著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
子どもたちが学校図書館に集まる!改造プロジェクト大公開
京都女子大学発達教育学部教授井上 一郎
2013/8/20 掲載
 今回は井上一郎先生に、新刊『思考力・読解力アップの新空間!学校図書館改造プロジェクト』について伺いました。

井上 一郎いのうえ いちろう

奈良教育大学助教授、神戸大学教授、文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官、国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官・学力調査官を経て、現在京都女子大学発達教育学部・大学院発達教育学研究科表現文化専攻教授。国語教育学者。「全国国語教育カンファランス」「全国読書活動研究会」「国語教育公開講座」等を主宰。「小学校全国国語教育連絡会」会長。『子ども時代』『教師のプライド』等のエッセイ集を刊行。主な著書・編著書として、『読む力の基礎・基本』2003、『誰もがつけたい説明力』2005、『読解力を伸ばす読書活動』2005、『書く力の基本を定着させる授業』2007、『話す力・聞く力の基礎・基本』2008、『知識・技能を活用した言語活動の展開』2009、『言語活動例を生かした授業展開プラン低学年』『同中学年』『同高学年』2010他。いずれも明治図書。

―インターネットが普及し、ネットで情報を入手することが多い現代ですが、ネットにはない、学校図書館だからこその魅力は、ズバリ何でしょうか?

 本を読むことには、次のような意義があると考えられます。
 第一に、本は、長い時間や深い思索を経て、じっくりと作り上げられた創造物です。本を読むことによって、科学、文学、哲学などの深い考えや高度な知識を知ることができるのです。
 第二は、筆者に寄り添いながら深い思考を体験したり、問いかけに応じて対話したりしながら、論理的で創造的な、しかも感性豊かな思考を習得できるようになります。感性を豊かにし思考力を高めることは、学力の基盤を作ることにもなります。このようなことは、インターネットにはない特質でしょう。本を読むことで多くの知識が得られ、思考力を高めることができるのです。さらに、自分の日常的な現実世界から離れて考えることや、夢を実現することも可能になります。学校図書館は、このような本との出合いを演出する重要な文化施設となるのです。

―本書には、自校の図書館を改造するための「改造プロジェクトチェックシート」が収録されているのが魅力ですね。これはどのように活用するものでしょうか?

 学校図書館改造プロジェクトは、「学校の図書館」として子どものために、また、各教科等との連携のために、図書の配架や施設の改造、掲示物の更新などを行うものです。これらの必要は分かっていても、どのように改造すればよいのか分からず、何十年前とほとんど一緒だという学校図書館も多いのです。そこで、お金をかけず、しかも利用率が上がる改造の方法を示唆するチェックシートを作成しました。このチェックシートを質問事項とし、それらに対する回答を準備しながら、自校の学校図書館を評価し、すぐにも改造に着手してください。本で紹介した学校では、既に改造を行い、大きな成果を上げています。

―学校図書館の改造後、子どもたちが自ら進んで図書館を利用するために、先生方はどんな働きかけをするとよいでしょうか?

 三つのことに取り組んでほしいと思います。
 第一には、学校図書館を利用する機会を増やすために、教科指導の中で子どもたちが自主的に学習するアクティブラーニング(能動的授業)に切り替えるようにしてください。自ら課題解決したり、グループ学習によって考えを高めたりするような体制で授業を展開することで、参考文献を調べるのが日常化するようにしなければいけません。
 第二は、学校図書館で授業をする機会を明確に位置付けることです。「図書館授業」を週1回必ず各クラスは行くようにするといったことです。
 第三には、各教科等でも積極的に教科指導の中で本を見せ、学校図書館へ行くように誘ってください。

―本書では、国語以外にも、社会、算数、理科の授業で学校図書館を活用した授業プランが紹介されています。どのような授業の時、図書館を効果的に活用しやすいでしょうか?

 各教科等での本の活用は、多様です。知識や情報を得るだけでなく、各種のテキスト(資料)を駆使し、読解力や表現力を上げるように学校図書館の本を活用しましょう。また、単元展開の中でも、第1次、第2次、第3次それぞれにおいての役割が違ってきますので、工夫してほしいと思います。

―最後に、読者の先生方へ向け、メッセージをお願いします。

 学校図書館の改造は、そんなに難しいことではありません。改造の考え方と改造方法について理解したら、先生方で一気に学校図書館を改造する日を設定してください。その後に、学校図書館を活用するカリキュラムを構想し、多様な読書プログラムを位置付け、どんどん図書館へ行かせるようにしてください。読書量に一喜一憂する必要はありません。本を読むことが楽しく、調べることが追究することの充実感を味わわせてくれるすばらしいことだと分かれば、本自体が、読者である子どもたちを誘ってくれることでしょう。学校図書館と読書活動が新しい時代に突入できるようにともに頑張りましょう。

(構成:木村)
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