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本書は、著者である中学校の先生方が日々生徒と向き合い実践を重ねる中でつかまれた「主体的・対話的で深い学び」となる授業づくりの手だてと実践のスキルを紹介したものになっています。読者の皆様には、教師としてのキャリアステージや授業改善に向けてのご自身の課題意識に即して、本書に示された各分野・各単元の授業展開や評価の仕方を参照しつつ、「自分ならどうするのか」と常に問いかけながら授業の構想、実践、改善に取り組んでいただくことを期待したいと思います。
生徒が主体的に学習を進めていくための支援者としての教師の言葉かけは、生徒との対話を促すものでなければなりません。「なぜその問いを立てたのか」「課題解決のためにあなたはどう考えたのか」「あなたの考えの良さはどこにあると思うか」「つまずきをどうすれば解決できると思うか」など、生徒の考えを引き出したり、生徒につまずきを乗り越える手だてを説明させたりするような言葉かけが大切であると思います。
ICTは、社会科学習における生徒の主体的な問題解決を支援するために活用されねばなりません。例えば、タブレット端末等のICTを活用して、前の単元での学びの履歴をデジタルデータとして蓄積しておき、それらを振り返ることで本単元の目標や学習問題を設定する。問題追究の過程では、考察に必要な資料あるいは考察の方法を共有し、その妥当性を生徒相互で議論する。学習のまとめでは、考察の結果を整理したり、クラスに、あるいは広く社会に分かりやすくプレゼンテーションしたりする学習を展開できるでしょう。
生徒が主体的に学習することを通して、単元の目標をどの程度まで達成したのかを見取るためには、ペーパーテストによる総括的評価に頼るだけではなく、ワークシートへの記述や発言、ノートやレポート、作業的活動とその成果を示した作品、発表等、多様なツールを用いて形成的評価を充実させる必要があります。また、教師による評価活動だけでなく、子どもの自己評価や相互評価を促すツールの開発も求められます。
新しい学習指導要領を踏まえて、思考力・判断力・表現力育成の授業への転換やアクティブ・ラーニングの推進等、その理念や理論については各種の研修や書籍等を通じて周知が進んできていると思います。今求められるのは、実践の場にある先生方が主体となり、今ここに在る学校・クラスの、ここに居る生徒たちのために自分なりの手だて(理論)を持って授業をつくり実践し、評価・改善していく継続的な取り組みであると思います。本書が、授業改善に向けた学校現場からの実践の発信を促す契機になることを願っております。