著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
『学び合い』で「一人も見捨てない」という願いの追求を
上越教育大学教職大学院教授西川 純
2014/9/26 掲載
  • 著者インタビュー
  • 授業全般

西川 純にしかわ じゅん

1959年東京生まれ。筑波大学生物学類卒業、同大学院(理科教育学)修了。博士(学校教育学)。臨床教科教育学会会長。上越教育大学教職大学院教授。『学び合い』(二重括弧の学び合い)を提唱。『気になる子への言葉がけ入門』『子どもたちのことが奥の奥までわかる見取り入門』『子どもが夢中になる課題づくり入門』『簡単で確実に伸びる学力向上テクニック入門』『子どもによる子どものためのICT活用入門』(明治図書)など著書・編著書多数。

―本書は「THE教師力ハンドブック」シリーズの1冊として、テーマは『学び合い』です。先生はまえがきで、「私の書ける最高に分かりやすい『学び合い』の入門書です」とご紹介いただいていますが、本書のねらい・読み方について教えて下さい。

 毎年、全国から様々な方が上越においでになり、2泊〜3泊かけて『学び合い』授業を参観し、私と議論します。その方々から、「本で書いてあったことの意味は、そうだったんですか」という言葉がよく出ます。本の言葉と、会話の言葉の違いだと思います。本書では、その方々の聞かれること、そしてその方々への説明を書いております。文語調の本と本書を併用することによって、より深く学べると思います。

―通常、新しい教育方法が提案されて、広がり、定着するまでには長い時間がかかりますが、『学び合い』は発信されてから、急速に現場の先生方に広がりを見せています。この広がりを生んでいる理由は何だとお考えですか?

 神のごとき教師であっても、すべての子どもに分かる説明や板書は不可能です。結果として、必ず最後まで分からないままの子どもがいます。今までは、保護者も子どもも「まあ、仕方ない」と納得していました。ところが今は違います。その中で、モンスターペレンツという言葉が生まれ、心の病で休職する教師が激増しました。ところが、保護者や子どもの要求には現状の授業には出口はありません。だから、『学び合い』に可能性を見つけようとする教師が増えています。そして、今後、保護者や子どもの要求は厳しくなります。

―『学び合い』については、まずその授業風景を見てびっくりされる方が多いですが、一部では「教えない授業形式」のような誤解もあるようです。本書でも詳しく紹介されていますが、『学び合い』の基礎にある「一人も見捨てない」という考え方について、教えて下さい。

 『学び合い』の本体は「一人も見捨てない」という強烈な願いです。それを実現するには一人の教師では無理です。子どもたちと一緒に実現するしかありません。そのためには、子どもたちに「一人も見捨てない」ことは「徳」ではなく、自分にとって「得」であることを理解させる必要があります。それには教師は人の道を「教え」なければなりません。そして、子どもたちの力を最大限生かすためには、子どもたちに自主的な判断する場面と、行動する時間を与える必要があります。それが現状の『学び合い』の授業形態なのです。つまり、「一人も見捨てない」が本体であり、「たち歩き、相談OK」の授業形態はそれを実現するための結果なのです。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願い致します。

 みなさんが教職を目指し、そして初めて教壇に立ったとき、全員が分かる授業、全員が安心できるクラスを願っていたと思います。しかし、1年もたたずに、「それは理想論」と思ったのではないでしょうか?それは私もです。しかし、それは理想論ではなく、可能です。その可能性を追求してみませんか?それによって、教職を選んだ皆さんの生涯を誇り高く、確信に満ちたものにしてくれます。

(構成:及川)

コメントの受付は終了しました。