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「論理的な表現力」があと一歩―「言語力検定」結果公表
kyoikujin
2010/4/1 掲載
言語力検定公式ガイド

 3月27日の読売新聞の記事によると、昨年10〜11月に全国で実施された「第1回言語力検定」の結果が公表されたそうです。日頃当たり前のように使っている日本語。その運用能力を試す検定だけに、さぞや合格率が高いと思いきや…。

「言語力検定」とは

 「言語力検定」は、言語力の測定によって国際世界に通用する言語力を育成することを目的として、財団法人文字・活字文化推進機構が実施した検定です。
 この検定が発足した背景には、OECD(経済開発協力機構)が行ったPISA(生徒の学習到達度調査)の結果があります。「日本人の読解力低下」という結果が大きな波紋を呼び、フィンランドの教育に注目が集まったという社会的な現象は、皆さんの記憶にも新しいところだと思います。
 そこで、言語力検定では、PISAの問題をモデルにして、次のような力を測定する問題が出題しています。

@課題文を読み取り、情報を正確に取り出す力
A筆者の意図、主題、登場人物の行動、背景を推論する力
B文章、図表、グラフなどをよく読んだ上で熟考・評価する
 力
C課題文にある根拠に基づき、論理的に意見を表現する力

「言語力検定」の結果は?

 第1回検定は、昨年10〜11月に、3・4級(中学・高校生レベル)の試験が実施されました。その結果はというと、受験者9,984名のうち、3級合格者は2,167名(全受験者の21.7%)、4級合格者は1,385名(13.9%)とのこと。この合格率を、皆さんはどのようにお感じになるでしょうか。
 数字的な結果はさておき、記述問題では、「課題文を繰り返しているだけ」、「文中の根拠を具体的に示していない」などの、部分正答の比率が高いという傾向が見られたそうです。この結果に対して、有識者からは「自分の考えを的確に、論理的に述べる・書くことについてはまだ課題がある」との評価が示されています。

「言語力」と学校教育

 さらには、検定の結果が国語の成績と一致しないケースも見られたそうです。従来型の国語の授業では、情報を読み取る能力は培うことができるものの、その情報を活用して、自分の意見を論理的に構築するという段階までには、なかなか到らなかったのかもしれません。
 一方、近年の国語の高校入試では、ポスターや看板などをもとにした問題も見られるようになってきました。ポスターや看板などから情報を読み取り、それに基づいて自分の意見を書かせたり、改善点を提示させたりする問題が出題されています。ですから、入試対策として、言語力育成のための授業を実施している学校も増加していることと思われます。
 さらには、「新学習指導要領」が、小学校では平成23年度、中学校では24年度から全面実施されます。「言語活動の充実」を謳った「新学習指導要領」。その方針に則った学校教育により、言語力が向上するであろうという期待が高まります。

 「第2回言語力検定」は、平成22年秋に実施予定とのこと。皆さんも、「言語力検定」で自分の言語力を試してみてはいかがでしょうか。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
コメントの一覧
1件あります。
    • 1
    • 名無しさん
    • 2010/4/5 18:33:19
    我々が日常で良く耳にするニュースのコメンテーターの発言も、非論理的なことが多いため、知らず知らずのうちに非論理的な話の展開に違和感を覚えなくなってしまっているのかもしれませんね。こわいです。
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