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社会科授業の達人(11)
【ジグソー学習】どうする?買い物難民!
立命館大学非常勤講師河原 和之
2021/4/20 掲載

授業のねらい―社会的な見方・考え方を鍛えるポイント

  • 公民

「少子高齢社会」の到来と「限界集落」の進行は、「生きる」基本である「衣食住」がままならない“買い物難民”を生みだしている。今回は、ジグソー学習による「買い物難民」問題の実践事例を紹介する。
(註:対象は、大阪商業大学「社会科公民科教育法」受講者12名である)

1 「買い物難民」学習

 導入はクイズである。

〈クイズ〉
○流通機能や交通網の弱体化とともに、食料品等の日常の買い物が困難な状況に置かれている人々が全国に何万人いるか?
 ( )00万人
○全国の過疎集落は63237か所。そのうち75歳以上の後期高齢者の占める割合が50%以上なのは3676集落。75歳以上が100%の集落は全国に何か所あるか?
 ※( )は同じ数字
 ( )( )9か所
○「世帯の中で車を運転する人がいるか」という質問では、65歳以上では74%、75歳以上では48%だが、一人暮らしの女性で「運転しない」と答えた人は何%か?
 ( )4%

 答えは「700万人」「339か所」「84%」。大阪府の人口よりやや少ない程度の“買い物難民”が存在し、後期高齢者のみの集落も多く、一人暮らし女性では、買い物に行く手段がないことを確認する。

2 証言から考える買い物難民

 3つの事例を紹介する(要旨)。

中山間地の買い物難民 80代の女性
 昔は歩いて行ける店が3〜4軒あったが、もう何年も前に一軒も無くなってしまった。
ニュータウンの買い物難民 80代の夫婦
 郊外の団地に暮らしている。造成された当時は、学校も駅もできる予定と聞いていたが、できたのはスーパーだけで、それも昔に閉店した。
町中の買い物難民 80代の女性
 家からスーパーまでは150mほどしか離れていないが、最近は足が痛くて家の周りしか歩けない。スーパーは近すぎてタクシーも頼めない。ヘルパーさんに買い物を頼んでいたが、最近は……。

3 解決方法エキスパート

 4人グループ(今回は全体人数の関係で3人)に分かれ、以下の分担をする。

A 店への交通手段の提供(タクシー、バスなど)
B 近くにお店をつくる(地域住民や行政によるミニスーパーなど)
C 家まで商品を届ける(買い物代行、宅配、ドローンなど)
D 移動販売(軽トラックで家の近くなどに買い物の場をつくる)

4 エキスパート項目について調べる(ネット利用)メモ事例

 エキスパート担当による10分程度の調べ学習を行う。

A 買い物支援の無料バス。乗用車の相乗り。
B 週に1度、日替わりで町のスーパーなどが出店する。スーパーと併存したガソリンスタンドを設置。行政が無償で店舗の建物や土地を貸与。NPO団体によるスーパーの運営。
C 格安料金の買い物代行。宅配代行「出前館」。ドローン配送。カタログで必要なものをチェックしてもらい、指定した場所に時間通り届ける。
D 玄関先まで直接訪ねて食品を販売。国の援助でコンパクトシティーを造成。農家が規格外の作物を格安で販売。移動自販機。スーパーの取組の一つとしてのサービス。4Gによって開発された無人タクシーの提供。町内一斉買い物。電動車椅子の支援。

5 エキスパート会議

 エキスパートA〜Dに分かれ、プレゼンを1人2〜5分程度行う。以下の資料を配付し参考資料とする(会議内容は略)。

A タクシー・バス利用への補助、デマンドタクシー・デマンドバス
B 地域住民によるミニスーパーの運営
C ドローン宅配の実験
D 「軽トラックに1000点の商品」「とくし丸」

写真@

6 グループ会議

 元のグループに戻り、エキスパート会議で学んだことを報告する。

≪事例1≫
 複数の人々との、バスによる買い物により時間が短縮できる。マッチングタクシーという運転できる人とできない人が共に買い物を行い、その費用は公費で負担。
≪事例2≫
 企業や地方自治体が閉店した土地を無償提供し商品を販売。地域の高齢者と子どもが集まるイベントの開催。大型商業施設をつくり経済を回す。農家が直接格安で農作物を販売。コンパクトシティーをつくり移住する。

写真A

7 買い物難民をなくす

 以上の交流から学んだことを参考に提言を書く。

≪提言1≫
 町内でバスを用意し、まとまって買い物に行く。数時間に1本のバスがない過疎地においても活用できる。トラックを改造しスーパーにする。職員は運転手1人でいいので人件費を削減でき、トラックで売れ残ったものを別のスーパーで販売できる。こうして経済が循環していく。デメリットとして天候に左右されることがある。また週に1回なので、まとめ買いができるよう品数を充実させる必要がある。インターネットを利用できない高齢者のために宅配を電話でできるサービスがある。それにより宅配者と高齢者との間にコミュニケーションが生まれる。
≪提言2≫
 3つの方法を考えた。第一に、店への交通手段である。町で当番を決めそれぞれの曜日や時間に買い物に行く方法である。メリットは、無駄な時間を短縮できることである。第二に、家まで商品を届ける宅配である。インターネット利用の困難な高齢者が事前に手渡されたカタログから電話予約し、指定場所まで取りに行く方法である。これにより地域の人とのコミュニケーションも可能である。第三に、移動販売である。移動スーパーを各地で開店し、消費者の玄関先まで直接販売する。メリットは、地方スーパーとの連携で地域活性化が図れることである。ただ、国や地方自治体の援助やサポートが不可欠である。

イラスト

8 おわりに

 ジグソー学習は他者との対話から深い学びへとつながる有効な授業方法である。だが、学習意欲や学力差がある現状では、「切実性」「当事者性」のあるテーマ設定が前提で、テーマが難しい場合は“その気にさせる”「しかけ」が必要である。ジグソーは、各自が多様な観点から分析する学習なので、視点が4つ以上ないと深まらない。また「興味・関心・意欲」「資料検索能力」や「思考力」には“ちがい”がある。「ちがい」を「豊かさ」に転換し「異見」を生かした学習が不可欠である。

【参考文献】
村上稔『買い物難民対策で田舎を残す』(岩波ブックレット)

河原 和之かわはら かずゆき

 1952年京都府木津町(現木津川市)生まれ。関西学院大学社会学部卒。東大阪市の中学校に三十数年勤務。東大阪市教育センター指導主事を経て、東大阪市立縄手中学校退職。現在、立命館大学、近畿大学他、6校の非常勤講師。授業のネタ研究会常任理事。経済教育学会理事。NHKわくわく授業「コンビニから社会をみる」出演。
 月刊誌『社会科教育』で、「100万人が受けたい! 見方・考え方を鍛える中学社会 大人もハマる最新授業ネタ」を連載中。
 主な著書・編著書に、『100万人が受けたい! 見方・考え方を鍛える「中学社会」大人もハマる授業ネタ』シリーズ(地理・歴史・公民)『続・100万人が受けたい「中学社会」ウソ・ホント?授業』シリーズ(地理・歴史・公民)『スペシャリスト直伝!中学校社会科授業成功の極意』『100万人が受けたい「中学社会」ウソ・ホント?授業』シリーズ(地理・歴史・公民)『100万人が受けたい! 主体的・対話的で深い学びを創る中学社会科授業モデル』(以上、明治図書)などがある。

【イラスト】山本松澤友里

(構成:及川)

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