LD,ADHD&ASD 2014年4月号
ソーシャルスキルトレーニングをユニバーサルデザインしよう!

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LD,ADHD&ASD 2014年4月号ソーシャルスキルトレーニングをユニバーサルデザインしよう!

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ジャンル:
特別支援教育
刊行:
2014年3月24日
対象:
小・中
仕様:
B5判 70頁
状態:
絶版
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目次

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特集 ソーシャルスキルトレーニングをユニバーサルデザインしよう!
特集について
上野 一彦
提言1 クラスみんなでソーシャルスキル!
ユニバーサルデザインを支える社会性指導の3つの技法―全体指導から個別指導を連動させる―
小貫 悟
提言2 専門的な指導に学ぶ!
ユニバーサルデザインの発信基地としての通級指導教室
岡田 智
事例1 [通常の学級] クラスみんなでソーシャルスキル! 幼稚園
コミュニケーションスキル活動「もくせいの時間」
福島 裕子
事例2 [通常の学級] クラスみんなでソーシャルスキル! 小学校
学級で取り組むソーシャルスキルトレーニング(SST)
中西 幹
事例3 [通常の学級] クラスみんなでソーシャルスキル! 小学校
認め合い,支え合い,共に育つクラスをつくる
村上 里美
事例4 [通常の学級] クラスみんなでソーシャルスキル! 中学校
悩んだら,原点に帰ろう
菊池 圭子
事例5 [通級指導教室での指導] 専門的な指導に学ぶ! 小学校
コミュニケーション相談所,コミュニケーションの格言―通常の学級担任との連携した指導について―
中村 敏秀
事例6 [通級指導教室での指導] 専門的な指導に学ぶ! 小学校
低学年・高学年別SSTの実践事例と通常の学級との連携事例―学習態勢の定着から自己理解へ―
森村 美和子
事例7 [通級指導教室での指導] 専門的な指導に学ぶ! 中学校
すべての教育活動にSSTの観点を
中村 章
事例8 [地域の中での指導]
親が築いてきた道のり
坪井 久美子
Essay
子どものつまずきに学ぶ授業研究
桂 聖
発達障害の子どもに役立つ!ちょこっと支援の教材・教具 (第1回)
3つの視点で教材を考えてみませんか?
金森 克浩
はなひらく支援の教育現場 (第2回)
机と肩を並べて幼・小連携,深まる子ども理解
〜取材先◎兵庫県神戸市通級指導教室設置校園長会〜
親の会・JDDネットニュース (第49回)
「一人で悩まないで」,こころと向き合うパートナー
倭文 真智子
医療との連携 (第49回)
発達障害における薬物治療の現状(1)
小野 次
Newsな視点 (第5回)
入試と合理的配慮
立脇 洋介
保護者の悩みに寄り添う教育相談 (第1回)
学校の先生に子どもの様子をどう伝えたらいいでしょうか…
安住 ゆう子
やってみよう!授業のユニバーサルデザイン (第1回)
【国語】目の前の子どもの「困り感」に寄り添いながら,授業をデザインする
宮野 大輔
はじめての特別支援教育コーディネーター (第1回)
ひとりではないコーディネーター
松井 友子
はじめての通級指導教室担当 (第1回)
情報を整理し,子どものつまずきから支援を考える
公文 眞由美
一度は手にしたい本
『マジカルトイボックスの教材&アイデア100連発』(金森克浩 編著)/『自閉症スペクトラムなどの発達障害がある人とのコミュニケーションのための10のコツ』(坂井 聡 著)
松田 修
編集後記
上野 一彦

特集について

東京学芸大学名誉教授 上野 一彦


学校での教育には2本の重要な柱がある。それは学力の柱と適応力の柱である。

子どもたちの成長を委ねる学校に期待されるのは,自立と社会参加のための準備教育であり,1つはその発達に応じた学力の伸長と補償であり,もう1つは人間が社会的な存在として欠かせない対人的な適応力の成長である。

この2つの要素は車の両輪の関係にある。よい学習はよい人間関係の中で成立しやすいし,よい人間関係はよい学び合いの中で一層充実もしていく。近年,この両輪のバランスが崩れてきつつある。その背景には,核家族化や少子化,さらには地域教育力の弱体化とともに,子どもたちの適応力の弱さがあちこちで目立ってきていることが挙げられる。

これまで適応能力は,子どもたちの家庭での兄弟関係や日常的な地域での遊び仲間やグループ活動のなかで自然に身に付けていくものと考えられていた。子どもたちは,日々の競い合いや協力,模倣,共感,納得の中で適応する力を育てていく機会がたくさんあった。互いの主張の仕合いや小競り合いから妥協や,我慢,譲り合いといったさまざまな対人スキルを経験のなかから学び,成長していった。

近年,学校教育の大きな課題であり続ける,いじめや不登校などの背景にも,異年齢間だけでなく同年齢間のこうした適応力発達の未成熟や偏重があるという意見にも耳を傾けなければならない。家族関係や地域環境の大きな変化の中で,子どもたちの社会適応能力を,今日ほど学校で積極的に指導の中に取り入れていく必要性があると多くの人々が指摘する。

LDやADHD,ASD(自閉症スペクトラム障害)など,発達に障害のある子どもの場合も,学力面でも特異な学習のつまずきや偏りを持ちやすいが,行動面でもこうした適応面での課題を持つものが多く見受けられる。SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)と称される指導領域こそ,まさにその課題への取り組みを指す。発達障害の基本指導として,教科の補充指導を重視する米国でもSSTは学習を成立させるための基本条件という位置づけがされている。環境への適応の上に学習は成立するという考え方である。

一方で,授業のユニバーサルデザインが大きな関心を呼んでいる。やさしいよくわかる授業はすべての子どもに共通する教え方であり,発達障害のある子どもへの対応はすべての子どもの基本であるとも考えられる。こうした学力面での指摘は適応力の指導においても全く同じ方向性を示しているのではないだろうか。学力だけでなくSST,つまり適応能力の指導も,すべての子どもに通用するユニバーサルデザインの発想がなければならない。特別な場での特別なグループでの指導だけでなく,一般の教室の中でのどの子どもにも必要で効果的なSST指導が今求められている。

本号では,さまざまな年齢,さまざまな発達障害に対するSSTの取り組みを取りあげ,SSTのユニバーサルデザインとは何かを特集してみた。SSTは発達障害だけではなく,すべての子どもたちにとって共通する重要課題であるという認識からの特集である。

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