著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
変化の大きなときだからこそ、教務主任の仕事はやりがいにあふれている!
大阪市公立小学校丸岡 慎弥
2021/12/20 掲載
 今回は丸岡慎弥先生に、新刊『教務主任 365日の仕事大全』について伺いました。

丸岡 慎弥まるおか しんや

1983年、神奈川県生まれ。三重県育ち。三重県皇學館大學卒業。大阪市公立小学校勤務。教育サークルやたがらす代表。関西道徳教育研究会代表。NLPやコーチングといった新たな学問を取り入れて、これまでにない教育実践を積み上げ、その効果を感じている。教師の挑戦を応援し、挑戦する教師を応援し合うコミュニティ「まるしん先生の道徳教育研究所」を運営。自身の道徳授業実践も公開中。著書に『高学年児童がなぜか言うことをきいてしまう教師の言葉かけ』『2・3・4年生がなぜか言うことをきいてしまう教師の言葉かけ』『話せない子もどんどん発表する! 対話力トレーニング』(以上、学陽書房)『2時間でわかる学級経営の基礎・基本』『2時間でわかる授業技術の基礎・基本』(以上、東洋館出版社)『取り外せる文例集つき! 現場発! 小学校「特別の教科 道徳」の見取り・評価パーフェクトブック』(フォーラムA企画)、『ココが運命の分かれ道!? 崩壊しない学級づくり 究極の選択』(明治図書)など多数。

―子どものころ、「教務主任」という先生が学校にいらっしゃることを知りませんでした……。いまあらためて、教務主任って、何をする先生か教えてください!!

 教務主任とは、学校の何でも屋さんです(笑) 子どもたちは、いつも教室にいる先生とふれあうことが多いので、学級担任の先生に意識が向いており、「あの先生は何をしているんだろう」と思っている子も多いことと思います。しかし、そのイメージも「何でも屋」の教務主任であれば、自分で作り出すことができます。私は、ある休み時間、教科書を借りようと4年生の教室に行きました。「教科書を貸してくれる?」と、ある子に訪ねると「先生、また授業に来てくれるの?」という返事が返ってきました。私は、本当に教科書を借りるだけの用事だったので「ううん、今回は違うんだ」と言うと「なんだぁ、来てほしかったな」と答えが返ってきました。
 これは、私が普段からあちこちで、道徳などの授業に出掛けていたから生まれたエピソードであると思っています。
 もちろん、いつも前に出るばかりではありません。教頭先生や担任の先生の補佐をしたり、学校行事の先頭に立ったり、学校の簡単な修繕をしたりします。
 つまり、本当に何でも屋であり「自由人」であると私はとらえています。

―時には前に出て、時には後ろに下がって、様々に学校をサポートするのですね! 本書では、教務主任の3つの柱として、「学校全体をまとめる」こと、「学校全体を支える」こと、「良きリーダーとなる」ことを挙げていらっしゃいます。とりわけ、良い教務主任に必要な力とはなんでしょうか。

 ずばり「調整力」です。仕事を引っ張る上ではリーダーとなりますし、担任の先生の支援になるならサポーターです。またまた、担任の先生などの苦労を分かち合うならカウンセラーとしても動くことがあります。その時その場その人に応じて、もっとも最適な答えを出し続ける必要があります。その際には、いつも「学校の発展のために」という目的に向かいつつ答えを出さなくてはいけません。教務主任は、様々なキャラクターをこなす必要があります。だからこそ、「調整力」が必要なのです。

―Chapter3では、教務主任の仕事術についてまとめてくださっていますね。教務主任ならではの仕事のポイントはありますか?

 教務主任の仕事術はずばり「把握」することです。では、何を把握すればいいのか。私は、「予定」「資源」「人」だと思っています。
 まずは「予定」把握。担任時代は自分の学級、学年の予定さえ把握すれば、おおむねそれで十分ですが、教務主任となれば常に学校全体の把握をし続けなければなりません。また、把握だけでなく、企画していくことも含まれます。職員会議などの日程を決める側に回るのです。その点からも「予定把握」は、欠かせません。
 さらには「資源」の把握です。学校に何があるのか、何が足りないのか。担任の先生が実は知らない○○はどこにあるのか。また、時には「どんなお金をどれくらい使うことができるのか」、そんな「資源」の把握も大切になります。
 最後に「人」の把握です。ここでは、子どもや保護者といいたいところですが、もっとも大切なのは、先生方の状態把握です。今、業務量は重くのしかかっていないか、保護者や子どものことで心配なことを抱えていないか、そんなことにも意識を向ける必要があります。学校は子どもたちの力をつける場。子どもたちの力をつける先生方に元気がなければ、到底良い学校などできません。先生たちの様子もしっかりつかんでいきましょう。

―丸岡先生が教務主任をされるなかで、特に苦労されたことなどはありますか? また反対に、教務主任をやっていてよかった!というエピソードがあれば教えてください。

 教務主任をしていてもっとも辛かった経験は、初めての教務主任として迎えた運動会でした。運動会といえば、ダンスなどの表現運動。子どもたちの練習の成果や先生方のそれまでの取り組みが1日の中にぎゅっとつまったイベントとなります。それまで高学年担任を多くもってきた私にとって、初めての教務主任としての運動会は、孤独との戦いでした。当日が近づくにつれ、各学年の雰囲気はうんと高まってくる。それと同時に私は、裏方の仕事に徹する。もちろん「これまでの教務主任さんはこんなことをしてくれていたんだ」という発見や感謝にもつながりましたが、本音をいうと「さびしいなぁ」と思っていました。打ち上げでは(まだコロナ前のことです)、みんなの話に入ることができませんでした。
 もちろん、この出来事は、私が教務主任として甘かったからこそ生まれたエピソードです。教務主任の醍醐味は、すべての先生方や子どもたちと関わることができることです。教務主任の影響は、間違いなく学校全体へと広がっています。そして、その花咲く時期は2〜3年経ってからですので、その実感は得にくいかもしれません。
 だからこそ、私も教務主任3年目には、先生方の大きな成長場面を何度も見ることができました。この醍醐味は、学級担任では味わうことのできない大きな経験だととらえています。

―最後に、初めて教務主任になった・教務主任の仕事をもっと極めたい・教務主任を目指してみたい…そんな読者の先生方に向けてメッセージをお願いします!

教務主任が変われば先生が変わる。
先生が変われば学校全体が大きく変わる。

 私は、教務主任の醍醐味をこのようにとらえています。学級担任時代のノウハウや教育観を活かしつつ、ぜひ教務主任として大いに発揮してください。良い学校には良い教務主任が必ずいます。
 ともに、より良い学校をつくっていきましょう!!

(構成:林)

コメントの一覧
1件あります。
    • 1
    • 長野
    • 2021/12/21 6:22:14
    私も勉強させてもらいます!
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