教育オピニオン
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公立学校でもできる! オンライン学習を進める学校の共通項
岐阜県中津川市立加子母小学校の取り組みに学ぶ
同志社小学校長瀬 拓也
2020/5/22 掲載

1 オンライン学習をしているすごい公立小学校が岐阜県に!
 コロナウィルスの感染防止に伴い、休校が続いています。3月から休校している学校は、5月中旬の段階でおよそ70日以上学校に通っていないことになります。このような長い休校は、戦後に限って言えば、初めてのことであり、大変異例なことです。
 そうした中で、子どもたちの生活と学びを止めることなく支え続ける必要があり、全国でオンライン学習が展開されつつあります。私も校内の情報担当の先生に教えていただきながら、オンライン学習の準備や実践をする上で、様々な学校の取り組みを調べることにしました。その多くが私立の学校や先進的な研究校や附属学校だったのですが、その中に「なかなか素敵な実践をしている岐阜の公立小学校がある」と知人のSNSの情報で知ったのが、岐阜県中津川市立加子母(かしも)小学校*1でした。

2 3つの視点でオンライン学習を展開
 中津川市立加子母小学校は、私の前任校です。ローカルのテレビ番組でその取り組みが放送されたようで、その映像を見てから、「あ!前任校だ!」と驚きました。早速、加子母小学校の坂田浩一校長先生に電話し、様々なことを教えてもらいました。「私立学校のような資源は少なく、限られているが先生たちはとても頑張っているよ」とお話をしてくださいました。
 そうした話から、私は、加子母小学校には、オンライン学習における3つの視点が成立していると考えました。
 3つの視点とは、オンライン学習に関して京都教育大学附属桃山小学校の樋口萬太郎先生たちと研究会をしていたときに、学んだ視点です。オンライン学習を構築するには、

@ プラットフォームをつくる
A 動画などの学習コンテンツを提供する
B 双方向で子どもたちの意見を生かす

が必要だと考えられます。
 プラットフォームとは、課題やお知らせをする場になります。学校によっては独自のサーバーを用意したり、Google Classroomなどを活用したりすることもあります。オンラインを通して、その場に行けば、「何を学べばいいか」が分かる場所です。
 学習コンテンツの提供とは、動画を教職員で作成し、YouTubeなどにアップすることもありますが、NHK for School*2などのコンテンツを紹介することも含まれます。あくまでも自分たちで作らなくても良いコンテンツであれば問題ありません。プリントを渡すこともコンテンツの一つと言えます。
 双方向で子どもたちの意見を生かすには、Zoomなどの会議システムもありますが、メールやSNS、手紙でも可能です。ロイロノート*3と言った双方向で課題の提出と点検ができるアプリケーションもあります。
 その上で、加子母小学校は、

@小学校のホームページを活用している。…ホームページに学習課題を提示し、ダウンロードできるようにしてあります。振り返りカードも配布して、いつでも何をするかが明確になっています。
AYouTubeに教員による自作動画やNHK for School などを活用。…小学校の先生たちで自作動画を作成し、限定動画で配信したり、他の良い動画を紹介したりしています。学校再開を考え、再開するととても楽しいことがあると呼びかける動画もありました。
BZoomによる双方向の学びに取り組む…加子母小学校は当然、市立学校であり、家庭にもZoomができない環境のご家庭もあったようです。しかし、県下の企業にお願いをして、レンタルをしてもらい、地元企業がネット環境を整えることで、実現をすることができました。

に取り組むことができています。

3 加子母小学校から学ぶることはチャレンジする姿勢
 加子母小学校の取り組みは私立小学校や大学の附属小学校とも遜色違わないようなところがたくさんあります。私も実践をする上で参考になるところが多くあり、大変励みになりました。
 それは何よりも、加子母小学校の先生が子どもたちのために何ができるかを考え、一つひとつ取り組んできた積み重ねがこの2ヶ月で表れたのだと思います。ある公立の学校では、「プリントを何十枚も印刷して渡している」「教科書を見てやってきなさいと言われたが、普段の宿題もできない子がするのは苦しくて…」と言った嘆きの声を聞くことがありました。もちろん、学校現場の先生たちは必死で、今できることを考えた策の一つだと思います。しかし、ここは柔軟な発想をして、「子どもたちが家で落ち着いて、自分から学びに向かうためにはどうすれば良いかな」「子どもたちがワクワクする学びになるにはどうすればいいかな」「子どもたちと双方向のやりとりをするには何かいい方法がないかな」「学校が再開した時に来たいな、話したいなと思う学びはできないかな」と子どもたちがつながり、前向きになれるような取り組みが求められます。そして、そうした新しいことにチャレンジをして、「まずはやっていこう」とする姿勢が必要です。そして、それらを支え、背中を押す存在が坂田校長先生のような管理職の先生にも求められます。
 そして、もう一つ大切なことは、「何に」チャレンジするかです。3つの視点で言えば、「A動画などの学習コンテンツを提供する」「B双方向で子どもたちの意見を生かす」をより具体化した中身に取り組むことが必要になります。

 この数ヶ月、公立、私学、附属の先生や大学の先生たちと共にオンライン学習研究会をつくり、情報交流をしてきました。このオンライン学習会は必ずしも情報教育に詳しい先生だけではなく、私のようなオンライン学習は初めてに近い先生も交えて、「どうやって進めようか」「どんな動画作ったの」「どんな課題を出しているかな」と話し合ってきました。そうした各学校の実践を、4つの枠(情報を伝えるのに一方方向か,双方向か,オンタイムで行う同期か、オンデマンドで行う非同期か)に分類してみました。表にすると以下のようになります。

表

 A(講義型)は、一方方向で同期(ライブ)のスタイルです。講義の形式で一方的に伝え、その時間に参加しないと話が聞けないのが特徴です。例えば、Zoomを行うにしても、先生が一方的に話せばAになります。大学の多人数の講義に多いかもしれません。
 B(ビデオ視聴型)は、一方方向で非同期(ライブではない)です。YouTubeの動画やテレビの配信も録画すればいつでも見えるのでBになります。また、動画に限らず、プリントを渡して学習させることも一方方向で非同期(いつでも)だと言えます。
 C(ゼミ・ミーティング・ワークショップ型)は、双方向で同期(ライブ)です。Zoomを使った双方向のやりとりが多くの学校で始まっています。小学校の本来の授業のスタイルはこのCがあてはまります。ただ、 Zoomでのやり取りも万能ではないので、使い方に留意する必要があります。
 D(日記・ノート課題提出型)は、双方向で非同期(ライブではない)です。プリント学習も提出をして赤で返せば双方向のやりとりをしているのでDになります。ロイロノートと言ったクラウドシステムもありますが、メール、手紙なども十分Dになります。

 オンライン学習と聞くと、「インターネットがない家がある」「市内で他の学校と揃えないと」「難しそう」と言った声が大きく上がります。しかし、A B C Dのうちのどれかをはじめの第一歩として踏み出すことでオンライン学習へ前進していきます。
 例えば、いきなり、CでZoomを始めなくても、学校のホームページから課題を伝えたり、ダウンロードしたりするだけでもオンライン学習へ一歩踏み出せます。最初は不十分でも良いので一つずつ取り組んでいくことで、様々なことができるようになります。そうしたプラットフォームは、Google Classroomなどがありますが、加子母小学校のように自校のホームページを使っても可能です。ホームページあれば、アイデア次第でできることはたくさんあります。

 私学や附属、研究校のみならず、実は、知られていないだけで全国には素敵な実践をしている学校や先生が大勢いると思っています。頑張ってクラスの一人ひとりに50枚、100枚とプリントをする必要はありません。じっくりと丁寧に、できる量を考えた数枚を渡せば良いのです。その分、小学校のホームページを活用してはいかがでしょう。
 このように、肩の力を抜いて面白いことをしませんか。コロナウィルスの第2波、第3波に備え、学校への登校が可能になり始めている今こそ、オンライン学習を考えなければいけません。私が勤める同志社小学校もオンライン学習の取り組みを積極的にしています。*4ぜひ、様々な実践を交流しあい、公立、私立、国立を問わず、子どもたちのために様々な先生と繋がっていきましょう。

 最後に、余談ではありますが、前任校の加子母小学校では、総合学習で子どもたちと加子母名産のトマトづくりをしていました。ビニールハウスを借りて土づくりから収穫、販売、調理に至るまで、一年を通して子どもたちと密になって土に触れ合う実践をし、オンライン学習とは全く無縁の生活を送っていました。そこで、当時、初任者だった同僚の先生と出張先の帰りの車内の話で生まれたのが、明治図書で書かせて頂いた『ゼロから学べる学級経営』という本でした。
 加子母小学校のことを聞き、驚きと共に、大変懐かしく、嬉しく思い、浮かんだのが「ゼロから学べるオンライン学習」というタイトルでした。坂田校長先生をはじめ、加子母小学校の皆さん、ありがとうございました。

【注】
*1 岐阜県中津川市立加子母小学校ホームページhttp://www.city.nakatsugawa.gifu.jp/kyouiku/kashimoes/
*2  NHK for School
https://www.nhk.or.jp/school/
*3 ロイロノートについてはこちらを参考
https://n.loilo.tv/ja/
*4 同志社小学校でもオンライン学習の取り組みをしています。ホームページで知ることができます。
https://www.doshisha-ele.ed.jp/

長瀬 拓也ながせ たくや

1981年岐阜県生まれ。佛教大学教育学部卒業、岐阜大学大学院教育研究科修了。横浜市立小学校、岐阜県公立中学校、小学校を経て、現在は同志社小学校教諭。主な著書に、『ゼロから学べる学級経営―若い教師のためのクラスづくり入門』『ゼロから学べる生徒指導―若い教師のための子ども理解入門―』『ゼロから学べる授業づくり
―若い教師のための授業デザイン入門―』
『ゼロから学べる仕事術―若い教師のための働き方入門―』(以上、明治図書)などがある。

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