著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「やったふり」のアクティブ・ラーニングは出来ません
上越教育大学教職大学院教授西川 純
2015/7/22 掲載
 今回は西川 純先生に、新刊『アクティブ・ラーニング入門<会話形式でわかる『学び合い』活用術>』について伺いました。

西川 純にしかわ じゅん

1959年東京生まれ。筑波大学生物学類卒業、同大学院(理科教育学)修了。博士(学校教育学)。臨床教科教育学会会長。上越教育大学教職大学院教授。『学び合い』(二重括弧の学び合い)を提唱。『クラスと学校が幸せになる『学び合い』入門』『気になる子への言葉がけ入門』『子どもたちのことが奥の奥までわかる見取り入門』『子どもが夢中になる課題づくり入門』『簡単で確実に伸びる学力向上テクニック入門』『子どもによる子どものためのICT活用入門<会話形式でわかる『学び合い』テクニック>』(明治図書)など著書・編著書多数。

―本書は、2016年度にも全面改訂される新学習指導要領の目玉のひとつとされる「アクティブ・ラーニング」が主題となっています。まず、本書のねらいと読み方について、教えて下さい。

 今回の学習指導要領の改訂は今までの学習指導要領の改訂と根本的に違います。一言で言えば、少子高齢化で国内市場の規模が縮小している日本という国が生き残るために、持てる権限を総動員しているという点です。その意気込みはかってないものです。それを端的に表しているのはアクティブ・ラーニングです。

―大きな変化の一つに、新しい試験に導入される「テスト結果の段階的表示」があります。本書でも紹介されていますが、この点について教えて下さい。

 この段階的表示に関しては、現在も保守派と改革派の間で壮絶な政治闘争が行われています。従って新テストの初期の段階からどれだけ段階的になるかは分かりません。しかし、段階的表示によって今までの受験産業にコントロールされていた日本の教育を本質的に変えようとしていることは確かです。

―「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法」と定義されているアクティブ・ラーニングですが、体験学習や調査学習、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等が有効な例として挙げられています。このような手法については、すでに取り組まれている先生も少なからずいらっしゃると思いますが、具体的には授業にどのような変化が求められるでしょうか?

 学校現場の先生方は、新しいものが出ると「どうすればいいの?」と直ぐに方法を知りたがります。本書で書いているように方法は何でもありなのです。そのため、今までより少し変えればアクティブ・ラーニングだという誤解が広がっています。しかし、アクティブ・ラーニングは日本の生き残りのための教育です。先生方の意識改革が求められています。

―先生は本書の中で、「入試改革に伴うアクティブ・ラーニングの導入は序章にすぎない」とおっしゃっています。「学校英語の意味・価値が激変する」ことなど、事例を挙げていらっしゃいますが、この点について教えて下さい。

 何度も書いていますように、今回のアクティブ・ラーニングは日本の生き残りのために生まれました。まずは入試改革と一体化させることによって「やったふり」が出来ないようにしています。
 しかし、アクティブ・ラーニングが本当に生き残りに繋がるためには、次々と施策を出していきます。それは小中高においてはキャリア教育の改革に繋がるでしょう。そして、大学教育及び教員養成の劇的な変化に繋がると予想しています。

―先生は『学び合い』の提唱者でいらっしゃいますが、「アクティブ・ラーニング」において『学び合い」』はどのように活かすことが出来ますか?有効な点などお教え下さい。

 アクティブ・ラーニングで大事にしているのは方法ではありません。「認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成」という目的なのです。即ち、教科指導と生徒指導の融合です。おそらく、それの方法論が最も確立されているのは『学び合い』だと思っています。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願い致します。

 改革には痛みが伴います。いずれにせよ自己改革しなければならないならば、嫌々やるよりも、チャンスととらえる方が「得」です。アクティブ・ラーニングによって今まで不可能だったことが可能になるチャンスです。

(構成:及川)

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