著者インタビュー
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民主国家の形成者を育てるICT活用入門
上越教育大学教職大学院教授西川 純
2015/5/21 掲載
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西川 純にしかわ じゅん

1959年東京生まれ。筑波大学生物学類卒業、同大学院(理科教育学)修了。博士(学校教育学)。臨床教科教育学会会長。上越教育大学教職大学院教授。『学び合い』(二重括弧の学び合い)を提唱。『クラスと学校が幸せになる『学び合い』入門』『気になる子への言葉がけ入門』『子どもたちのことが奥の奥までわかる見取り入門』『子どもが夢中になる課題づくり入門』『簡単で確実に伸びる学力向上テクニック入門』(明治図書)など著書・編著書多数。

―本書は「会話形式でわかる『学び合い』テクニック」の第6弾として、テーマは「子どもによる子どものためのICT活用入門」です。まず、本書のねらいと読み方について、教えて下さい。

 おそらく知られていませんが、私は教育工学の専門家として上越教育大学に採用されました。日本教育工学会にも論文が掲載され、人工知能のプログラミングで論文を書き、ICチップでコンピュータをつくったことがあります(ボードではありません)。
 昔から教育工学に携わっていて、何度も同じことの繰り返しを見ています。現状のICT教育も全く同じです。それは専門家に引きずられて、子どもが置き去りにされているのです。今度はそんなことが再現されないことを願って書きました。

―先生は本書の中で、「地に足をつけたICT活用を」と述べられています。本書でも詳しく紹介されていますが、この点について教えて下さい。

 ICTに堪能な教師が集められた学校、大学研究者がサポートしている学校、そんな学校がスポットライトを浴びています。しかし、大事なのは、コンピュータがちょっと分かった教師が数人いて、コンピュータがよく分からない教師が大多数で、コンピュータが大嫌いな教師が数人いる学校で続けられる実践です。何故なら、日本中の大多数の学校はそういう学校ですから。

―学校現場におけるICT活用の課題の一つには、設備環境の他に、「人」の問題が挙げられています。研究指定校などの学校以外では、ICTの知識・技能を備えた先生がいらっしゃらない場合も少なからずありますが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。

 少ないのが当然です。今、日本中の人の多くがスマートフォンを持っています。では、どれだけ堪能でしょうか?おそらく、スマートフォンの機能の1%も使っていない人が99%を占めています。そして、それが普通なのです。それを前提とすべきだと思います。
 むしろ現状のICT教育で置き去りにされている、何故、ICTを使うかという基本的な問いに対して応えられることが大事なのです。先に述べたように、携帯電話の機能をほとんど使えなくても、多くの人は問題なく活用しています。

―インターネットの利用には、便利さとともに危険も伴います。色々な対策もとられていますが、子ども達にはそのような点についてどのように伝えていくべきでしょうか?

 もっとも簡単な対策は「禁止」です。たしかにそうすれば教師は自分を守ることが出来ます。でも、子どもを守ることは出来ない。彼らは危険の多い社会に生きなければならないのです。であれば、教師の管理下で、教師の目の前で危険と向き合わせ、乗り越える能力を子どもに与えるべきだと思います。

―本書の第4章では、「素晴らしいICT活用を発表したいならば、1番大切なことは子どもの心の中に炎をともすこと」と述べられています。それにはどのような取り組みが必要でしょうか?

 本書で挙げた事例は出発点に過ぎません。先生方が自分で発展させて欲しい。
 ICT教育に限らず、『学び合い』が効果がある理由は何か?本人がやる気なれば、どんな教材も有効になります。しかし、本人にやる気が無ければ、どんな教材も無効です。教師が悩む成績中の下、下の子どもたちにやる気を与えられるとしたら、それはクラスメートの「一緒にやろうよ」という一声なのです。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願い致します。

 あなたと同じような人、同じような学校の人が出来ることを目指しましょう。日本中の教師の圧倒的大多数は、あなたと同じです。胸を張って下さい。
 あなたの実践こそが、日本を変える実践なのです。

(構成:及川)

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