよいと思います。

 さて、大震災の被災地のみなさまは、この冬のご苦労はいかばかりかと思います。どうぞ、どうぞお体に気を付けてください。春はもうすぐです。

黒川 君江くろかわ きみえ

全国コーディネーター研究会事務局長、NPO法人発達障害支援ネット「YELL」理事長、元東京都文京区立小日向台町小学校通級指導学級主任。文部科学省研究開発学校研究主任(平成13年度〜15年度、特別支援教育)。主な編著書に、『教室から伝えたい特別支援教育』『特別支援教育コーディネーターの1年 小・中学校編』(いずれも明治図書)、『特別支援教育 早わかり』(小学館)などがある。

(担当:木山)
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