著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
学級経営に成功する教師が持っているもの
上越教育大学教職大学院教授赤坂 真二
2020/3/6 掲載
 今回は赤坂真二先生に、新刊『学級経営力向上シリーズ 学級経営大全』について伺いました。

赤坂 真二あかさか しんじ

1965年新潟県生まれ。上越教育大学教職大学院教授。学校心理士。19年間の小学校勤務では、アドラー心理学的アプローチの学級経営に取り組み、子どものやる気と自信を高める学級づくりについて実証的な研究を進めてきた。2008年4月から、即戦力となる若手教師の育成、主に小中学校現職教師の再教育にかかわりながら、講演や執筆を行う。
『クラスを最高の笑顔にする!学級経営365日 困った時の突破術』低学年編・中学年編・高学年編(2020)、『アドラー心理学で変わる学級経営 勇気づけのクラスづくり』(2019)、『資質・能力を育てる問題解決型学級経営』(2018)、『最高の学級づくり パーフェクトガイド』(2018、以上明治図書)ほか、著書・編著書多数。

―本書は、ベストセラーとなっております『アドラー心理学で変わる学級経営 勇気づけのクラスづくり』に続く単著となりますが、まず、今回の書籍のねらいと読み方について教えてください。

 学級づくりに関する書籍は、1980年代から増加し、今は優れた学級づくりの方法論が世に出されています。しかし、一方で、それらを支える考え方が充実しているかというと、そうとは言えない状況です。方法・道具の力を引き出すのは考え方です。たくさんの優れた方法があるにもかかわらず、解決しない問題があるのは、その問題が技術的な問題ではないことを示しています。本書は、敢えてそうした技術論とは一線を画し、学級経営の考え方を中心に示しました。本書で示す考え方は、みなさんがもっている技術を有効に働かせてくれるはずです。

―本書の冒頭でも赤坂先生が触れていらっしゃいますように、近年(2000年代に入り)、様々な問題が顕在化してきました。その中でも「学級崩壊」は、現在も、はっきりした形ではない「静かな学級崩壊」なども含め大きな問題となっていますが、この原因はどのようなところにあるのでしょうか。

 「静かな学級崩壊」の理由を一つに決めるのはとても複雑です。仮にその理由を「意欲の低下」とするならば、学級環境はそれと大きく関わっていると思います。近年、人は、心理的安全性が保障されたときに意欲的になると言われるようになりました。「静かな学級崩壊」をしているクラスは、心理的安全性が損なわれている可能性があります。教室内に、ルールや信頼関係を築き、安心して話したり行動したりできる環境をつくることが大事です。

―「なぜ、あなたのクラスは落ち着かないのか」――ドキッとするような項目が3章には並んでいますが、方策の一つとして挙げられています「コミュニケーションの量を増やし、質を高める」には、どのようなことが大切でしょうか。本書でも詳しく解説いただいていますが、教えてください。

 コミュニケーションというと、すぐに「対話」や「言語活動」といったワードが思い浮かびます。間違っていないと思いますが、それらの教育活動の前提に「おしゃべり」をしているのかが問われます。何もないところに人と人との信頼は生まれません。まずは、楽しくおしゃべりができるかどうかが、スタートです。

―4章では、具体的な授業の様子を挙げていただきながら、「教科指導での学級経営」についてまとめられています。学びの環境づくりとしての学級経営には、どのような取り組みが必要でしょうか。

 詳しくは本書をお読みいただきたいと思いますが、効果的な教育活動をしている教師は、教科指導が学級経営になっているということです。競争原理で授業をつくる人と協同原理で授業をつくる人では、根本的な考え方が違うので育つ子どもの姿が異なります。前者は、クラスメートを競争相手と認識し、後者は協同のパートナーとして認識することでしょう。取り組みの前に、自分の願いを確かめることから始めてはいかがでしょうか。

―本書では荒れへの指導についても、詳しく解説いただいています。「いじめの芽」を育てるクラスと摘み取るクラスの、大きな違いは何でしょうか。また、「いじめに強いクラス」に育てるには、どうすればよいでしょうか。

 それも教師の考え方と関わっていて、いじめにつながると考えられる小さな人権問題(いじめの芽)を、単なる問題行動とするか貴重な教育の機会とするかという教師の考え方によります。子どもたちの道徳的実践力は、クラスの雰囲気に影響されるといいます。「いじめに強いクラス」を育てるには、いじめを許容しないクラスの雰囲気をつくりながら、小さな人権問題を見逃さず「クラス全員」に考えさせる機会をもつのがよいでしょう。

―最後に、読者の先生方へ、メッセージをお願いいたします。

 学級経営の改善は、もっとも現実的な「働き方改革」です。楽しくやりがいがあったら、多少勤務時間が延びようが「ブラックだ」とは思わないはずです。学級がうまくいっていったら、子どもたちとの感情的な問題や生徒指導、保護者対応に費やす時間が減ります。学級経営のようなネットワークの中から生まれる課題は、特効薬がありません。いくら方法論を投入しても解決しないのです。それよりも、基本的な考え方を知り、それをみなさんが置かれた状況の中で活用、応用をした方がずっと効率的だと思いませんか。本書は、みなさんの学級経営の指針となることを願って書きました。一読していただけたらありがたいです。

(構成:及川)

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