- 言葉のワザ
- 学級経営
事例劇的に変化した「朝の会」「持ち物チェック」「チャイム着席」
Before
朝の会
ある日の朝の会です。
話を始める前に言いました。
「大事な話をします。集中して最後まで聞きましょう」
話し始めます。2分ほど経ちますが、全員静かに聞いています。
途中、数名がよそ見をしたり、ぐで〜んと寝そべるような姿勢で聞いたり、少しだけふざけたりする子がいました。しかし、説明する分には問題ないので最後まで説明しました。
説明したら、全員が理解できていたようなので、すぐに1時間目の授業に入りました。
数か月後。
話始める前から騒がしく、なかなか静かになりません。静かになった後も、またしばらくするとすぐに騒がしくなります。専科の先生からは苦情が来ます。そのたびに叱りますが、改善しません。
私は思いました。
「あぁ、どうして人の話を静かに聞けない子たちなのだろう。思春期に入る時期だから仕方がないか。素直に話を聞きやしない」
持ち物
以前、勤めていた学校の保健委員会の活動で、学期に1、2回「ハンカチ調査」というものがありました。
保健委員会の児童が各学級をまわって、
「持ってきている人はハンカチを見せてください」
と言って、人数を数えるものです。
持ってきている児童は半数以下でした。10数名です。
調査が終わったあと、
「どうしてハンカチを持ってきていないの? 小学生のうちから習慣にしないとダメでしょう。もう高学年なんだから、親に言われるとか、先生に言われるとかじゃなくて自分で用意しなさい。そもそも、手を洗った後、どうやって…」
というように叱責しました。
数か月後。
調査の結果は変わりません。日によっては持ってきている子が減っていました。調査のたびに叱責しました。しかし、何も改善されませんでした。
持ってきている子たちも私の叱責を聞くので、学級全体がどよーんと暗い雰囲気になりました。
チャイム着席
休み時間が終わってチャイムと同時に授業を開始するのが普通です。
当時、ほとんど全員はチャイムがなるときには着席していました。
たまに数名が「手を洗っていました」「ボールを片付けていました」「トイレに行っていました」などと言って遅れて入ってくることがありました。
しかし、ほんの1、2分のことなので、全員がそろうのを待って、授業を開始しました。
数か月後。
数か月前はチャイム着席をしていた子たちも少しずつ遅れるようになりました。男子の数名は徒党を組んで遅れてくることがあり、そのたびに厳しく叱責しました。しかしながら、改善されることはなく、他の場面でもルーズな面があらわれてくるようになりました。
「どうしてダラダラ時間に遅れてくるんだよ」と思いながら、良い手立てが浮かばず困っていました。
After
先の3つの場面と同じ流れですが、ある変化が加わっています。
それを探しながら、続きをお読みください。
朝の会
「大事な話をします。集中して最後まで聞きましょう」
話し始めて1、2分ほど経ち、全員静かに聞いていたので評価しました。
「はじめに私が言ったように、集中してしっかりと聞いてくれていますね。うれしいです」
さらに全員が真剣に聞くようになりました。
最後に確認しました。
「はじめに言ったことを確認します。最後まで集中して聞けた人? 聞けなかった人?」
子どもたちは全員が聞けた方に手を挙げます。
「すばらしいですね。話を聞くことはとても大事なことです。そしてありがとう」
数か月後。
いつでも、全員が静かに話を聞くようになりました。切り替えも早くなりました。
持ち物
「ハンカチ調査」の日のためにではなく、そもそもハンカチをもってくるというのは身だしなみを整えるという点で、保健衛生の点で大切です。
そういう理由から、毎日朝の会で確認しました。
「持ってきている人はハンカチを見せてください」
子どもたちは見せます。
「おぉ素晴らしい。よく持ってきましたね」
毎朝たったの20秒です。評価を繰り返しました。
数か月後。
保健委員会から表彰されました。
その間、一度もハンカチの件では叱責していません。
チャイム着席
休み時間が終わってチャイムと同時に評価しました。
「時間通りに席に座ることができていた人。立ちます」
ほぼ全員が立ちます。
「とても素晴らしい。ルールと時間を守ることはとても大切です。続けてください」
たまに遅れてくる子がいると、理由を聞きました。
「どうして遅れたのですか?」
正当な理由の場合は「あぁそうなんだね」と笑顔でこたえます。
正当な理由がない場合は「遅れるのはよくないことです。次の授業前は必ず時間を守りなさい」というように毅然と指導します。
数か月後。
チャイム着席は当たり前になりました。
解説
定着させるためには「評価」「確認」を徹底
事例1と2の違いは一目瞭然ですね。
「評価」しているかどうかです。
評価することで、身に付けさせたいことが定着します。指導したことを学級全体に広げることができます。
「評価」「確認」をすることのメリット
- 教えたことが定着する
できたらほめて、できなかったら指導します。この繰り返しで、指導内容が子どもに身に付いていきます。 - 子どもが安心する
一見、子どもにとって息苦しく、厳しそうに見えます。しかしそうではありません。
子どもは善と悪が明確にわかるので安心します。学校において何が正しく、何がいけないか、はっきりと示すのは先生の役目です。
「評価」「確認」しないことのデメリット
評価と確認は、それを行うことのメリットも大きいのですが、実はそれ以上に評価、確認しないことのデメリットの方が大きいのです。
なぜかというと、まじめにやっている子を評価しないと、その子たちがやらなくなるからです。
それ以上に、やらなかった子たちに対する叱責を一緒になって聞かされるので、損した気分になります。
まじめにやっている子をしっかりと評価することでその行動を強化できます。「先生がほめた。やはりこれは正しいことなんだ。続けよう」となるからです。
もちろん「先生しつこいな。やらないと叱られるから、仕方ないけどやるか」という子もいます。
それでも、大事なことを定着させるためには、指導を徹底すべきなのです。
ここがポイント!
- 指導の最中でも子どもが望ましい姿だったらすぐに評価する!
- 指導後は必ず評価、確認をする!今月の「言葉のワザ」
- 当たり前のことをがんばっている子(持ち物を忘れない、静かに聞く、時間を守る)を必ず評価する!