著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
1人1台端末時代に求めたい「直接体験の充実」と「仲間との豊かな関わり」
東京学芸大学鈴木直樹
2021/7/13 掲載
 今回は鈴木直樹先生に、新刊『ICT×体育・保健体育 GIGAスクールに対応した授業スタンダード』について伺いました。

鈴木 直樹すずき なおき

東京学芸大学大学院修了。博士(教育学)。公立小学校に9年間勤務後、2004年から埼玉大学、2009年より東京学芸大学で勤務している。2008年にはニューヨーク州立大学コートランド校、2017年にはメルボルン大学で客員研究員として体育でのICT利活用に関する研究に取り組んだ。体育の学習評価研究を中心にしながら、体育教師教育の研究、子供中心の体育の実践研究、体育におけるICTの活用や遠隔体育に関する研究に学校教員や企業と連携して取り組んでいる。著書『8つのポイントで運動大好きの子供をつくる!体育授業のICT活用アイデア56』『教師と子どものための体育の「教科書」』低中高学年全3巻他多数。

―体育授業にICTを取り入れると、ズバリどのようなメリットがあるでしょうか。

 授業における教師と子供、子供間のコミュニケーションが変わります! そして、個別最適化した公正な学びを実現することができるようになります。その為に、テクノロジーの特性を十分に理解し、それを適切に活用していく必要があると思います。ICTを上手に使うことで、Society5.0時代の教育を実現することができ、次世代を支える子供たちを支える学習と指導になっていくことができます。

―体育では、動きを撮影して確認する、という形でのICT活用が多いですが、本書第2章では、「体育用アプリ」「VR」「メディアポートフォリオ」「遠隔体育」と様々な活動を紹介くださっていますね。1人1台端末時代、「撮影してチェック」の次の段階として、まずは何から始めるとよいでしょうか。

 私は25年以上前から体育で「撮影してチェック」する実践に取り組んできました。しかし、「動きを対象化して分析する」使用方法は、技能中心の授業づくりを助長し、全ての子供たちが運動の楽しさや喜びを享受する授業には繋がらないと思っています。そこで、1人1台時代に求めたいのは、運動の楽しさ・喜びへアクセス可能にさせることと、仲間と協働しながら学ぶ多様な学習方法の実現です。そこで、「直接体験を充実させる」ための使い方と「仲間と豊かに関わる」ための使い方からスタートすれば良いと思っています。そのヒントが、この書籍にはたくさん詰まっています。

―最近、VRへの注目が高まっていると伺います。本書でもVRの取り組みが紹介されていますが、体育でVRを活用する魅力は何でしょうか。

 体育では、三人称視点から自らの運動を評価することによって「めあて」を設定することが少なくありません。しかし、「心と体を一体として捉える」ことを大前提とするならば、一人称視点から目指すべき動きの感覚を経験し、その経験で感じた感覚と自分が実際に動いた感覚のズレから「めあて」を設定し、問題解決していくことを目指したいものです。VRは、そのような学びを実現してくれる大きな可能性のある注目すべきテクノロジーといえます。

―先生は、教師だけでなく企業も積極的に参加している「体育ICT研究会」でも活動されていますね。どのような研究会かご紹介いただけますか。

 私たちは、未来の体育を支えていくツールとしてICTを効果的に利活用する為に、実践者・研究者・企業が協働して研究に取り組んでいます。基本的には、月に1回定例会を実施しながら、複数の研究部会に別れて活動を進めております。現在は、「遠隔体育」「VR」「AI」「メディアポートフォリオ」「デジタル教科書」「新体力テストアプリ」「新技術(ARやドローンなど)」の部会に分かれて活動しています。北は北海道から南は九州まで、そして海外の研究者も加わり、実践的な研究に取り組んでいます。書籍を読んで興味をもってくださいましたら、ict.pe.sport@gmail.comまでお問い合わせ頂ければ幸いです。

―最後に、全国の先生方に向けメッセージをお願いします。

 1人1台情報端末の導入が「教師の負担感」を醸成してしまっているようにも感じています。しかし、実際には、ICTが浸透していくことで、同僚間での情報共有も進み、より効率的に仕事もできるようになり、教師の働き方を改革していくはずです。教師の負担を減らしながら、より良い教育にしていく為にも、まず「使ってみよう」という気持ちで子供達と共に活用の仕方を探求してもらえれば良いと思います。本書がそのきっかけになると良いと思っています。

(構成:木村)
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