- 著者インタビュー
- 学級経営
「むずかしい学級」を担任することがわかったら、すぐに手に取っていただきたい本です。「むずかしい学級」を担任する際に留意すべき考え方から、学級経営、授業運営の具体的な進め方、そして「困った!」を解決するヒントまでが、たっぷりと書いてあります。1年をはじめるにあたって、まずはこの本を最初に手に取っていただけると、指導に見通しを持っていただけると思います。
「学びのユニバーサルデザイン(UDL)」の特徴は、「オプション(選択肢)」が「足場的支援」としての性格をもって提供され、それが子どもの状況によって「調節可能」であるということです。こうした考え方を学級経営に転用して、モデル化したものが「学級経営の公園モデル」です。このモデルによって運営されている学級では、子どもたちは安心して活動に取り組み、多くのことに挑戦しようとします。
何のために学級で過ごし、担任は一体何のために教室にいるのかということを、子どもたちが説明されることは、これまでほとんどありませんでした。この点を子どもたちに明確に説明した上で、目的を持って学級で生活することを、子どもたちに奨励します。その上で、目的を達成するために、子どもたちが様々な活動や、活動の仕方を選べるように環境を整えるというのが、「学級経営の公園モデル」の大切な部分です。子どもたちが、自分たちでどんどん動き出します。
まずは、子どもたちに対する教師の見方を変化させることです。「子どもたちは、すぐに学ぶことから逃走する」とは考えずに、学ぶ目的をはっきりと提示し、子どもたちが学習に取り組めるようなオプションを用意すれば、子どもたちは必ず学べるようになるのだと信じることです。その上で、子どもたち自身が、自分で学びやすい方法を選ぶことを支援していくことが大切です。自分が選んだ方法で、成功した子どもはどんどん自分で学ぼうとするようになります。
一番、いま問題なのはコミュニケーションが少ないことによる「教師−子ども」「子ども−子ども」の関係不全です。信頼が十分でないから、指示が通らない、指導も通らない、ルールも徹底できない。逆に、指示が通らない、指導も通らない、ルールも徹底できないから信頼も生まれないということが、多くの教室で起きています。それを、改善するフレームの一つが「学級経営の公園モデル」です。公園では、誰かの一方的な指示によって遊ぶことはありません。「何のために」「何を選んで」「どんなふうに」遊ぶのかを、他者とコミュニケーションしながら決めていきます。コミュニケーションが少ない今だからこそ、教師の一方的な指示によって決めてきたことを、コミュニケーションをとりつつ、子どもたちが自分で選ぶようにしていきましょう。確かに、それはコストのかかることですが、そこにコストをかけることでしか、教室での関係不全は解消できないでしょう。
本書は、書名の通り「ビルドアップ」を意識して書きました。そのため、学級経営初期の指導について、特に詳しくまとめました。新年度スタート前に、ぜひお読みください。前著の「リカバリー」と合わせてお読みいただくことで、「学級経営をブラッシュアップしたい!」と考えている先生方の1年間の羅針盤となると信じています。
【参考】川俣智路(2020)「学習支援から学習者の発達支援へ」『指導と評価』vol.66-2 782,pp.9-11