特別支援のツボ
完全実施から5年目の特別支援教育。毎月の学級で担任が注意すべきポイントをわかりやすくご紹介します。
【8月】校内・校外研修で教師力の幅を広げましょう
全国コーディネーター研究会事務局長黒川 君江
2011/7/14 掲載

 このコーナーでは、毎月の特別支援で大事にしたい点を書いてきました。8月は、夏季休業を活用した校内・校外研修のすすめです。

 「夏休みは、教師にとってはお休みではありません」など、分かりきったことをお固く言う向きもあるやに聞いています。誰が何と言おうとも、この長期の夏休みは、2学期の教育を豊かに実らせていく、貴重な準備期間です。私は、少し日常から離れた気持ちになって、できるだけ幅広く経験を増やし、普段の自分の指導を客観視できるように研修することをおすすめします。行事の多い2学期は、発達障害のある子にとって、ハードルの高い大変な時期です。教師側が、エネルギー満タンにして、自信をもって迎えたいですね。

 この期間にいただいたお便りを、いくつかご紹介します(文章は、若干変更しています)。

 暑中お見舞い申し上げます。
 1学期は、いろいろとご相談させていただきありがとうございました。
 黒川先生、今、カナダにいます。短い日にちしか取れないので、どうしようかと思いましたが、思い切ってやってきました。目の前に、「赤毛のアン」の世界が広がっています。
 このホテル、物音ひとつせず、窓の外は、すばらしい星空です。寝てしまうのが惜しいくらい。ふと、バックの底に忍ばせてきた本を取り上げていました。先生に勧められた本を一冊だけ、なんとなく入れてきたのです。「こんな時に何も」とも思わず読み始めました。私、本当は読みたかったのですね。涙が出てきました。先生の言葉も、この間以上にすとんと落ちました。
 心がやわらいでいること、大きな世界から自分をみつめられたことで、なんだか、素直に自分の至らなさを認めることができました。
 帰ったら、もう一度、自分の学級経営を見直してみますね。 
 カナダのこの空いっぱいの星を忘れないようにします。☆☆☆

 黒川先生
 お世話になっています。
 8月も終わりになりました。先生にご報告したくてペンをとりました。
 8月の○日に、校内研修をしました。初めての生活指導部と特別支援の共催です。この間の研修会で学んだ、発達障害の子の身になってみる模擬体験から始めてみました。その上で、各学年の気になっている子の「行動」ではなく「気持ち」に重点を置いて話し合いました。いつも職員室でも話題にしているのに、視点が違うと、意見の出方が違いました。特に、保護者の思いをそれぞれが出し合ったら、気付いていないことが分かってきました。
 2回目は、研究部と特別支援の共催研修会です。なんだか、とても楽しみになってきました。先生にお伝えしたくて…。お会いしたときにぜひ話を聞いてくださいね。

 この間の講演会ではありがとうございました。質問の時にも言いましたが、地方にいますと、なかなか自分のまわりのことでしか判断していなくて、大きな動きに鈍感になります。
 僕は、1年に1回、この夏を利用して必ず、東京や大きな都市の講演会・セミナーに行くことにしています。残念ながらほとんどが自費です。そのかわり、聞きたいこと、知りたいことに絞って探せます。今回の研修では、グループでの意見交換も多く、自分からも発信し、やり取りできたことは刺激になりました。知識だけでなく、人と出会うことも大切な学びですね。来年からはそのことも頭に入れて、自分を豊かにしてく機会を得ていきます。

 特別支援って、お互いの思いやり、そして、冷静な効果の検討…。どちらも、夏のはつらつとした自主的な研修が欠かせません。2学期を、健康な心と体で迎えましょうね。

黒川 君江くろかわ きみえ

全国コーディネーター研究会事務局長、元東京都文京区立小日向台町小学校通級指導学級主任。文部科学省研究開発学校研究主任(平成13年度〜15年度、特別支援教育)。主な編著書に、『教室から伝えたい特別支援教育』『特別支援教育コーディネーターの1年 小・中学校編』(いずれも明治図書)、『特別支援教育 早わかり』(小学館)などがある。

(担当:木山)
コメントの受付は終了しました。