校則なし!チャイムなし! 桜丘中が挑む学校改善アクション
校則全廃の公立中として知られる, 東京都世田谷区立桜丘中学校の具体的な取り組みを紹介します。
桜丘中が挑む学校改善アクション(4)
校則なしでもだいじょうぶ? いや、ない方が生徒は成長する!?
東京都世田谷区立桜丘中学校宮田 孝良
2019/9/20 掲載

 校則によって生徒たちの考えを統一させ、行動を規制することは、いじめを引き起こしたり、問題を見えなくしたりします。自由な雰囲気だからこそ行えてきた教育活動、生徒たちと一緒に考えてきたことを紹介していきたいと思います。

校則は多様性を認めてくれない? その生徒だけは「特別」でいいの?

 1年生の担任をしていたときに、クラスにイスラム教徒の生徒がいました。彼は豚肉を食べないので、給食ではなくお弁当を持参していました。桜丘中学校の雰囲気にまだ慣れていない生徒たちは、「なんでこいつだけ弁当なんだよ、ずるい!」と声をあげます。僕は「え? みんなお弁当の方がいいの? じゃあ、明日からみんなもお弁当持ってきなよ」と声をかけます。すると面白いことに、「あーでも、毎日親に弁当つくってもらうのは大変だし」とか「まぁ給食美味しいし、健康的だし」などと言って誰もお弁当にする子はいませんでした。それどころか、イスラム教徒が豚肉を食べない理由、ラマダーンのことについてしっかりと知識をもつようになっていきました。
 これがもし、「彼はイスラム教徒だから特別なの」などと僕が言っていたら、彼は特別な存在としていじめの標的になっていたかもしれないですし、楽しいお昼ご飯の時間を過ごせていなかったかもしれません。このことは、本校がすべての生徒にタブレットの使用を認めているのに、実はほとんどの生徒が使用していないことと同じような事例だと感じています。この学年の生徒たちは、2年生でアフリカからの転入生を迎えることになります。肌の色が濃く、ドレッドヘアーのこの生徒はいじめられないだろうかという僕の心配は杞憂に終わったことは言うまでもありません。

登下校時にコンビニに立ち寄ってはいけない…学校に食べ物を持ってきてはいけない…

 どの学校にもありそうな校則、もしくは暗黙の了解ですね。きっと「コンビニ前でのたむろによる地域の方への迷惑防止」「お金の貸し借りの防止」などいろいろな理由があるからです。しかし、防ぐべきことはこのような点であり、コンビニに立ち寄る行動ではありません。コンビニに立ち寄る生徒には「保護者が食事を用意してくれない」「部活動後にすぐに塾に行かなくてはいけない」など、様々な理由があります。我々教員は、そのような環境の中で育つ生徒たちがよりよく生きていけるように見守り・支えなくてはいけません。不必要な禁止事項をつくることで、生徒たちの辛い環境を見落とすことがあるのではないでしょうか。
 生徒総会で、「平日の部活動の中で食事をとってもいいことにしてほしい」という意見が出ました。生徒会のメンバーと話を進めると、「給食だけじゃ18時までもたない」「そのまま塾に行って家に帰る21時まで何も食べられない」生徒の姿が見えてきました。桜丘中学校では、部活動ごとに約束を決めて補食を認めています。僕が担当する野球部では、練習中におにぎりを食べたり、練習後にオレンジジュースやプロテインを飲んだりしています。生徒の意見を否定せず、耳を傾けることにより、すばらしい環境になったと感じています。

テストの点数を気にして、英会話に全力になれない生徒…よし、テストは事前配布だ!

 定期考査があった頃は、ペーパーテストではどうしても文法・語彙・読解といった問題が中心になっていました。そして、生徒にとっては「定期考査の英語の点数=英語力」という考えがあります。そのため、授業で英語を話す機会にドリル学習をする生徒の姿がありました。そこで、英語のテストは事前に配布して生徒の不安感を取り除き、英語の授業では楽しく英語を話す、使える環境をつくりました。テストを事前に配布することに関しては、ここでは書ききれないいろいろな工夫をしています。たくさんの批判があるかもしれませんが、生徒の様子の変化を見ている僕は、このことに自信をもっています。そもそも、塾では僕が今までつくった定期考査問題を保管し、予想問題をつくっています。問題の表紙に英語の名言を毎回載せていたら、それまで予想されていると聞いたときにはさすがに笑いました。こうした斬新な取組も、桜丘中学校の自由な雰囲気の中で教員をやれているからこそできたのだと思います。

宮田 孝良みやた たかよし

東京学芸大学中等英語科卒、桜丘中学校で5年目、英語・野球部・生徒会を担当し、今年度は生活指導主任を務める。

(構成:赤木)
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