子どもの心をグッとつかむ言葉のワザ
学校生活でも授業でも、教師と「話すこと」は切っても切れない関係。話術、言葉の選び方、コミュニケーション力、コーチング等、教師に必要な言葉のワザを伝授します。
子どもの心をグッとつかむ言葉のワザ(16)
算数の発表で伝え合う力が育つ「短文+確認の問い」の法則
パラグアイ ニホンガッコウ大学学長補佐西野 宏明
2020/9/10 掲載

事例個人差が広がる授業からみんなが成長できる授業に変える算数の答え合わせ

●STEP1
 算数の目的を全く理解していない頃の授業

 一人一人で問題を解決させます。時間がきて答え合わせをします。
 そして挙手指名です。問題により様々な答え方がありますが、およそ以下のように答えます。
 「80×3.5だと考えました」
 「私はBの図形だと思います」
 「65度です」

 私の言葉は、「はい正解」。あるいは他の子どもたちに向かって「いいですか?」と聞き、子どもたちが「いいで〜す」。
 このような授業を繰り返していました。
 テストの結果は芳しくありません。私の授業の仕方にそっくり反映していました(泣)
 算数で何を育てるのかわからず、ただ問題を解かせていたため、算数の好き嫌い、算数学力の発達において個人差が大きく出てしまいました。

●STEP2
 算数や説明が得意な子どもだけで進める授業

 STEP1から反省し、少し勉強しました。
 するとどうやら、算数の授業でも、子どもに発表させると、伝え合う力や論理的な思考力を育てることができるというのです。
 そこで、子どもに発表させるといいんだなと考えた私は、答えだけではなく、どうしてその式や答えになったのかを発表させるようにしました。
 先ほどの子どもの答え方が次のように変わりました。
 「なぜなら1mあたり80gなので、それが3.5m分で何gか求める問題だからです」
 「どうしてかというと、向かい合う二組の辺が平行だからです」
 「三角形の内角の輪が180度で、そこから115度を引くと65度になるからです」

 なんとなく、子どもが発表して伝えている感じのする授業になりました。
 しかし、それでもなお個人差は大きく、できる子はできる、できない子はできない状況は変わりませんでした。なぜかというと、挙手した子の中から指名して(発表の得意な子、算数が得意な子に頼って)は、発表させていたからです。
 もっと一人一人を見なくてはいけないと痛感しました。

●STEP3
 「短文+確認の問い」で一人一人の成長を保障する授業

 そこでさらに考え、勉強しました。
 ある子の説明を聴いて他の子どもが理解を深め、発表した子も他の子も自尊感情の高まる指導法がないか模索しました。
 たった1つの言葉で、それができました。

「短く切って、みんなに確認してごらん」

 先の角度の問題の答え方を例に説明します。単元の2時目の想定です。
 「三角形の内角の輪が180度で、そこから115度を引くと65度になるからです」
 先生はここを素通りしてはいけないのです。
 このサラッとした説明だけでは理解できない子がいるのです。この説明ができる子は上位の子です。低位の子たちにとっては難し過ぎます。 
 だから、子どもの発表のあとに次のように言います。
 「ありがとう。素晴らしい。ただ、ちょっと待って。君は頭の回転が速すぎる。だから先生みたいに頭の回転がゆっくりなメンバーには、少しだけハードが高いんだわ。三角形の内角の和が180度とか忘れている人がいたり、どうして115引くの?とか、う〜ん、わからん!って人がいるかもしれないから、みじか〜く、ちょこ、ちょこって切って説明してくれるとわかりやすいかも。ちょっとやってみて」
 「三角形の、こことこことここの3つの核の大きさをすべて足すと、180度ですよね?」
(はい)
 「ここまでいいですか?」
(うん。OK)
 反応を見ます。
 「はい」「うん」「わかります」と反応した子をほめます。
 同時に、「わからないときは遠慮せずに聞いていいからね」と付けくわえます。
 発表している子どもにも声をかけます。
 「うまいね。短く区切るから、ここまでみんなよくわかったみたいだよ」
 続きです。
 「求めたいのは角アですよね」
(はい)
 「で、今わかっているのは角イの15度、角ウの100度です。だから、3つの角のうち、今わかっている角イの15度と角ウの100度を足して、180度から引けば残りの角アの大きさが出ますよね? ここまでどうですか?」
(うんうん。そうだよね)
 「だから180度−115度=65度で、角アの大きさは65度となります。いかがですか?」

挿絵01

解説

なぜ算数で伝え合う力を指導するのか?

 目的は2つあります。
 1つは論理的な思考を養うためです。論理的で筋道の通った説明の仕方は、入学入社試験をはじめ、社会生活におけるたくさんの場面で必要とされます。
 もう1つは他者理解と自尊感情です。
 他者の発表により、自分が思いつかなかった考え方に気付きます。教えてくれた友達に感謝します。人に教えることのできた喜びを感じます。

算数における発表指導の基本の型

 算数における発表においては、次の基本の型を子どもたちに定着するようにしましょう。

結論 → 理由(一文を短く) → 確認の問い

STEP1とSTEP2の失敗

 STEP1の失敗の原因は、私自身が発表のポイントを知らなかったことです。だからどのように指導したらいいのかわからなかったのです。そもそも上に述べたような算数で説明させる目的がわかっていなかったのです。
 「いいですか?」「いいで〜す」
 このような答え合わせは、単純計算ならいいかもしれませんが、思考を伸ばしたいのであればこれでは不十分です。
 一方、STEP2の場合、説明は上手です。しかし、このままでは「伝えた」までです。「伝え合う」にはなっていません。

STEP3の発表の仕方を全員に習熟させる

 STEP3の後に、次のように指示しました。
 「今の○○さんのように、説明できる人?」
 同じように発表させます。2名指名します。
 さらに畳みかけます。
 「では、今3人が発表してくれたように、ペアで説明し合ってごらん。何に気を付けるんだっけ?」
 「短く切る!」「確認する!」
 これで全員に身に付きます。およそ1学期には、この話し方が定着します。

ここがポイント!

  • 発表は「一文を短く」「確認の問い」でどの子もわかるように!今月の「言葉のワザ」
  • 発表した子も、発表をきいた子もうれしくなる発表が大事!
  • 学習に苦手意識のある子、ゆっくり学習するのが向いている子に対する配慮した授業を常に心掛ける!

西野 宏明にしの ひろあき

東京都の公立小学校を10年間勤めたのち、2019年7月よりパラグアイの私立ニホンガッコウで学校顧問(教育コンサルタント、学長補佐)に就任。
初任時代の初めての授業で挫折し、教師修行を始める。
日本各地の教育イベント、セミナー、サークルに参加。自分自身でも若手教師向けのサークルやセミナーを主宰した。毎月5万円以上は読書やセミナー参加費に費やし、自己研鑽に励んだ。その集大成として3冊の単著『子どもがパッと集中する授業のワザ74』『子どもがサッと動く統率のワザ68』『熱中授業をつくる!打率10割の型とシカケ―そのまま追試できる「大造じいさんとガン」』を上梓。
2017年よりJICA青年海外協力隊員としてパラグアイへ派遣され、2年間、現地の教育力向上に努める。2019年3月に公立小学校を退職し、現職。

(構成:木村)
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