スッキリ解決☆学びにくい子への学習つまずきサポート
どのクラスにもいる、学ぶのがちょっと苦手な子。そのつまずきの原因を探り、サポートの道筋をさぐろう!つまずきサポートの達人になろう!
スッキリ解決☆学びにくい子への学習つまずきサポート(11)
コンパスをうまく使えない子
大阪府堺市立日置荘小学校 通級指導教室山田 充
2016/4/20 掲載
  • 学習つまずきサポート
  • 特別支援教育

本コーナーでは、一生懸命頑張っているのになぜか学習がうまく進まない…そんな学びにくい子のつまずきの原因を探り、そのサポート法を解説していきます。

山田先生、私のクラスの子(3年生)について相談させてください!

学びのつまずき相談

コンパスをつかって作図が上手くできません
3年生の男の子です。算数の学習でコンパスをつかって、円をかいたり、長さを測ったりする勉強をするのですが、うまくコンパスが扱えず、円が描けないのです。長さをコンパスをつかってうつすところまではできるのですが、できあがった円は形がずれています。
どうすればよいでしょうか。

挿絵

コンパスをうまく使えないんですね。
円を描こうとして、針が外れてしまったり、円を描く線が途切れ途切れになったりするんですね。

何か、いつも針や鉛筆の部分がバタバタしている感じがします。描いている間に、針と鉛筆の間が狭くなったり広くなったりすることもあるようです。

山田先生の分析

コンパスをうまく使えない原因を分析してみよう
コンパスをうまく使えないということは、指先の不器用さが疑われます。
単に「不器用」とすませるのではなく、どのような運動や動きがうまくいかないのかを考える必要があります。
コンパスを使うには、実は、二つの動作を同時に行う必要があります。
針を刺し続ける下に押す力と鉛筆の部分を回転させる力があってはじめてきれいな円がコンパスで描けます。言い換えると、子どもは回転させると同時に鉛筆も下に押しつける必要があるのです。
同時に二つの動きをすることが苦手…不器用だとうまく円が描けません。
なわとびも苦手だったりしませんか?なわとびも回転させながらジャンプする…と二つの動きをするところがコンパスを使うのと同じです。
コンパスを回転させる方法も、小さなつまみを持って回転させる必要があり、力の入れ方が難しいのです。
しっかり子どもがコンパスを使う様子を観察することが大切です。

そうです。そうです。回そうとしたら針が外れ、針に力をいれようとすると回転できない感じです。回転なのに変な方向にコンパスが行ってしまうこともあります。

学び支援のアイデア

動きを一つにして練習することが大切
二つのことを同時にすることが難しいことが影響しているのですから、動きを一つにして練習することが有効です。
たとえば下記のようなことが考えられます。

  1. 地震対策用の滑り止めシート(花瓶の下などに敷く滑り止めシート)を5ミリ角ぐらいにカットし、コンパスの針の先に刺した状態でコンパスを使う。…針が横に滑るのを防ぎ、回転させる動作に集中することができる。
  2. 「くるんパス」(ソニック)というコンパスがおススメ。…軸を指先で回転させる必要のないつくりになっていて、しっかりつかんで大きな円運動すれば、勝手にコンパスが円を描く。
  3. ネジが緩みにくくしっかりした道具を用意する。…「くるんパス」でなくとも道具選びも重要。
  4. 両手でコンパスを使う。…右手は針を押さえて左手で鉛筆の方の足をもって、ゆっくり回転させる。

なるほど。

動きが二つあって難しいとわかれば、動きを一つにする工夫、二つの動きを別々に動かす工夫などが考えることができますよ。

学びづらさ、それ自体への支援

不器用そのものへの支援が必要なことも
このタイプの子どもたちは、単にコンパスが使いにくいだけでなく、鉛筆もきちんと持てなかったり、なわとびがうまく跳べなかったりします。
苦手さの度合いが大きい時は、根本的に不器用に対する対策が必要です。このようなことへの相談は、作業療法士さんにするといいでしょう。感覚統合の考え方で支援プログラムをつくっていただくのも有効かもしれません。

山田 充やまだ みつる

小学校首席教諭 S.E.N.S-SV(特別支援教育士スーパーバイザー)
自閉症スペクトラム支援士アドバンス
日本LD学会代議員

(構成:佐藤)
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