著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
あなたらしい視点で、心に響く道徳授業を
北海道旭川市公立小学校宇野弘恵
2019/7/26 掲載
 今回は宇野弘恵先生に、新刊『宇野弘恵の道徳授業づくり 生き方を考える!心に響く道徳授業』について伺いました。

宇野 弘恵うの ひろえ

1969年、北海道生まれ。旭川市内小学校教諭。2002年より教育研修サークル・北の教育文化フェスティバル会員となり、思想信条にとらわれず、今日的課題や現場に必要なこと、教師人生を豊かにすることを学んできた。現在、理事を務める。
『タイプ別でよくわかる! 高学年女子 困った時の指導法60』(単著)、『スペシャリスト直伝! 小1担任の指導の極意』(単著)、『小学校低学年 学級経営すきまスキル70』(編著)、『小学校低学年 生活指導すきまスキル』(編著)、『学級を最高のチームにする!365日の集団づくり 2年』(共著、以上明治図書)ほか、著書・編著書多数。

―本書は、「道徳授業改革シリーズ」の第2弾として、宇野先生オリジナルの道徳授業づくりについて、おまとめいただいています。宇野先生が本書に込められた想いについて、教えてください。

 道徳とは、「唯一無二の自分の人生をいかに生きるか」を考える時間であるととらえています。正しいことを知ろう、正しいことができるようになろうと教えるのではなく、「清濁併せもった自分という人間が、自分として、自分の人生をいかに生きるか」を考え続けられるようにするのが、道徳の時間であると思います。
 人生を豊かに生きるには、本気になって自分の感性や思考を問うてみる、自分の問題意識を問うてみる、そんな時間が必要ではないでしょうか。
 道徳授業はそれが問える時間です。自分を見つめ、自分をつくることができる時間です。上っ面の決まりきった価値をなぞるのではなく、人生の根源となる何かをつくるきっかけになる、そんな授業がしたいという思いで本書を執筆しました。

―本書ではまさに書名にあるような「生き方を考える」「心に響く」オリジナルな道徳授業が数多く紹介されていますが、宇野先生が教材探しや教材づくりにおいて大切にされている視点、ポイントについて教えてください。

 私の場合、こだわりや問題意識、つまり自分の「テーマ」がスタートになっています。大きく2つのテーマを意識しながら、教材探し・授業づくりを行っています。
 一つは「女性の生き方」です。戦後男女平等が実現し年々女性の地位が向上しているといっても、実質的には、あるいは意識的にはまだまだ偏見的、差別的意識や慣例が残っているのではないかと考えます。単に男性が女性を下に見ているという構図ではなく、女性が女性自身で生き方を狭めている側面もあります。女性だから美しくあらねばならぬ、女性だから配慮されたいといった偏った観が、女性の生き方を狭めているのではないかと思うのです。
 また、道徳の教科書を見ればわかるのですが、「偉人」として取り上げられている女性は少数です。作者の大半も男性です。この問題点は、女性側から見える問題が問題として認知されていないかもしれないことにあります。つまり、子どもたちは常に男性側から発された問題意識のもとでしか思考できないことになるのです。「多面的・多角的」「自己の生き方についての考えを深める」ためには、男女双方から発した様々な問題に向き合わせることが豊かな人生観を育むのではないかと考えます。
 もう一つは、「今と未来の両面から人生を考える」ことです。
 「今」とは、子どもが日々の生活の中で直面している問題であり、「未来」とは大人が今直面している、あるいは、今の子どもが大人になったときに直面するであろう問題のことです。私はこれらを、「子どもの問題を子どもの問題として」「大人の問題を子どもの問題として」としてテーマ化しています。
 「子どもの問題」とは、学校生活や家庭生活などにある、子どもが今向き合うべき問題です。その最たるものが友人関係。特に高学年女子は人間関係の悩みが増えます。解決・改善のためには、自分自身がどうあるかということ、自他や集団をどうとらえ関わるかが肝要です。実際に問題が起きたときに学ぶことも大事ですが、問題を予見し、どうありたいかとイメージして生きることも必要だと考えています。
 「大人の問題」とは、社会問題や小学生はまだ経験しないであろう失恋(本格的な)や就職などを指します。これらをそのまま提示しても、子どもにはわかりませんので、子どもの世界にあることに置き換えて提示します。そうすることによって、問題意識を顕在化して人生を歩めるのではないかと考えています。

―先生は本書の中で授業のバリエーションとして、「シングル型」「コンビプレー型」「サポート型」「シャドウ型」の4つを挙げていらっしゃいます。本書でも詳しく紹介いただいていますが、この点について教えてください。

 授業には必ず、「材」が必要です。材に実力があれば、一つの材だけで核に迫り、作品にどっぷりつかった授業をすることができます。その力はあるけど、他の材と組み合わせた方がより効果が上がる、あるいは、他の材の力を借りなくては核に到達しないという場合は、他の材と組み合わせて授業をつくります。そのバリエーションを、次のように4つに分類してみました。

シングル型………一つの材だけでつくる
コンビプレー型…複数の材を組み合わせてつくる
サポート型………材とそれを補強する資料を組み合わせてつくる
シャドウ型………材を裏方資料が補填してつくる

 本書には実例とともに詳しく紹介してありますので、ぜひ、お読みいただければと思います。

―先生は「必要感のある道徳授業をする」の項目の中で、低学年時の授業と、中学年以降の授業との違いについて触れていらっしゃいます。小学校4年生は「10歳の壁」という言葉もありますが、どのように発達段階をとらえ、道徳の授業づくりを考えていけばよいでしょうか。

 発達心理学では、思春期は認知発達段階の一つであり、具体的操作から形式的操作へのステップアップの時期であるとされています。ものすごく雑駁に言えば、目の前にあるものでしか理解できなかった子ども時代から、奥に隠れているもの、あるいは、見えないものや抽象的な概念を理解できるようになります。思考が「単純から複雑」に、「一面的から多面的」に移行し、これまで素直に受け入れていたものにも疑問をもつようになります。世の中には矛盾があること、真理は場合によって変わりうることなどを徐々に学んでいくのです。
 よって、善悪を一面的に教えたり気づかせたりするだけの道徳授業では、子どもは
「先生は、また、きれいごとばかり並べて……」
と、大人や社会に不信感や反抗心を募らせていきます。
 そこで、中学年以降に必要なのは、一つの事象を多面的、多角的に考えられる授業だと考えます。「嘘はついてはいけない」という一面ではなく、人との関係性や状況に応じて価値が変わることをどう判断するかを考えさせることが大事だと考えます。未知が既知になるだけではなく、既知が未知になったり、未知が未知のまま残ったり、そんな経験が必要なのではないでしょうか。

―最後に、この書籍を手にとっていただいた読者の先生方へ、メッセージをお願いします。

 性別にこだわることがタブーともいえるような現代、本書は敢えて「女性視点」と銘打ちました。「女性視点」でつくる必要性は何か、男性視点と何が違うのかと探りながらお読みいただけると幸いです。

(構成:及川)
特集 「特別の教科 道徳」
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