特別支援のツボ
完全実施から5年目の特別支援教育。毎月の学級で担任が注意すべきポイントをわかりやすくご紹介します。
【1月】特別支援の目で、学校評価に意見をまとめていきましょう
全国コーディネーター研究会事務局長黒川 君江
2011/12/16 掲載

 年が改まり、新春のさわやかさが心に忍び込む1月。「新年」という、言葉の魔力ですね! こうした節目による気持ちの切り替えって、大切だなと思います。

 この1月を境にして、学校は次年度(24年度)へ向けて動き出します。年度末反省(学校評価)が行われ、次年度計画が出発していきます。学校評価の進め方や意見の吸い上げ方、評価項目、用紙の形式などは、地域・学校によって様々かと思います。ただ、自校の教育活動に対して、全職員の意見・反省が集まるのは同じはずです。

 次年度の教育活動が、今年と変わっていくには、この学校評価にどんな意見が寄せられるのか、どうまとめていくのかが大きいですね。特別支援の視点で、来年度の教育活動を着実に変えることができる「種子」がここにあります。学級・教科経営や授業の工夫だけでなく、学校全体の取り組みがあるといいのになと感じていたことってありますよね。実現する根拠づくりをしましょう。「自分の経験」を「みんなの意見」にするときです。

 例えば…

「5月頃、気になる子に気付いた時に、複数の目で授業や休み時間の様子を見てもらったことはよかった。その子を見るというよりは、授業を見てもらったり、友だちとのかかわりを観察してもらったりしてアドバイスをもらえた」

「このように授業や学級の子どもたちの関わりのアドバイスを受けることは大切。積極的に募集の声をかけてほしいし、授業を見合う機会を広げたらよいと思う」

「2学期は、あわただしくて、分かっていても教師側の姿勢が統一しにくい。9月初めに、特別支援の必要な子の大変さや、支援の姿勢・手立てを話し合っておいてよかった」

「次年度は、夏休みの全体研修として予定に入れておく。夏休み中の個別面談は、必要に応じて外部の方も呼んで支援会議にしていくことも考えてみたらどうか」

…などなどです。

 「特別支援教育」という評価項目がある場合は、そこで意見をいったり、書いたりすればいいと思います。それよりも大切なことは、「特別支援教育」という評価項目があってもなくても、様々な評価の項目の中で、特別支援の視点を当てて改善点を探していくことです。

 例えば…

生活指導

「休み時間が終わっても、校庭からすぐに引き上げず、遊具の片づけも徹底していなかった」という反省。

 いろいろな解決策が出ると思います。特別支援の視点からも、
「クラスや学年で互いに声をかけあう、その時の口調をぽかぽか言葉として気付かせる」
 こんな提案もできます。

校内研究

「目標設定と授業について、子どもたちの様子から客観的にみていくことで、改善点を具体的に探したい」という反省。

 これも様々な意見が出されますね。特別支援の経験を生かし、
「観察の際の抽出児童に、教室で気になる子を必ず加えておく。その子にとっての分かりやすさは、全体の子の分かりやすさにつながる。授業の流し方・教室経営のポイントにもなるはず」
 こんな意見も出せますね。

教務関係

「お互いの時間の融通でやっていたことが、忙しさに紛れてしまう。必要なことは時間を設定しておくと声をかけやすい」

 この反省、そのとおりですね。
「賛成です。年度初めの引き継ぎ時間も、30分でもとり予定に明記しておけば、その時間があることで声をかけ合うし、十分でないときは後で時間をつくる」
 こんな付け加えができますね。

 要は、学校評価のどの場面も活用できるということです。意見が出されたときはなんでもラッキー。まとめのときがポイントです。プラス日頃の特別支援の経験で大事だと思っていたことを加えていきます。次年度の方向性に特別支援からスポットを当てて、来年度の教育現場を豊かにしていきます。

 「どの子も笑顔に」そんな気持ちで、「特別支援教育の学校としてのまとめ」に取り組んでみてください。子どもたちにとって正当な意見、素直に表現してみましょう。みなさんが「なるほどな」と思ったものは、通っていくものです。

黒川 君江くろかわ きみえ

全国コーディネーター研究会事務局長、NPO法人発達障害支援ネット「YELL」理事長、元東京都文京区立小日向台町小学校通級指導学級主任。文部科学省研究開発学校研究主任(平成13年度〜15年度、特別支援教育)。主な編著書に、『教室から伝えたい特別支援教育』『特別支援教育コーディネーターの1年 小・中学校編』(いずれも明治図書)、『特別支援教育 早わかり』(小学館)などがある。

(担当:木山)
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