本日の動画
特別支援教育におけるはじめの1曲
ボディパーカッション曲「花火」
※YouTubeの動画にリンクしています。
いかがでしたか。あちこちから「パーン」「パーン」と花火が打ち上がる様子が伝わったでしょうか。その名もズバリ、ボディパーカッション曲「花火」。やっていることはいたってシンプルで、手拍子と足ぶみ、それに「パーン」という声だけ。それでもみんなが一つになると、こんなすてきな表現ができてしまうのです。下は小学校1年生から上は高校生まで、色々な年齢の子どもが一緒に活動できるのも魅力ですね。
そして実はもう1つ、この「花火」には不思議な力があるのです。
特別支援の子どもたちが自ら立ち上がった!
ボディパーカッションの活動を始めてから10年ほどたった頃、私は久留米養護学校(現在、久留米特別支援学校)へ異動しました。その1年前ほど前に、次のような大きな衝撃を受けた出来事がありました。
私はそれまでも、様々なところで子どもたちと一緒にボディパーカッションを演奏披露する活動をしてきましたが、その日は、養護学校の生徒たちに演奏を披露しました。この時に選んだ曲が「花火」。すると驚いたことに、小学生たちが演奏している最中に、養護学校の生徒たちが次から次に立ち上がって、一緒にボディパーカッションの演奏を楽しみ始めたのです。このようなことは、今までの演奏披露では考えられないことでした。
人に見せることよりまずは自分が楽しもう!
それまで私は、ボディパーカッションなどの表現活動は、「難しくてレベルの高い演奏=見ている人に感動を与える素晴らしい演奏」という図式で成り立っていると思っていました。しかしこの時に感じたのは、養護学校の子どもたちにとって一番大切なのは、「見せる演奏ではなく、心から楽しむ演奏である」ということです。
この出来事から1年後、私は養護学校に異動し、「障害がある子どもたちにとってのボディパーカッション教育の楽しさとは何か」を考え直すことになります。そして、見ている人を意識した精度の高い表現よりも、「子どもたち自身が心から楽しむ表現」を実現していかなければならない、と思いました。これが、特別支援教育にとしてのボディパーカッション教育のスタートラインとなります。
ボディパーカッション曲「花火」のワンポイントレッスン
それでは本日は、特別支援教育の現場で大活躍したボディパーカッション曲「花火」を、みなさんも一緒に取り組んでみましょう。この曲は1996年4月、私が久留米養護学校に転任して最初に取り組んだ思い出の曲です。
まずは次の4小節のリズムをご覧下さい。
たった4種類の音符を組み合わせただけの単なるリズム譜です。これをどのようにすれば、「花火」に生まれ変わるのでしょうか。
それでは、それぞれの音符に次のような動きをつけてみましょう。
小さく手拍子 大きく手拍子 曲の前半は膝うち、後半は足ぶみ 「パーン」と手拍子をしながら声を出す
動きはたった4種類、簡単でしょう。楽譜が読めない子どもでも、手拍子や膝打ち、足ぶみなど、身体を使ってリズムを刻むことができます。音符の長さにあった動きなので、音楽的な学びもある中で楽しめる曲です。
冒頭でご紹介した映像は、このたった4小節のリズムパターンのくり返しだけでできているのです。全体をいくつかのパートに分けて、このリズムパターンが重なるように順番に打っているだけです。組み合わせによって様々な花火ができますが、簡単なバージョンは、リズムパターンがみんな同じタイミングで入るので、特別支援の子どもたちも安心して取り組むことができます。これがボディパーカッション曲「花火」の始まりです。
参加基準は目の前の子どもに合わせて!
さて、演奏を指導するときに大切なのは、特別支援の子どもたちには、それぞれの子どもたちに合った参加の基準をもつということです。
ボディパーカッションの参加基準
- 手足が上手く動かせなくても声を出し笑顔が見られたら、その子どもはボディパーカッション活動に参加していると判断する。
- 注意散漫で多動な子どもが活動に参加する様子が見られない場合でも、日頃より真剣に取り組む様子が見られれば、ボディパーカッションを楽しんでいると考える。
- 全面介助の子どもは、教師が手を取り手拍子を打つ、おなかを叩く、膝を叩く。その刺激によって、子どもが喜ぶ。それが、その子どもにとってのボディパーカッション活動であると考える。
- 自閉症(広汎性発達性障害)などのリズムに合わせることが苦手な子どもが、他の子どもの動きや音に同調してとび跳ねている。また、気分が乗れば手拍子を打つなどができている。それが、その子どもにとってのボディパーカッション活動であると考える。
本日ご紹介した動画では、パート毎に入るタイミングの間隔を短くずらしているので、リズムの重なりが複雑に絡み合い、次から次に「花火」が上がっているような印象を感じていただけたと思います。一見難しそうですが、演奏する方は、たった1つのリズムパターンをずっとくり返しているだけなのです。つまり、見ている人は「難しそうな演奏!」ですが、演奏する側は「超簡単な演奏!」なのです。
活動する子どもたちは心から楽しむことができ、その上見ている人も演奏のすばらしさを感じることができる、まさに特別支援教育にはぴったりの曲です。ぜひ試してみて下さい。
無理やり基準という枠にはめてボディパーカッションをしてるという実績にしているような気がします。