- はじめに
- 第1章 「むずかしい学級」の担任15の心得
- 1 求められるのは,マイナスをプラスにする仕事ではない
- 2 解決可能なことしかめぐってこない
- 3 学級の来歴を知る
- 4 理想を捨てる
- 5 「荒れ」は,学習によって獲得されたもの
- 6 秒単位で成果を積み重ねる
- 7 「うまくいかない現実」は「変わりなさい」という合図だ
- 8 技術の有効性はかけ算である
- 9 環境修復が第一手である
- 10 最終ゴールを設定しない
- 11 人から学んではいけない
- 12 変えるのではなく取り除く
- 13 正攻法は内側にある
- 1 学級成員の構成要素はどうなっているのか
- 2 「むずかしい学級」になるのはなぜか
- 3 どうアプローチすればよいのか
- 4 うまくいかない場合もある
- 5 自分の学級の子どもたちにフィットするかを試す
- 14 子どもの尊厳を傷つけてはいけない
- 15 誰かのせいにする,涙も流す
- コラム1 明日できる仕事は,今日しない
- 第2章 「むずかしい学級」効果10倍の教科指導
- 1 授業の構造を子どもたちに合わせる(国語編)
- 1 フラッシュカードで「見ること」を教える
- 2 読み聞かせをする
- 3 音読指導で挑戦する心を培う
- 4 「ちょっとだけ読解」で「意欲が高い子」たちを活躍させる
- 5 漢字学習で「できる」を実感させる
- 2 授業の構造を子どもたちに合わせる(算数編)
- 1 授業のパターンを大きく変えない
- 2 前提となる知識・技能について確認する
- 3 教科書の例題を何度も読む
- 4 一人で解く
- 5 みんなと解き方を確認する
- 6 全体で解き方を確認する
- 7 練習する
- 8 ふり返る
- 3 小さな成功体験を積み上げる
- 1 「努力すれば報われる経験」を積む
- 2 「よい授業」をすれば,「よい点数」を取れるわけではない
- 3 単元テストの平均点100点を目指す
- 4 つながって学ばせる
- 1 まず伝え方,関わり方を教える
- 2 抵抗感の少ない活動から指導する
- 3 教科指導に応用する―音読指導を例にして
- 5 細切れに指導する―漢字テストを例にして
- 6 「できない子がいる」をデフォルトにする
- 7 その子に合った方法を選択させる
- 第3章 「むずかしい学級」効果10倍の生活指導
- 1 子どもの言葉を解釈する
- 1 「暴言」に対処する
- 2 「不適切な行為」に対処する
- 3 友人間のトラブルに対処する
- 2 向き合わないで指導する
- 3 がんばろうとしていることを認める―思い通りにいかないとパニックになる子
- 4 困り感に寄り添う―うそをつく子
- 5 できるふりをしないことをほめる―学習が苦手な子
- 6 自分たちで解決方法を考えさせる―けんかが絶えない子
- 7 目から自分たちの姿を入れる
- 8 ほめることは危険を伴う
- 9 明確な目標を立てる
- 10 教師の権威を確立する
- コラム2 今年一年,悪い人になろう
- コラム3 仕事を分散してもらおう
- おわりに
はじめに
1990年代後半,いわゆる「学級崩壊」が問題になり出したころ,「子どもが変わってきた」や,「子どもは変わっていない。適切に指導すれば,本来の子どもの姿に戻る」というようなことが言われた。
前者は,現在の学校システムでは,子どもを育てにくくなってきたということを全体として言っていて,新しい教師の関わり方や学校システムの改善を主張していた。
後者も,結局子どもへの適切な指導や関わり方の重要性を説いてはいたが,一方でそれらができない教師たちを,批判し,追い込み,「できる教師」と「できない教師」を峻別することになった。
さて,現在,学校という場において子どもを育てることのむずかしさを否定する現場教師は,まずいないだろう。教師の多忙や同僚性の特徴も相まって,学校は「むずかしい職場」になってしまった。
様々な支援を必要とする子どもたちが教室にいて,その背後に様々な価値観で子育てをしている保護者がいる。
そうした様々なニーズに応じられないとき,「学校はそういうところではない。みんなと一緒に合わせることを学習するところだ」と言ってみたところで,どこか唇寒い。
社会は多様性を認める方向へと進んでいるし,そうすることでしかこれ以上の社会発展が望めないからだ。
そんな中,今日も苦しんでいるのは,同一歩調で指導を進めようとする古い学校システムの中で,様々な子どもと向き合っている担任教師である。
しかも,その学級担任は経験が少なく,若い場合も少なくない。今,学校は教員の年齢構成から,若い教師たちで溢れつつある。経験の浅い教師が,「むずかしい学級」を任せられることになる。はじめから,かなり苦労することが予想できる。
いや,若いから苦労するというわけではない。そもそも,1990年代後半からはじまった「学級崩壊」という現象は,ベテランの,しかもそれまで有能と評価されてきた教師たちの学級でも起きることが特徴だったではないか。
採用直後の初任者や異動直後の事情がわからない教師が,「むずかしい学級」を担任させられることも多いと聞く。そうした学校には,組織として疑問を感じるが,残念ながらこれが現実なのだ。
そうした厳しい状況の中で「むずかしい学級」の担任になった先生方に,ぜひ本書を手に取ってもらいたい。
はっきりと言おう。
これからの数か月は,本当に苦しい思いをするに違いない。
しかし,必ず出口はあるし,成果があがるアプローチのポイントもある。
それを本書で,いくつか示したつもりである。
本書では,具体的な手立てや場面を描写しつつも,なぜその場面で,その方法が効果的なのかという理由も示した。
そのことによって,描写した場面でだけではなく,「あなたの教室」でも役立つ汎用性を担保したつもりである。
苦しく,不安な状況だとは思うが,ぜひどのページからでも本書を開いて欲しいと思う。
そこに,今のあなたにもっとも必要な「ことば」があるかもしれない。
/山田 洋一
筆者の温かい人柄に励まされるように、最後まで一気に読ませていただきました。参考にして、また笑顔で教室に向かいたいと思いました。
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